
パンやおにぎりを持ってすっかりピクニック気分で画廊に向かう。出発時刻にはなかなか良い天気なのだった。
デュッセルドルフから車で一時間も走ると目的のNettersheimに到着する。
地形のおかげで空模様が変りやすい、黒い雲が押し寄せてくる。
画廊に到着して丁度15時、待ってましたとばかりの雨が降り始め、雷のおまけが付いてきた。こんな時に、こういうおまけはいらない。
がっかりしていると(がっかりしている理由は客の出足を心配するからではなくピクニックができない悔しさなのだ)三々五々雨傘を携えた人が集まり始め、外の怪しい空気きを押し出した。
友人のDanは尺八を一曲披露し、作品解説まで担当してくれたので私は気楽なものだった。
半時ほどして黒雲は引き上げ、再び太陽が顔を出すと
「用意周到だねえ、すっかり天気の具合まで予約済みだったんだね?」と知人の連れが話しかけてきた。
「だって、そうだろう?まず客が15時に集まって挨拶があって、作品を鑑賞している間雨降りだ。誰も外にでないよね。作品を楽しんでワインを飲み終わって、さて、という頃に太陽が出てくる。。。美味い事やったもんだ。魔法使いだって此処まで上手くアレンジメントできないよ」
さて、訪ねてくれた人々を見送り私達はイベント第二段に移行する。
Eifelはかつてローマ人が駐屯していた土地で、あちらこちらに遺跡が残っていて面白い。


今回はDanの勧めでNettersheimの隣、Peschという町はずれの森の中にあるというローマ寺院遺跡に向かう事にした。
わかり難い場所で迷ったもののたどり着くと、先ほどの雨のおかげで森は湿り、森の匂いが濃く、大勢の赤や黒の大ナメクジが散歩中だったが、それには視線をぼかして無視を決め込み300mほどの坂を登るとローマ寺院の廃墟が現われる。いかにも森の鎮守の神様がいるような空気を感じる。
紀元後1年から4年に建造されたガロ・ローマ文化の樹木信仰と豊穣神信仰など原始信仰の名残らしい。紀元後5年ごろには破壊されてしまったそうだ。

三体の女神像の前には最近捧げられたらしい小麦粉らしき粉の山が盛られて崩れた形跡があり、雨風に散った粉の中にコインが隠されているのを見つけた。像の前に立って足元を眺めるとコインが沢山散らばっていた。

廃墟の周辺には最近では珍しいSchwalze Teufelskralle=Phyteuma nigrumが沢山咲いる。
カンパニュラの仲間でレッドリストにのってはいないとは言えむやみに手折ってはいけない。
普段見かけない植物を発見するのはとても嬉しい。

空気の湿気がますますもったりと重くなった。
途中薄暗い道中で横笛を携えていた友人が、この湿る空気の中で吹いてみたら音が違うだろうかと言いながら試しに吹くと、間もなくパラパラと雨粒が落ちてきたので雨乞いしちゃったのかなと笑いながら小走りに森を出た。
さすがに寺院遺跡の蟲降るような鬱蒼とした森のなかで飲み食いする気にはなれず、森の出口にある駐車場脇のテーブルに食卓を作ってピクニックを楽しむことに決めた。
外で食べる御飯はまた味わいが違うなあ。