ガーベラ・ダイアリー

日々の発見&読書記録を気ままにつづっていきます!
本の内容は基本的にネタバレです。気をつけてお読みください。

荻原 規子著 「これは王国のかぎ」 中公文庫

2007-09-30 | こんな本読みました

久しぶりに読んだ。一人称で綴っていくお話。そして、そのよびかたは「あたし」。読み進めていくうちに、はるかむかし読んだ新井素子氏の著作(タイトル失念)を思い出した。

自分の誕生日直前に失恋した15歳の少女が、誕生日を境に今までと全く違う自分になる。外見も。中身もー。

そして、頭にターバンを巻いた異国の男性とともに冒険の旅にでるのである。自分は魔神族(ジン)の「ジャニ」としてー。

日常からまったく違う世界に冒険する。その入口と出口に興味があった。どうやって入り、どうやって出てくるのか?本書は、そこらへんが結構ていねいに書かれているように感じた。違和感がなかった。

現実が苦しい時、自分が嫌でたまらないとき、人は非日常的なものを求めるのだろうか?現実逃避の一手段としてー。

…けれど、それがまだ親の庇護の元で暮らしている身であったとしたら?

このような「お話」は救いになるのだろうか。今は「少女」の身ではない自分には正直言ってよくわからないのだが。しかし、物語の中で冒険することにより、現実の自分というものを客観的にながめることができるようになるのかもしれない。

失恋という大きな痛手を負っている自分をー。
「失恋」というものができそれに落ち込んでいられるのも「少女」の特権であるのかもしれないとー。

本書の冒険は作者のあとがきによると<「絵本」アラビアンナイトのファンタジー>であるそうな。作者のいう「絵本」とは「空飛ぶ木馬」を指し特別に思い入れのあるものだそう(原典の生の匂いは完訳バートン版「千夜一夜物語」で嗅ぐにかぎるそうです)

また、本書は四つの章からなっているのだが、交響組曲「シェエラザード」の四つの楽章にちなんでつけたそうである。ちなみに以下が目次。

前奏
第一楽章 海とシンドバッドの船
第二楽章 カランダール王子の物語
第三楽章 若い王子と王女
第四楽章 バグダードの祭り

ノベルス版あとがき
文庫版あとがきにかえてー口絵解説
解説 香山リカ

余談だが、自分も交響組曲「シェーラザード」が好きなのだが、作者が高校時代に聴いていた演奏(指揮者・オーケストラ)にこだわりがあるように、言われてみれば私もこだわりがあるように思う。それは、演奏者によっていろんな表現がありその演奏が好き嫌いかということもその一因だと思うが、その頃の自分を「その頃聴いた演奏」が思い出させてくれるというのが大きな要因ではないかと思った。

どんなときに透明人間になることができ、その特長とは。どんなときに欲しいものを出すことができるのか。魔法族のできること。できないこと。などがきちんと描かれていてよかった。

ジャニの、めげずに進んでいく姿が好感がもてた。また物語がすすむにつれ、彼女の積極性や強さ、主体性が表れてくるようになった。これは何か目的を抱くとそれに向かって意志をもって行動できる性質をジャニがもっているのではないかと思った。最後に日常へ戻る扉を開けるのを決めたのもジャニ自身だったということからも伝わってくる。

また本書に出てくるハールーン。魅力的な人物である。彼がきっかけでひろみ(ジャニ)は冒険の旅へと出るのだが、最後のハールーンとジャニとの会話がよかった。

<「それなら、その役目は終わったもの。今度はハールーンのためにいるわ。ハールーンは『王国のかぎ』だもの。あたしがついていって悪いはずがないもの」
あたしの言葉は、ハールーンをめんくらわせたようだった。
ー中略ー
「『王国のかぎ』。砂漠の行者が謎を解けといっての。『王国のかぎとは何か。また、そのかぎは何を開くのか』というのよ」
少し考えてから、ハールーンは首をふった。
「その答えはちがうな。もっとよく考えた方がいい。おれはただの家出人だ。ただの船乗りだ。『かぎ』なんかではあり得ないよ」
ー中略ー
「あたしの主というのは、どう考えてもハールーンだもの。それ以外にはいないもの」
「だれもが自分の主だよ、ジャニ。おれはおれだけの主だ。だから自分の好きなことをする。ただそれだけのことだよ」>

<ハールーンには、もう、魔神族の力はいらない。ー中略ー
だれよりも独立していて、だれよりも強く、だれの思いどおりにもならない。くやしくて、うらめしい……それでも、憎むことだけはできない。みんなにとってもそうなのだろう。ー中略ーこの王国きっての自分勝手なやつ。でも……大好きだよ。>

王国のかぎはだれがもっているのか。自分は王国へ行こうとするのかしないのか。主体的に生きることを考えさせてくれる作品だった。

 


ツカレ。。。

2007-09-29 | 日々のあれこれ
明日は、どこかに食べに行こうかー?

