甘いものがすきである。が、それだけを食べているとさすがに飽きてくる。甘いもののあとには辛いもの。もしくはしょっぱいものを食す。そしてまた甘いもの。それをくりかえす。
そんなふうにして食べると、満腹感を得るまでもの(おやつ)を食べ続けることができる。いや食べ続けてしまう。
本書も、そんなふうに甘いもの(ロマンスの部分)と辛いもの(SFの部分)とのバランスがうまくとられており、最後まで読み続けていくことができる。いや読み続けてしまう。
いわゆる恋愛小説のようなものは好んで読むほうではない。ハーレクインロマンスというロマンスをメインとした海外の小説群があると聞いたことがあるが、いまだかつて手に取ったことがない。
なにもラブロマンスが嫌いなわけではない。ドキドキするのは好きなほうである。しかし、人のロマンスを読んでそれほどドキドキすることはない。しかし。これは違った。
なぜだろう?
理由をつらつら考えてみるに、まず主人公となる人物にある種の親近感を覚えたからというのがひとつ。そして、もうひとつがチラリズム(笑)。精神的な面での。それは、主人公の性格によるものなのか、作者の筆力によるものなのか。まだ判然とはしないが。
冷静な判断で仕事に真剣に取り組み自制心をもった男女が、内面では自分の気持ち(感情)に動揺し自分の偽らざる気持ちに気づいていく過程が描かれていて面白かった。男性の視点と女性の視点が交互に入れ替わりながら物語がすすめられ、感情移入して読むことができる。
しかし、本書はハヤカワ文庫から出版されている。決してハーレクインロマンスではない。
ハヤカワ…といえばSFだ。自分はSFというものをあまり読みなれていない。しかし本書はSFの世界にすんなり入っていくことができた。
…なぜだろう?これまたつらつら考えてみた。
むずかしい用語や単語や仕組みが出現せず(これが自分にとってのSFのイメージなのかも)、某植民惑星での超能力者とそれを受けとめるプリズムという能力集中者が登場する。その世界観とそのなかの人間のやりとりに無理がないというのが大きな理由かもしれない。非常にイメージしやすかった。
どんなジャンルであるかこだわることは、もしかしたら邪道かもしれない。物語を楽しむ…それができれば自分の読書はマルである。