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Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

船橋18歳女性殺害事件のこと-ホスト、風俗、ヴィジュアル系、そして生と死-

自分の住む県で、痛ましい事件があった。

昨日はもうそのことだらけと言っていいほどで、かなり情報も錯綜した。

彼女の名前はもうメディアで紹介されている。「野口愛永さん」。だから、彼女のtwitterもすぐに見つけることができた。彼女のフォロー/フォロアーのところには、各メディアからの取材依頼がリツイートされていたりした。恐らくそれは亡くなった彼女のtwitterなのだろう。彼女と思われるfacebookも見つかった。今の時代、実名が報道されると、すぐにその人の「生の声(言葉)」に触れることができる。すごい時代だ。

で、その亡くなった彼女のツイッターを拝読して、色々と考えさせられた。


①彼女のリツイートの中に、ヴィジュアル系関連のものがあった。彼女は、ヴィジュアル系を好んでいた。あるいは、ヴィジュアル系の世界に関心を寄せていたと思われる。また、彼女の知人・友人を追っていくと、ヴィジュアル系を愛する女性が多数いることが分かった。僕が「緊急下の女性」という言葉に引き寄せられるのは、たぶん、そういうした女性や、また野口さんのような女性が、ヴィジュアル系に近い世界にいるからなんだと、改めて痛感した。つまり、僕が育ってきたヴィジュアル系(*僕は厳密にはポジティブメタルやサディスティカルパンク)の世界に、彼女たちがいる、ということである。

②彼女は「ホスト」に引き寄せられていた。奇しくも、昨日の講義で「なぜホストにはまる女性がいるのか」という話を少ししたが、野口さんもまたホストを頼りに生きていた人だった。彼女のツイートの中にも、ホストのことをうかがわせる記述が多数あったし、またフォローしている人を見ると、そこに現役ホストの男性が多くいた。つまり、「夜の世界の住人」だった。僕もはるか昔は夜が大好きで、それこそ18歳くらいの時って、そういう世界に憧れていた。だから、やはり野口さんのことが気になったのだろう。夜の世界は、やはりある意味で「野蛮な世界」。怖い世界。怖いというより、よく分からない世界と言った方がいいかな。裏があって、その裏があって、さらにその先に裏があって、でも、そのさらにその先の先に奥がいて、ボスがいて、みたいな。もちろん「信用」ではなく、「不信」で成り立っているから、信じられるものもそう多くはなかったりする。(その世界にいる人間さえ、「よくわからない」というほど)

③また、報道では、彼女は風俗関連の仕事をしていたとされている。その場所も特定されつつあるという…。ここではそれを真面目に考える。風俗の仕事をしている人が、仕事後に、ホストクラブに行く、というのはそれこそ僕らの時代からよくあることだった。ある女性は、昔、「嫌な客をずっと相手にして、心身疲れ果てて、その後に、自分のタイプの男の子を見るのが唯一の楽しみだった」と教えてくれたことがあった。買う男がいて、売る女がいて、またその売る女を慰める男がいて…。ここに僕の研究との接続点もある。ドイツの赤ちゃんポストは欧州最大の歓楽街(つまりは風俗街)の近くにあった。また、こうのとりのゆりかごのある熊本もまた、夜になるとまさに大歓楽街となる。全てとは言わないけど、赤ちゃんポストを必要とする女性(妊婦)と風俗には関連がある。のみならず、そういう女性はまた、極めてリスクの高い世界を生きている、ということである。とはいえ、彼女たちにはなかなか昼の世界では受け入れてもらえない背景があったりもする。知的にも、また家庭環境(社会環境)にも恵まれていないケースも多い。

④彼女にとって、「るか」という人は大きな存在だったようだ。「るかじゃなきゃダメで、るかしか、いらなくて、るかだけが好きで、るかだけだ大切なの。るかを好きなあたしが好き。るかを思うあたしが好き。るかの笑顔歌声笑った顔。怒った顔寝起きの声。全部全部全部全部好きだよ」、と彼女は書いている。ただ、その恋心が決して恵まれたものではないことも彼女は知っていた。その後、「最低で最悪な事も全部全部知ってるよ。でもね、それでもるかを捨てられない。るかだけいればいいって。そんなわけないのにね」、と綴っている。「報われぬ恋」と分かっていて、「るか」という人を心から好いているということが分かる。つまり、「盲目の恋」ではなかった、と。「最低で最悪な事」と分かっていて、「全部好き」、と言う。また、彼女は、「もっと大事にしてくれる人が絶対に居るってわかってる。それでもあなたがいいし、やっぱり離れられなくて。辛い方を選んでしまうの」、という別の人のコメントをリツイートしている。