……なんで?

ほら、もうすぐ○歳のお誕生日だから!

……はっ(汗)

ここぞとばかりに「○○料理が食べたい!」と年に1度の特権(?)をフルに活用して叫ぶ私であるが、今回それがない。そういうパワーがないことに気づいた。

……あー。ここのところおなかの調子がイマイチ。いやイマサンだからか。。。

夏の疲れが出たのか、気温の寒暖差に体がついていけないのか。
頭ではそういうことは思っていないのだが。

今日、とある喫茶店の前を通りかかったら、赤く大きな字で「氷」と書いてあるのぼりが2枚ほど店の外にディスプレイされているのを見た。開店前の時刻だったので、きのうのままの状態だったのだろう。

たしか昨日の最高気温は32度だった。暑くてやりきれなかった。
そして今日。午前10時の気温が11度。一転して寒い。涼しいを通り越している。ジャケットを思わずはおってしまった。
「氷」という字を目にするだけで、体がふるえてくる。

……どうかみなさま、お体には十分お気をつけ下さいませー!

私も早く「おいしいものを食べたい!」と思えるようになりたいよー。。。


ノート

2007-09-28 | 日々のあれこれ
通っているフィットネスクラブに「ノート」が置いてある。
会員、スタッフとのコミュニケーションをとるためのひとつの手段なのだろうか?

それは、ふつうの大学ノート(今もこう呼ぶのかな?汗)。B5サイズに罫線がひいてある。ノートの横に色とりどりのペン。たくさんあるがどれも発色がいまいち(笑)。直前に書いてある人と同じ色にならないようにペンを選び、日にちを書く。そしてその日に思ったことを気ままにひとこと。

……んで。私はそのノートの常連さん!

例えば、旅先のペンションに置いてあるノート。ログハウス風の喫茶店に置いてあった雑記帳。小さな美術館に置いてあるひとことノート。そういうのに目を通すのがなぜかすきなのだ。ついでに言うと、新聞紙の投書欄とか人生相談とかも(笑)。

匿名の人が、ここに来て何を感じ何を綴るのだろう。。。

自分と同じことを思う人、律儀にお礼を述べる人、まったく違う観点からその場を眺める人さまざまだ。でもそこには、その人がそのとき感じた素直な気持ちが表されている。それが負の感情であろうとも。その人自身が表れている。そういう意味ではブログと同様なのかもしれない。

フィットネスクラブには、一週間に一度通うのがやっとなのだが、先週私が書いた文章のあとに二人の文章しか綴られていなかった。

一人はスタッフのかた。

そして、もう一人は……Kさん!

Kさんも、どうもこのノートの常連さんのようだ。ノートを開くとよく見かける名前だ。

そして実は、私はひそかに彼女の書く文章を楽しみにしている。

なんだか、たんたんとしているような飄々としているようなおもしろい雰囲気が漂っているのだ。字もなんだかまるまっちくて(失礼!)かわいい。

……どんな人なんだろう?Kさんって。
しばし、Kさん像を思いうかべてみる(笑)
もしかして、もう出会っているのかも……?

そこでは名札をしているわけではないし、誰かとおしゃべりするわけでもない(そんなヒマはない。笑)ので、人の名前はわからないし、知り合いもほとんどいない。またつくる気もあまりない(笑)。

でも。Kさんというかたとはちょっと対面してみたいと思ってしまう(笑)

……このノートいったいいつまで続けるのだろう?

