金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

北朝鮮の軍事力は?(CNNのレポートから)

2010年11月25日 | 国際・政治

一昨日韓国の延坪島を突然砲撃して、世界を驚かせた北朝鮮だが、多くの専門家は事態が拡大する可能性は低いと見ている(もっとも菅首相は自民党の小野寺氏の質問に対して「状況によっては朝鮮戦争を勃発しかねない極めて重大な案件だと考えた」と答えているが)。

専門家が北朝鮮の武力行使がこれ以上エスカレートしないと見ている理由は、北朝鮮は本気で南北朝鮮が衝突すると勝ち目がないと判断しているからである。つまり米韓が本気で北朝鮮に報復攻撃を行わない範囲で計画的に挑発しているという訳だ。朝鮮日報によると北朝鮮側は入念に計画の上、曲射砲での砲撃を実行した(直射砲では山陰になる延坪島南部を射撃できなかった)。

ところで気になる北朝鮮の戦力。CNNレポートは次のように報じる。タイトルは「北朝鮮の通常兵器は古くて時代遅れだが、軽視するべきではない」

去る10月10日朝鮮労働党65周年の軍事パレードで、軍事アナリストの目を引いたのは、射程距離3千km-4千kmと予想される車搭載型の弾道ミサイルと新型ノドンミサイルだった。このミサイルとイランのShahabミサイルとデザインが似ており、両国の軍事的共同関係が推測される。

核兵器と弾道ミサイルは、老朽化した通常兵器をカバーし、交渉力の切り札となっているが、通常兵器についても軽視するべきではない(単にその規模が大きいだけにせよ)とCNNは警告する。

韓国のアナリストによると、北朝鮮は02年から08年にかけてなけなしの外貨をかき集めて65百万ドル相当の武器を中国、ロシア、東欧から購入した。一例として北朝鮮は中国からZM-87という対人レーザー兵器を買ったと思われるとCNNは報じている。

このZM-87は1995年の国連条約で禁止され、2000年以降生産されていないというから、中国は「不用品」(軍事的には威力はあるだろうが)を北朝鮮に売ったのかもしれない。

だが大部分の北朝鮮の武器は、中国やロシアの武器をモデルにした国産品だ。たとえば、ロシアのT-62戦車をモデルしたPokpoongという戦車を作っているが、米国の最新型戦車への対抗力はない。

北朝鮮軍の弱点は継続的なコンピュータ不足によるハイテク兵器の欠如である。

例えば韓国は弾道ミサイル迎撃可能なイージス艦を3隻建造している。イージス艦は一隻10億ドルである。北朝鮮は400隻以上の戦闘艦を持っていると推定されるが、質の面では韓国海軍に対抗できないだろう。

航空戦力においても北朝鮮の戦闘機は旧ソ連の老朽化したミグ戦闘機(一部新型のミグ29あり)で、韓国軍のF15戦闘機や米軍のF16戦闘機に太刀打ちすることはできない。また専門家の分析では、燃料不足と燃料不足からくる戦闘機パイロットの訓練不足(年間25時間の飛行訓練)という話。

陸軍も同じ状況で、兵隊の数は韓国の倍以上の100万人(予備兵は7百万人)だが、燃料と砲弾不足から訓練不足である。

以上のような状況から、北朝鮮が韓国に全面的な攻撃を仕掛けると予想する専門家はほとんどいない。なぜなら米韓軍に反撃され、その結果金政権の崩壊につながると予想されるからだ。

また実際的な問題として、韓国側は国境線からの道路に障害物を設置しているので田んぼが凍結する冬季以外は戦車による進攻は困難だろうと言われている。

☆  ☆  ☆

このように分析すると経済基盤が弱い北朝鮮が全面的な戦争を起こすのは無理な話。北朝鮮の軍事予算について米国防省はGDPの25%と推定している。GDPは278億ドルと推定されるから軍事費は70億ドル。韓国の軍事費は225億ドル。これでは戦争にならない。

従って北朝鮮は「本格的報復を受けない程度で挑発を繰り返す」のである。また米韓とも金政権が転覆し、北朝鮮が崩壊すると手に負えないので程ほどの反撃をする・・・

というのが当面の情勢だろうか?

だがこの危ういゲームの暗黙のルールを踏み外す可能性もゼロではない・・・ところがリスクだ。

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北朝鮮の韓国砲撃は内部崩壊... | トップ | 日本株、予想はポジティブに... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは。今回の北朝鮮の砲撃は西側メディアか... (Hiko)
2010-11-27 15:20:54
こんにちは。今回の北朝鮮の砲撃は西側メディアから見れば「蛮行」(管総理)でしょうが、
一方で、私は盧溝橋を思い浮かべました。国境近くで、「軍事演習」をされれば、軍隊はどう
感じるか。盧溝橋もどちらが「最小の砲弾」を打ったかは未だ判然としません。朝鮮戦争は未だ「休戦状態」と言う事をあらためてremindさせてくれました。数年前に盧溝橋を出張の合間に訪問しましたが、すぐ近くに「抗日博物館」があり,除くと中国視線の展示のオンパレードで、小学生の団体が、先生に引率され「社会科見学」で来ましたので、足早に博物館を後にしたのを思い出しました。歴史の「事実」は一つでしょうが、その共有すら難しく,ましてや,歴史観の共有は無理で、Agree to disagree出来るか?が重要と思っています。
返信する

コメントを投稿

国際・政治」カテゴリの最新記事