⑤彼女のツイートを読んでいると、「大好きだよ」という柔らかい言葉と裏腹に、「しねしねしね」、「何もかも捨てたい」、「いらいらいらいらいら」、「殺す」、「死のうかな」といった強烈な言葉が並んでいる。つまり、彼女は、生と死という人間の根源的現象に近い所に立っている存在だった、と言える。もちろん18歳ということもあって、そういう言葉が先立つのは分かる。僕の学生でも、「死にたい」とか、「コロス」とかつぶやいている子はいる。けれど、彼女の場合は、それがよりリアルなところにいた、ということである。葬式の話も出ている(何の葬式かは不明)。それに、やはり昼の人間(恵まれた環境にいる人)は、他人が見ている場所で、「しね」や「殺す」といった言葉をツイートしたりはしない。それほど、生死、つまりはギリギリのところを生きていた、と言えるだろう。


【後記】

…でも、こういう話は、報道番組ではまず取り上げられない。

「恐ろしい事件」、「ショッキングな生き埋め事件」で、ばーっと騒いで、すぐに別の事件に流れ行ってしまうだけ。つまりは、野口さんという一人の人格をもった人間の悲しい死ではなく、数ある凶悪犯罪の一つのケースとして片づけられて、すぐに風化する。それが、マスメディアなんだと思う。

僕は、ブログというミドルメディアの人間なので、野口さんという一人の人間のことを考えてみました。ツイッターという極めて現代的なツールがあるからこそ、書けた話でもあります。

彼女は、きっとヴィジュアル系的な男性を、「いい男」と認識する人だったんだと思う。今の時代、しかも18歳の子で、「ヴィジュアル系っぽい子がカッコいい!」なんて言ってくれるんだから、そりゃ、もう僕の「味方」なわけで…。(僕は終わってるけど…)。つまり、彼女は、ヴィジュアル系男子にとっては、大切な存在だったということです。だから、なんだ?!と問われるとあれですけど、なんか悔しくて。

彼女が夜の仕事をしていることが報道されたし、きっとこれから彼女には色々なところでバッシングされると思います。すでに、ネットの某所では、「なんだ、フーゾク嬢か」みたいな発言も出てきています。彼女のことを言葉にすればするほど、世間の風当たりが冷たくなりそうで怖いです。

そこにこそ、僕の関心はあります。生きている人間は、どんな立場の人であり、どんな境遇の人であれ、生きているという点で、皆、等しく、一人の個人として尊重されなければなりません。日本国憲法どおりです。「殺されてよい人間」などいませんし、「殺されたこと」を笑う資格は誰にもありません。TV番組でも、彼女の(プリクラ的な)写真(しかも、安易にネット上で拾ってきたもの)をバンバン出しています。あれでいいんでしょうか? 

政府によるメディアの規制の問題が取り沙汰されていますが、やはりメディア側の倫理や高い人権意識は求められるべきです。政治的には、何も言えず、その腹いせ?に、こういう社会の末端で起こった悲しい事件を、ねちねちと、しかもいやらしく報道するのは、やはりナンセンスかと思うんです。

野口さんは18歳の女の子でした。未来のある若い人間を死に導いたのは、もちろん殺害したグループなのですが、他にも様々な要因があったと思います。わずか3年ほど前は、中学生だったんです。同じ千葉の人間として、また、同じ年くらいの人を相手にする仕事をする人間として、悲しい事件でした。

(あと、やはり夜のお店の経済的モラルみたいなものも考えなおしたいところ。夜のお店が高いのは仕方ないとしても、来ているお客さんの身分や経済的状況に応じて、価格設定をしてもらいたいですね。電車だって、普通席、グリーン車席、グランクラス席とあるじゃないですか?! ホストクラブやキャバクラも、お客さんの身分に応じて、提供するサービスを変えてほしいですね。金持ちからはどんどん取ってもいいとしても、彼女のようなお客さんからは、できるだけ取らないようにする、といった配慮です)

(そして、最も問われるべきは、やはり教育(そして児童福祉)なんだと思います。社会の中で生きていくことを学ぶ、という点で、やはりこの国は、肝心なこと、生きる知恵をしっかりと伝えていないように思います。このところ、少年犯罪が話題になりますが、被害者も加害者も、みんな若いです。そして、どちらも色んな家庭的事情を抱えているはずです。青少年保護、青少年育成の問題は、単に学校教育だけの問題ではないです。この点については、もっと深く考えていかなければ、と…)

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