Kさんと私の交換日記(?)と化していきそうな気がしてコワイのだが……(汗)


魔法の薬②

2007-09-27 | 日々のあれこれ
今朝、職場の実験男性の机上に目をやると、相変わらず例の黒い液体があった。
そしてその横には、空の透明容器が並べてある。

……昨日は、実験をしなかったのか?……

などと、思いながら自分の椅子に腰をおろす。

そして、黒い液体をぼーっと見つめる。

……あれっ?……

昨日とは違って見える。着実に変化がみてとれる。

それは、容器の上のほうはほぼ透明な液体。下のほうには黒いものが沈殿しているのである。

「ほらっ。二層に分かれてきてるねー。しっかし、何度見てもこの黒さはすごいよね」

……いつのまにか実験野郎(あ。野郎になってしまった、失礼)。もとい、実験男性が目の前に!(当たり前だ。彼の指定席なのだ)

すると、突然彼は、その液体の入った容器を右手で持ち、空の容器に中身をとくとくと移していった。黒い沈殿物が入らないようにー。

「ほらっ。見て。この黒いのが全部時計についていたんだよー。すごいねー」

とうれしそうに言いながら、容器を右手でふりふりする。

何度感心したら気がすむのだっ!と思いつつ、

「そうですねー」と微笑み返す私。なんて小心者……。

黒い液体を二つの容器に分けて、今後彼は一体何をしようというのか……。

そういえば、液体は何度も使用できると言っていたっけ。

……とすると、誰かの時計を浸すためにとっておくのかも。

そうして、黒い沈殿物のほうは……?

少しずつ液体を取り除きながら、乾燥させるのではないだろうか?

その成分を調べるためにー。
その重さをはかるためにー。

……そんなことをして何になる?
……というか何のために?

ああー。なぞは深まるばかりである。。。


魔法の薬①

2007-09-26 | 日々のあれこれ
先日、かなーり日に焼けた。どのくらい焼けたか日焼け前との違いを見たかったので、左手にしていた腕時計をとってみた。

……すると。

私の前の席に座っている同僚(女性)が私の手首を指さしていきなりこう叫んだ。

「こげてるー!」

……はい?焦げてるって?なんのこと?

…… と思い、自分の手首に目をやった。

周りの人々も驚異の目で私の左手首に注目している。

……???……

手首をぐるりとひねってみた。

「な、な、なにこれー!なんでここに焼き焦げがーーー!」

……なんと。腕時計をしていた箇所が真っ黒なのである。まるで炭をぬりつけたようにー。手でこすってみても、簡単には落ちない。

なんなんだろう?どうしてなんだろう?

…と思っていたら。

今日、「焦げてる」発言をした女性の隣の人(男性)が私のために(!)あるものを持って来てくれたと言う。

「えっ?なんですか?お菓子?ケーキ?」

と期待に胸膨らませて尋ねてみると「魔法の薬」だという。

そして、有無を言わさず(!)例の腕時計を私からとり上げて、薬を水で溶いた液体の中にドボン!とつけた。それは、ガラスでできた透明な容器である。(あ。ひとつ言い忘れたが、いちおう彼は腕時計が防水であるかはチェックした)

じーっと水をながめているとー。

みるみるうちに、透明だった水が真っ黒にー。

な、な、なにこれー!! こんなに汚れていたの?マイ・ウオッチ!

周りで見ていた人たちも唖然。

実験(!)をしてくれた人も、「こんなに黒くなったのは初めてだ」と感動している。

……いや。感動じゃなくて、呆然としてるのか?

どうも、何人かの腕時計をこの薬につけて汚れを落としたことがあるらしい。たくさんの事例を持つ人から、そのようなお墨付きをいただけるなんて光栄♪

……じゃなくてっ!

なんでこんなに汚いのさーーー!

「先日やったAさんの腕時計も、ガーベラさんのには負けますよ。彼女のは、黒い大きいかたまりは出てきたけど、こんなに黒くはならなかった」

……黒さでは一番ということなのか。。。汗

…たしかに。この時計は結婚の時にペアで買って以来、約十年し続けてきたけどさ。腕時計って洗うもの?そもそも。。。

眼鏡ならアワアワの液体につけてしょっちゅう洗ってるけどさ。。。

まあ、腕時計がピカピカになりなによりなのだけれど。


……実はこの実験後、ひとつ気になっていることがある。

件の実験男性、なぜかこの黒い液体を捨てないのである。私としては、自分の恥部を見せつけられているようでかなりいたたまれないものがある。それなのに……。
机の上にデーーーンと置いてあるのである。2つの空のガラス容器と共にー。

…彼は、一体なにを企んでいるのか……。

おそらくは、また被実験者を見つけて魔法の薬に腕時計をつけるのであろう。

そうして……。私の腕時計で真っ黒になった容器の横に並べて置いて……。

あーん。やだよー!

