ガーベラ・ダイアリー

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脇 明子著 「読む力は生きる力」 岩波書店

2007-03-05 | こんな本読みました

非常に読み応えのある本。しかもとても納得させられる。

「子どもたちにはなぜ本を読むことが必要なのか」ということについて、真正面から考えアプローチされている。大学で教えている学生や幼稚園・保育園・学校・公民館などでの子どもたちとのかかわりを通じて、著者が数年間にわたり考えてこられたというだけあり、著者の考えが練り上げられとてもいい本だった。

これもおそらく、著者ご自身の見聞から得たものと、学術的に裏打ちされた論理とさらにご自身の子どものころの読書体験とがあいまったかたちで論じられているからなのだろう。

さてここで、「なぜ子どもたちは本を読むことが必要なのか?」と問われたらあなたならなんて答えるだろうか。もういちどふりかえって本書をみてみるといろんな観点からその必要性を説いている。観点は以下の目次をご参考に。

はじめに
第1章 読むことはなぜ必要なのか
第2章 赤ちゃんと絵本
第3章 絵本という楽園の罠
第4章 「文字を読む」ことと「本を読む」こと
第5章 読めない理由
第6章 読書力とは何か
第7章 ほんとうにいい絵本を手渡すために
あとがき/本書でとりあげた書目

引用したい箇所が実にたくさんあるのだが、本書を読むたのしみを奪ってしまってもいけないので、いくつかにとどめておく。

<テレビからはたくさんの言葉が流れてきますから、それで言葉が覚えられると思っている人はかなり多く、幼児用のビデオを見せれば教育的効果があると信じる人も少なくありません。じっさい、テレビやビデオを見て育った赤ちゃんは、やがて耳にした言葉を口まねしはじめ、子どもによってはとてもたくさんの言葉をしゃべるようになったりもします。しかしそれは、ほんとうの意味で言葉を身につけたことにはなっておらず、状況に応じた受け答えをする力は、逆に損なわれている場合も多いのです。>

テレビの流す情報を一方的に「受動」しているだけでは、言葉は身につかないという。

<想像力という言葉は、しばしば、日常とはかけはなれたファンタスティックなことを思い描く能力、というニュアンスをこめて使われますが、想像力(イマジネーション)の本来の意味は、「頭のなかにイメージを作り出す力」ということです。イメージの本来の意味は、単に「その場に実在しないものの視覚的な像」ということですから、目の前にいない友だちの顔を思い浮かべれば、それはイメージであり、そうやって思い浮かべる力がイマジネーションです。>

イメージを作る仕事を映像メディアにまかせていると、自前のイメージを作るのがむずかしくなるという。

<現実をちゃんと見て、その暗い面、理不尽な面もしっかり理解しながら、それでも人間に対する温かさやこの世界の未来に対する希望を失わないというのが、子どもたちのために本を作る大人に求められる、基本的な条件なのではないでしょうか。ひねりすぎた絵本、奇抜すぎる絵本の作り手のなかには、それを無視している人が少なくないように思うのです。>

裏を返せば、そういう本を子どもに手渡していかなければならないのだなと思った。詳しく描きこまれた絵よりも、物語の本質をとらえた控えめな絵のほうが想像力をふくらます核となるという。そしてそのほうが、物語をどんどん追っていけるという利点もある。

<子どもが一人前の人間へと脱皮する十歳前後の年齢になると、読む力があるかどうか、本の助けが得られるかどうかが、ひじょうに大きな意味をもってきます。「なんでもいいからたくさん」という読書奨励は、その助けを前もって子どもたちから奪っているのもおなじなのです。>

<子どもにとっての読書は、知識や楽しみを得る手段であると同時に、読む力のとレーニングでもあるので、ほかの手段に置きかえるわけにはいきません。一部はいいとしても、全部を他の手段にゆだねては、絶対にいけないのです。>

<読むという精神活動に含まれていて、映像メディアでは置きかえのきかないことは何かというと、それはまず書き言葉レベルの言葉を使う力であり、次に想像力である、第三に全体を見渡して論理的に考える力だと思います。>

また、ところどころに著者の推奨する本が挙げられている。児童書ではあるがこれらの本を読んでみたいと思った。

 


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