ガーベラ・ダイアリー

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本の内容は基本的にネタバレです。気をつけてお読みください。

斎藤 惇夫著 「子どもと子どもの本に捧げた生涯」 キッズメイト

2008-02-20 | こんな本読みました

サブタイトルに<ー講演録 瀬田貞二先生についてー>とある。

本書は福音館書店編集責任者を経て作家活動へと専念された著者による、瀬田貞二氏について語られたものである。その内容は、著者だけが知りうる瀬田氏とのエピソード、そこから垣間見られる瀬田貞二氏の人となり。タイトルにあるように瀬田氏の子どもと子どもの本へ捧げた情熱とその仕事ぶりなど。著者の瀬田氏を師と仰ぎ敬愛されていたことが伝わってくる。

また巻末資料として、五名のかたによる瀬田貞二氏への思い(エッセイ)が収められており、いろいろな角度から瀬田貞二氏について知ることができた。

以下が目次

はじめに
日本の絵本を語る言葉のはじまり
  私にとっての瀬田先生
  子どもの本を語る言葉の確立ー瀬田節
  私の最初の物語を読んでいただいたこと

一九五〇年、日本の児童文学の夜明け
  「岩波少年文庫」と『児童百科事典』の刊行
    「岩波少年文庫」と石井桃子
    『児童百科事典』と瀬田貞二
  石井桃子と瀬田貞二の出会い
  日本の絵本の開花を支えた二人

能力と時間のすべてを子どもたちに解放した生涯
  幼・少年時代
    瀬田貞二は作家であったか?
    仲間と楽しむ「場」を作る天才
    幼年時代の読書
  中学・高等学校時代
    趣味多き少年
    「場」の文学、連歌への憧れ
  大学時代
    中村草田男から学んだこと
    政治・組織を拒否する姿勢
  青年時代
    夜間中学と兵営での「場」作り
    戦友の戦死ーディレッタンティズムとの決別
  先生の戦後
    生涯を子どもたちに捧げる
    天狗の魔法
  あとがき

解説ーーーーー小寺啓章 

巻末資料
 瀬田貞二年譜
 瀬田貞二著作目録 
 カッパ(河童)  瀬田貞二
 百科事典について  中野重治
 瀬田貞二君の思い出  日高六郎
 「落穂ひろい」の日々  荒木田隆子
 瀬田貞二著『絵本論』をすすめる  松岡享子
 アン・キャロル・ムアのブックリスト

さてさて。こうして目次を見てみると、瀬田貞二という人がどういうことを行い、どういう人だったのがざっと見えてくる。

自分自身をふりかえると、瀬田貞二氏の名前はなじみのあるものだったのだが、訳された著書をはじめ、人となりなどほとんど存じ上げていなかった。なので、非常に興味深くかつ瀬田貞二という人の生き方とその仕事ぶりに魅かれるところが多々あった。

とくに心に残ったところを< >で引用する。

<戦後まだ間もないころに、なぜ自分の生涯をかけてまで子どもと子どもの本を考えるような人があらわれたのか。しかもその考え方が、最初から今の子どもの本に対する見方、考え方の基本となるほどに熟成したものであり、なおこれからの子どもの本に対する予言とまでなっているのか。また、忘れられつつあった「子守歌」や「わらべうた」、そして「なぞなぞ」や「ことわざ」や「昔話」、つまり子どもたちの遊びのなかにあったもの、そして親と子のあいだで遊びとして楽しまれてきたものを、文学として高く評価し、子どもたちに積極的にかえそうとしたのか、あるいは返す道筋を考えようとしたのか。さらに、ほとんど孤立無援で、わが国の歴史のなかから、消えてしまったと思われていた子どもの本を丹念にさぐりあて、顧みられることのなかったひとつの文化を掘り起こすという、とほうもないことをくわだてるにいたったのか、そこまではどうしてもよくわからない。>

<絵本が、子どもの本が、人間にとってどんなに喜ばしいものであるのかを、ほとんど思想・哲学の問題として、総合的に、人間的に、歴史的にとらえ、しかも子どもたちの心のなかから決して離れることなく、滑らかで初々しく、そして恥じらいをたたえた勁(つよ)い口調でーよく瀬田節といわれていましたがー、語った方はいないのです。>

これらの文章を読んだだけでも、瀬田貞二氏というかたが子どもたちの文化にどれほど貢献してきたかが推測できる。読み進めていくうちに、これらのなぞについて著者の考えがあきらかになりされ、それを知るたびに瀬田貞二氏の業績のすばらしさにうなりそうである。

<絵本や子どもの本全般を語る言葉は、絵と文学に対するなみなみならぬ見識があって、ようやく生まれてきます。それがなかったならば、とても絵本や子どもの本全般を語ることはできません。この二つが融合したものが子どもの本だからです。おまけに、子どもをどうとらえるか、子どもにとって絵とはなにか、言葉・文学とはなにかとういう根本的な問題もふくまれています。絵画論と文学論と、子ども論。この三つが解決されていなくてはならない。このひとつひとつは、それだけであまりに大きなテーマになるものですが、この三つを解決し、統合なさろうとしたこと、それこそが、先生のなさったお仕事だったのです。>

ここで瀬田貞二氏の仕事を年譜から少しだけ取り出してみると。。。
「三びきやぎのがらがらどん」訳、「かさじぞう」再話、「少年少女世界文学全集10(イギリス編)」共訳、「児童文学論」共訳、「ホビットの冒険」訳、「ナルニア国ものがたり(全七巻)」訳、「指輪物語」訳、「幼い子の文学」著、「絵本論」著などなど。とても精力的な仕事ぶりだ。

そしてそのきっかけとなったのは。。。

すみません。筆者ここで力尽きました。つづきはまた今度。。。

 


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