こんなんで職場のベスト1になりたくないっ!

*なぜか突然、自分のパソコン画面の字が大きくなってしまい。。。昔のガーベラのテンプレートに替えてみました(どんなふうに他の人からは見えるんだろう?字の大きさなど読みづらかったらごめんなさいです)


石井 桃子 編・訳 富山 妙子 画 「ギリシア神話」 のら書店

2007-09-25 | こんな本読みました

「エコー」ってどんな意味か知っていますか?
……そう。山びこのことですよね。人の最後のことばをくりかえすー。
じゃ、どうしてやまびこのことを「エコー」というのでしょう?

……それは実は人の名前からきているのです。ギリシア神話の中のー。
本書を読むとエコーという女性がどうして山びこになってしまったのかという経緯が語られています。

なぜなら。。。ただ一つ、エコーには悪いくせがあったのです。

どんなくせかって?(ここからはネタバレです)
<たいへんおしゃべりで、いつもさいごに口ごたえをする>くせです!

ドキッとした人いませんか?

それで、神々の父ゼウスのおきさきである、女神のヘラに、たいへんしつれいなことを言ってしまったのです。ヘラにあることを命令され自分のいいところも失っていくエコー。最後には、からだがやせほそって、消えてなくなり、とうとう声だけになってしまったというわけなのです。。。

他にもあります。
「この世にどうして「苦しみ」がやってきたか」について。これは、かの有名な<パンドラの箱>についてのお話です。英語のリーダーなどで読んだ方も多いのではないでしょうか。

本書は、石井氏が小学校高学年の子どものために再話し、編み訳したものだそうです。本書の典拠は『みんなのすきなギリシア神話』(S・ハイド著)と『トロイア戦争』『オデュセウスのぼうけん』(共にアルフレッド・チャーチ著)だそうです。それを石井氏が出来事をわかりやすいように取捨選択してあるそうです。

……なので、非常に読みやすい。そしてわかりやすい。

……しかも。ギリシアの神々や人々の名前をギリシア読みに統一してくれてある!主な神さまの名前の下にはカッコをつけて、神さまの名前のローマ読みと英語読みの名が付されているのです。

以下が本書の内容です(本書目次より)

はじめに
ギリシアの神がみについて
プロメテウスの火
パンドラ
デューカリオンの大こうずい
アポロンとダフネ
アポロンとヘルメス
ヘルメスとアルゴス
デメテールとペルセポネ
パエトンと日の神の車
ペルセウス
カドモス王
イアソンと金色のヒツジの毛皮
ベレロフォントとペガソス
エコー
ナルキッソス
アラクネ
ヘラとハルキュオネ
ミダス王
ヘラクレスの十二のぼうけん
テーセウス
ダイダロスとイカロス
オルぺウスとエウリュディケ
エロスとプシュケ

「トロイア戦争」と「オデュセウスのぼうけん」のお話のまえに
トロイア戦争
オデュセウスのぼうけん

あとがき
さくいん

愛憎あいまって…というなかなかシビアな場面もありますが、私にとってはどれも新鮮でした。
特に印象に残ったのは、ヘラクレス!とにかく強い!賢い!そしてちょっとわすれんぼう(笑)。個人的にはヘラクレスの十二のぼうけん譚が面白かったです。

神がみの名前は知っていても、その内実はあまり知らなかっのでとても楽しく読みすすめられました。日本の昔話がちらっちらっと頭に浮かびながらも、ギリシア人独自の発想の豊かさ・叡智を見た気がしました。

 


荻原規子著 「ファンタジーのDNA」 理論社

2007-09-20 | こんな本読みました

先日読んだ『樹上のゆりかご』の著者(荻原規子氏)の書いたエッセイ集。ウェブマガジンに月一回で連載したもの、書き下ろしのもの、某雑誌に寄稿したものが収められている。

著者の読書遍歴、ファンタジーに対する思い、読んだ本にまつわる話と感想、ファンタジーの書き方などが綴られている。以下が目次。

こどものころに読んだ感動
Ⅰ ファンタジーの根っこ
Ⅱ アニメと児童文学と
Ⅲ 読書という宇宙
Ⅳ ナルニアをめぐる物語
Ⅴ 私的ファンタジーの書き方

非常に読みやすく、本の感想などから著者の人となりが浮かんでくるようだった。荻原氏の著作は1冊しか読んでいないが、著者の目を通してファンタジーをとらえてみようか。。。と思った。

