Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

さぶちゃん@神保町 最強・伝説の老舗行列店

ちょっと昔話から。


18年くらい前のこと。僕がまだ中学生だった頃。この当時、僕は中学校に行っておらず、平日、ときおり都内をぶらついていた。神保町の古本街もたまに歩いていた。

ある日,水道橋から神保町まで歩いてみようと思って,一人で白山通りに出た。色んなお店があって,中学生の僕にはとても新鮮だった。とある小さな路地にさしかかった時,ふと行列が目に入ってきた。なんだろう?と思った。路地に入って行列の先を見たら,古めかしいラーメン屋さんがそこにあった。

当時,「どうしてラーメンで並ぶんだろう?インスタントラーメンの方が美味しいはずなのに。不思議だなあ」と思った。このことは、今でもはっきりと覚えている。あの時のワンシーンは忘れられない。あの行列は本当に印象的だった。

時を経て,18年。今はその「ラーメン」の虜になってしまっている。しかし,さぶちゃんはまだ一度も食べていない。どうしても食べたい一杯だった。そして,今日とうとう念願のさぶちゃんのラーメンを食べることができた。嬉しかった。

さぶちゃんは、1966年に開業したお店。今年で41年目。ラーメンの歴史の中ではかなり古いほうだと思う。年表的には、来々軒が1910年、竹家食堂が1922年、喜多方の源来軒が1927年、新福菜館が1945年、春木屋が1949年、味の三平が1950年、ホープ軒が1960年と続く。さぶちゃんはラーメンの黎明期の最後の時期に現れたラーメン屋さんと言ってもいいだろう。店主は、「さぶちゃん」こと、木下三郎さん。ラーメンを作る合間にタバコをプカプカ吹かすお姿がここの名物ともなっている。

そんなさぶちゃんのメニューは、すごくシンプル。ラーメンとチャーシューメンだけ。チャーハンもある。一番有名なのは、「半チャンラーメン」。ラーメンと半チャーハンという組み合わせは、ここさぶちゃんから始まった。

食べた後の感想は,「本当に本当に本当に本当に美味しかった。食べられて本当によかった」。お店全部がすてきだった。ネットでもすごい数のさぶちゃん記事がある。大勝軒や喜楽と並んで、ラーメン界の伝統そのものというお店なだけに、色んな人がこのラーメンについて語っている。

僕は、このラーメンについてあえて語らない。いや、語れない、語りたくない。わずか8年くらいしかラーメンを食べ歩いていない僕。モノを申すことなんて、恐れ多くてできやしない。あえて言わせていただくと、今現在でも超個性的、超インパクトの中華そば。想像を絶する一杯だった。ベースは、鶏ガラ+豚ガラ+豚の背骨+野菜だが、出されるスープはガツンとくるシャープな味わい(これをしょっぱいと言う人もいるが、がんこ愛好家の僕からすれば、それほどでもない)。スープは激熱。かなり熱いスープだった。構成もすごくシンプル。スープ、麺、ネギ、チャーシュー、甘メンマだけ。一切の無駄がなく、どれをとっても最高の完成度を誇っている。

現在、跋扈している無数のラーメンをいくら食べ歩いても、時代性の制約は強く作用している。「おいしい」、「おいしくない」という感覚(味覚)でさえ、時代の制約を受けている。そういう制約を乗り越えるためにも、やはり「古典となるラーメン」は食べておきたい。日本全国、世界各国のラーメンをいくら食べても、時代の制約は克服できない。広がるのは、空間性だけ。あらゆるものには、空間性と時間性がある。時間性という観点からすれば、ここさぶちゃんのラーメンは、現代の制約された味覚を超克させてくれ、異時代の味覚体験を可能にさせてくれる。「うまい・まずい」という単純な二項対立から自由になり、「こういう味があったんだ」、「こういうラーメンもあるんだ」と感動することができる。さぶちゃんは、現役のラーメン屋でありながら、時代の制約を乗り越えさせてくれる最高の古典芸術作品とも言えなくもない。

ひらめきここのラーメンを食べさせてもらえて、本当に嬉しかった。おじちゃん、ありがとうございました。そして、おじちゃん、すごく素敵でした。また食べたいです。感謝です。

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