今日11月20日の日経新聞朝刊に「飲食店ガイド本・ミシュランの東京版が19日に公表された・・・・全体で150店がが星を得た。これはパリの64を大きく上回り、東京は世界で最も星付きレストランの多い都市になった」という内容だ。FTも同じニュースを取り上げている。ただしこちらは星の数で東京が世界一になったことに対して、かなり反論を寄せている。
ロンドンには三ツ星レストランはGordon Ramsay一軒しかないので、英国を代表する高級紙のFTとしては憤懣やるかたないのか?と疑いたくなる。因みに三ツ星レストランはパリで10軒、ニューヨークで3軒、東京は日本料理が5軒、フレンチは3軒だ。フランス料理でみる限りニューヨークと並ぶということになる。
FTは「星の大盤振る舞いは、儀礼を重んじる日本人の感覚に訴える作戦のように見えるが、フランスとミシュランを美食の伝道者と考えているグルメ達を困惑させる」という。またFTの姉妹紙Les Echosの東京特派員は「星を誰にでも上げるというのは極めて奇妙な政策に見える。恐らく商業上の理由だが、ともかくも失望させられる」といっている。
ミシュランのライバル・レストランガイド・ゴー・ミヨGault Millauの役員が「ミシュランのレストランランクは割り引いてみないといけない」と言っている。割り引いて見る(話を聞く)の原文はshould be taken a grain of salt。一粒の塩を取るというところがレストランの話と重なって軽妙さを出しているが、grain of saltの意味を知らないと話が通じない。英語という言葉は単語は簡単だが、熟語となると難しくなる場合がある。
ところでミシュラン側の責任者ナレNaret氏は次のように反論している。「東京のレストランは数と質の上で他を圧倒している。正しいレストランと分類されるものが少なくとも東京には16万軒ある。パリは2万軒ちょっとでニューヨークは2万3千軒しかない」「東京は近年伝統的な日本食のみならずヨーロッパ料理においても国際的にトップのレストラン地域になった」「最近少なくとも 20人のミシュランの三ツ星を持つシェフが日本主に東京で開業している」
「このレイティングに文句を言う人は東京に旅したことがない人だ。もし東京に来たならばファンタスティックな質を持つレストランを彼ら自身で見るだろう」
最後にFTはそうは言ってもコンラッドホテルに入っているRamsay(ロンドンで三ツ星を取っているレストランの姉妹店)は、ミシュラン東京版には入っていないので、大丈夫なのか?と皮肉っている。
さてここからが私のコメントである。まず東京のレストランの数がニューヨークやパリを圧倒している理由は何だろうか?
色々理由はあるが、私は食事を楽しむ女性が増えていることだと考えている。ためしに昼の銀座辺りのちょっとしたレストランをのぞいて見ると良い。この前ワイフと娘でマロニエ・ゲートにあるポール・ボキューズの店に平日の昼に入ったところ95%位は女性だった。若い人同士、中年の人のグループあるいは母娘と見受けられるカップル、兎に角女性女性である。
良く言えば女性の経済力があるということだし、悪く言うと銀座で美味いものを食う位しかやることがない~というと世の中の女性陣から「なによ!自分はお酒ばっかり飲んでいる癖に!」と猛反発を食うあろうが~ということだ。パリは知らないがニューヨークに昔暮らしていた時の感じでは普通のアメリカ人は滅多に高級フレンチなど食べに行かないのである。パブでちょっと飲む、あるいはまっすぐ家に帰ってスポーツクラブに行ったり、庭の垣根を補修したりしている。休みの日はボランティア活動や学校の行事に参加する人も多い。
もう一つは日本は他の先進国に比べて格差が少ないということだろう。従って誰でもが割りと気軽に高級レストランに行けるのだ。
ところでこれは私見だが、日本のレストランに沢山星を与えたのは「食を事業としている」フランスの産業政策かもしれない。つまりフランス人シェフやレストランブランドを輸出して商売とする・・・・というと余りにけちな見方だろうか?
アメリカが格付機関セットでサブプライム関連債券を世界中に売り、フランスはミシュランの格付を付けてフランス料理を売る・・・・
そういえばポール・ボキューズもフランスで三ツ星を取っているレストランだ。もっともこのようなけちな見方をしては「ミシュランの星を失って自殺する」まじめなシェフ達に叱られるかもしれないが。