なぜなら、こんなことを言うのは大変失礼なのだが、荻原氏とちょいとばかし似通った性質をもっていそうなので。。。というのは冗談としてもファンタジーを読みなれていない者にとっては、なにかしらの水先案内が必要であるので(笑)。また、児童文学を学んでいるという点にも興味を抱いたので。

実際、自分は読んでいない本が次から次へと紹介されている。それは、ファンタジーであったり、SFであったり、古典であったりする。

二つほど印象深かった点があった。

ひとつは、ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(DWJ)についての記述。かなりの愛読者であるようで、氏の本の解説を執筆されたり出版パーティーに出席されたりしている。実は今『これは王国のかぎ』を読んでいるのだが、その本の表紙があまりにもかつて読んだDWJの本(『アブダラと空飛ぶ絨毯』)に似ていた。色調といい、図柄といい。。。

…ので???と思っていたのだ。同じ画家さんによる装画なのだと合点した。話の内容も「アラビアン・ナイト」風だからか。もしかしてDWJを意識しているのか…(笑)。

ちなみに画家さんは佐竹美保氏というかたです。氏はつい先日読了した『虚空の旅人』(上橋菜穂子著)の挿絵もされていました!このギョーカイでは実力者なのか…(汗)。

もうひとつは、著者の『赤毛のアン』に対する思い。小倉千加子著『「赤毛のアン」の秘密』(岩波書店)の読後感想とご自分のアン体験を通じて、アン・シャーリーについて、作者のモンゴメリの生き方についてふれている。また、モンゴメリが著者の母親に似ている…というあたりも興味深かった。

<子どもが友人同士で活き活きと遊ぶ世界をとらえた作品が好きだった。>という作者。<これらの作品が共通してもっている特徴><主となる子どもたちの冒険(本物の冒険というよりは、ごっこ遊びに彩られた世界)の楽しさ>もさることながら<わきを固める大人たちの存在感と距離感が絶妙なことだろう。>という。

<これは、現実にどうかという問題ではなく、作品世界がきちんと子どもの目から見る世界として描かれているということだと思う。子ども世界は、登場人物がどれほど奔放にふるまおうとも、どこかで大人の存在に依存するのだから。
しかし、このような子ども世界を過不足なく描くことはたいへんむずかしい。>

<大人の人間性に対する洞察力を鈍らせず、しかし、基本的な人間信頼は失わず、子どもの好奇心そのままに世界を見るには、すでに子どもっぽさ(大人ぶるのも子どもっぽさのうちだ)を乗り越えた、成熟した人格が必要なのだと思う。ある程度の高齢でないと、真にのびのびした子どもらしい世界を内に宿すことはできないのかもしれない。>

ご本人は<成熟にはほど遠い>と謙遜してらっしゃるが。。。著者の作品を期待して(笑)、もうすこし読んでみたいと思った。

 


上橋 菜穂子著 「虚空の旅人」 偕成社

2007-09-19 | こんな本読みました

<新ヨゴ皇国の皇太子チャグムは、隣国サンガルの新王戴冠の儀式に、帝の名代として参列、その開放的な国柄に魅了される。ところがこのサンガル国を支配しようと企むタルシュ帝国が、着々と儀式にむけての陰謀をはりめぐらしていった。<守り人>外伝。>

本書の最後のページに上橋菜穂子氏の著作が紹介されているのだが、上記はそこからの引用です。

……守り人シリーズを読んでいない人は、ちょっとわかりにくいかもしれませんね。<外伝>らしいので。

これだけ読んでもいいのだが、やはり皇太子チャグムの成長ぶりがうかがえるので、ここはまず守り人シリーズを読むことをおすすめします。

いやー。チャグム。きみは立派に成長したねー!ちょっとほれそう(笑)。
「精霊の守り人」で自分が経験したこと、そのときに感じたことをちゃんと自分のものとしていたことがわかる。そして、同じ体験をする者への慈愛にあふれている。

<「シュガ。ひとつだけ、約束してほしいことがある。
これからも、おまえがなにかの陰謀に気づいたとき、わたしをまもるためにその真相をかくすようなことはけっしてせぬと約束してくれ。……陰謀の存在を知りながら、だれかを見殺しにするようなことを、けっして、わたしにさせるな。」>


冷静な判断と周りへの気配りができる。為政者としてー。生きていくうえでなにが大事かをわかっている。人間としてー。

そしてチャグムとシュガとの関係もとてもいい。シュガというのは、チャグムの学問の師であり、相談役。チャグムのことを気遣い心配し、時には箴言する。二人あいだの信頼関係が描かれていてとてもいい。特にラストの二人の会話がなんともいえない。

<「そなたは、死にむかっておちていきながら、わたしの手をはなさなかった。あれは忠義などではなく、もっと別のものだった。……ありがとう。」
シュガは、なにもいえずに、まばたきをした。
「ゆるせよ、シュガ。このあやうさゆえに、わたしはいつか、そなたをも破滅へとひきずってしまうかもしれない。ーそうなりそうだと感じたら、いつでも手をはなせ。わたしは、けっしてうらみはしない。そんなときがきたら、むしろ、そなたには生きのびて、わたしとは別の方法で国をよくしていってもらいたい。」
「殿下……。」
チャグムは、もう点のように小さくなったハヤブサを、なおも目で追いながら、いった。>

……ううっ。引用が長い。でもあえて書いてしまおう。これから読もうとする人は決して読まないように!(もう、おそい?汗)

<「わたしは、あえて、このあやうさをもちつづけていく。天と海のはざまにひろがる虚空を飛ぶハヤブサのように、どちらともかかわりながら、どちらにもひきずられずに、ひたすらに飛んでいきたいと思う。
そして、いつか、新ヨゴ皇国を、兵士が駒のように死なない国に……わたしが、うす布などかぶらずに、民とむきあえる国にしたいと思う。ーおさない夢だと思うか?だが、このおさない夢を、わたしはずっと胸にいだいて飛んでいきたい。」
チャグムは、シュガをふりかえった。
「……そなたの才能を、まつりごとだけにすりへらすな。驚きをもって異界をみるまなざしを、けっしてくもらせないでくれ。」
シュガの目に涙がうきあがり、一筋、頬をつたっておちた。(後略)>


いろんな修羅場をともにくぐりぬけながら、お互いのよさだけでなく欠点をも十分に知り尽くした上での会話だと思った。

今回サンガル王国が舞台となるのだが、そこに登場する人々の複雑にからまる思いが王国の歴史(なりたち)とともに語られていて、非常によかった。物事を一面からとらえるのではなく、多角的にとらえる視点を著者はもっている。そこがすごい。特に女性が意志をもって生きている様が描かれている点に好感がもてた(自分が同性だからか。笑)

また、個人的にすきだったのが、スリナァという少女。突然、家族とはなればなれになり、自分ひとりの力で生きていかなくてはならない状況に陥る。逆境にも負けず知恵と勇気でのりきっていく姿に、はらはらしたりゾクゾクしたりした。

上質な物語を堪能したなあという充実感でいっぱいです。。。

……いやしかし。戦のかけひき、裏のとりひきなどの描写もおもしろく、最後はタルサン(サンガル王国の次男)の進退含めて、よくまとめあげたなあ。。。とひたすら感心するしかないです。すごい!上橋菜穂子氏!

 


炎天下にて。。。

2007-09-16 | 日々のあれこれ

用意するとよいもの
1)ぬれタオル(首に巻いてもよし、顔にあててもよし)
2)大量の水・お茶(水筒4つ以上!)
3)氷(クーラーボックスに)
4)うちわ
5)パラソル

本日の最高気温34度くらい?(てきとー)。
そんな中を6時間ほど、炎天下にいました。
きつかった。かなりきつかった。
日陰がほとんどない状況。
朝9時ごろバッタリと倒れてしまった人を見ました(汗)

……いや。今日は。。。

すばらしい秋空の下。
大運動会(某小学校にて)が開催されたのでした。
去年も見学したはずなのに。。。汗

備忘録としてここに書かせていただきました。

もしも。近いうちに炎天下に長時間いる予定のある方。
是非、暑さ対策を十分なさってください♪

<9月17日追記>
あー。いかん!大事なことをひとつ忘れておりましたー。
日焼け止めクリーム!
これを必ずぬりましょう♪
……鎖骨のあたりをぬり忘れてしまったので、今日ちょっとはずかしかったー(汗)

 


荻原規子著 「樹上のゆりかご」 理論社

2007-09-15 | こんな本読みました

著者は、自分の出身高校の先輩だった……と言われたら、即座にそうだろうなあと納得してしまうだろう。厳密にいえば、「著者」ではなく本書の主人公「上田ひろみ」なのだけれどー。それほど似ている。似すぎている。まあ、ありがちといえばありがちなのだろうけれどもー。

元男子校。昔は旧制中学。女子の人数はクラスの三分の一。生徒の自主性を重んじる。制服ではなく私服。行事(合唱祭、文化祭など)にもえる。学区内での大学進学率が高い。本校出身の教師が多い。。。

まあ、本書の舞台は都内(都市部)であり男子クラスが学年の半分ある、など細かい点を比べてみれば相違はあるけれども。

そんな公立高校(辰川高校)の中での高校生の日常の話。ありきたりといえばありきたり。恋ごころあり、事件あり、文化祭あり、友情あり。それを後半からはサスペンスタッチで描いていく。

生徒会長の鳴海智章。副会長の加藤クン。生徒会執行部員中村夢乃とその友人上田ひろみ。実直な近藤夏郎。そして女の部分を意識している近衛有理。彼らが中心となって話が展開していく。

………しかし。私にとっては、大きな発見のある本だった。

<「彼らは何かを必死に守っているの。辰川高校は、全体で何ものかを守っている……それに加担している点では、男子女子の区別はないものだけど、ときに女子ははじかれるわけなのよ」(中略)「守る……というのはピンとこないな。暗黙の了解がある……というなら、少し思い当たる」「暗黙の了解?」>

<「女子がはじかれているって……?」「守りの態勢というのは、本来臆病なものなのよ」>

<……(「名前のない顔のないもの」が女子を排除するって、そんなふうに言っていた。あれは正確にはどういう意味だろう。わかっていないのに、私がなんとなくそれを知っている気がするのは、どうしてだろう……)
有理さんがそれを語るに至った、彼女のいきさつを私はまだ知らない。でも、この私が自分の何かを重ねて共通する部分があったとすれば、男子クラスや執行部室に感じる気おくれー何か理解できないものがあると感じる、あの体験だった。
ただ、私は、正直言って「女子」とはいったい何かをきちんと把握していない。この学校へ来て、あまりに女の子として扱われるので、まだとまどっているくらい、内面では女子ということをつかんでいないと思う。有理さんは、排除される何をもって女子だというのだろう。
(……こういうことがわからないから、加藤クンとのおつきあいにも積極的になれないのかな……)>

早熟で賢い近衛有理との会話から、この学校内での女子というもののポジションをとらえようとする上田ひろみ。本について語り合いながら徐々に親しくなっていく。「サロメ」の作品分析についての会話が興味深い。

一見、ボーイッシュで男子とも対等にわたりあえる中村夢乃。鳴海智章に好意を抱く。じぶんのなかの女性の部分に気づいている。そしてそれは、近衛有理と恋敵を意味する。しかし一貫して女である有理にはかなわないと思う。

その両者とも近しい立場にいる上田ひろみ。彼女の目から見た「女子」というもの。それを描いている作品だととらえることができた(少々、自分に引き寄せすぎか?汗)。外見からくる異性への妄想などについても考えさせられた。

そして、私が高校時代に個人的に抱いていた漠然とした違和感。
「中学時代輝いていた先輩(女子)が、高校ではスカートにサンダル姿か…」となぜか失望してしまったこと。自分のために時間を使えるって楽だなー(なんて単純な発想!)をしていた自分に対する答えが得られたように思った。そして、女子校出身者と共学校出身者の立ち居振る舞いの微妙な相違点(例えばリーダーシップのとり方など)というのも、どういう立場に身を置いて過ごしたのかたのか…というのが関係してくるのだと思った。

……まあ、こんな自分でも多少は男子の声にちくりとくるものはあったのだが。

自分が高校生のころ「女子」が、学内で自分たちの立場をどう感じていたのか。どう男子は見、扱っていたのか。数少ない友人のひとりY子の意見を聞いてみたくなった。同級生の○くんにも(笑)。そういえば彼女も早熟だったなあ……(汗)。

…あ。女子校出身者の人にも(笑)。

<弱者を庇護することができるのが強者で、だからこそ支配もできるという構図があるとしたら、騎士と姫君の関係は、どちらが強者でどちらが弱者なんだろう」>

……なんてことをつらつら考えるのもおもしろいかも(笑)。

んー。。。なんか自分でもわけわからん文章になった(ゆるせ!笑)

*< >部分は、本書より引用しました。