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日本株、予想はポジティブになったが、世界デフレリスクは残る

2010年11月26日 | 株式

アイルランドや北朝鮮の問題があったものの、日経平均は1万円を割らずに頑張っている。日本株は今月に入ってかなり順調だ。ファイナンシャル・タイムズはその背景と今後の見通しについて業界筋の情報を紹介している。

最近の日本の株高は米連銀の金融緩和政策の影響と近時少し円安に振れていることによる。また日銀によるETFとREIT購入も市場の下支えだ。

また企業業績も好調だ。モルガンスタンレーMUFG証券は6割の会社が今年度の業績を引き上げ見直しを行っていると推定している。それにより一株当り利益は向こう2年間で各年15%から20%上昇する可能性がある。なお同証券は成長率はまだ株価に織り込まれていないと述べている。

同証券のチーフストラテジストKinmont氏は「市場はこのところの上昇の後、一休みをして、再び上昇に向かう。企業収益は予想よりも好調で上昇相場を助けたが、まだ完全に消化されていない」と述べている。

もっとも多くの投資家が日本株を避けていた理由~人口の高齢化、鈍い国内成長率、構造改革に対する政治的意思の欠如、持続的なデフレなど~はなんら解決していない。インベスコの日本株マネージャーRoberts氏は「日本株に対する未解決の嫌悪感がある」と述べる。

その一例は米連銀の第二弾目の金融緩和を予測して米国のS&P500は9月、10月とラリーを続けたが、日本株は11月に入って漸く上昇しはじめた。

Roberts氏は日本株は相対的に割安だと信じている投資家・ストラテジストの一人だ。モルガンスタンレーMUFG証券によると、TOPIXの季節調整後のPERは13.2倍でMSCI欧州の13.9倍、S&P500の20.2倍やアジア株(除く日本)の21.5倍よりも低い。

また野村證券は増配と自社株買いが市場をサポートすると述べる。野村證券によると今年度(3月期)配当は約3分の1増加し、自社株買いは58%増加すると予想している。

アナリスト達は上海株の不調などから投資マネーが日本に流れ込んでいることもプラス要因だと見ている。

モルガンスタンレーMUFGのKInmont氏は「実際のところエマージング市場に悪い状況は日本株には良い状況ということだ。世界は発展途上国をオーバーウエイトするために、先進国をアンダーウエイトしていないかどうか証明することはできないがその可能性を疑っている。特に発展途上国をオーバーウエイトするため、日本株をアンダーウエイトしている可能性が高い」と述べる。

だが既に述べたような日本株を取り巻く重荷が予測可能な将来に消滅する見込みはない。日本経済の分析に定評のあるピーター・タスカ氏はこれを「金融および知的資本の日本からの巨大な逃避」と呼ぶ。

その結果日本株の個別銘柄をカバーするアナリストが減少し、市場の非効率性が高まっている。逆の言い方をすると、個別銘柄に投資する投資家にとって「割安な株を見つけ出す」可能性があるということになる。(ご承知のように「効率的市場仮説」は高度に効率的な市場では、市場参加者は瞬時に情報を共有するので、個々の投資家は掘り出し物を見つけることはできないと述べる)

あすかコーポレートアドバイザリーの中神社長は過去10年間で、TOPIX全体では時価が3分の1以上減少したが、41%の会社の株はプラスのリターンを上げていると計算している。中神氏は株価が上昇した会社は「ユニークな競争力」と「独立心を持った経営」を持つ傾向があると述べている。同氏は特に中小型株の中に「隠れた宝石」があると述べている。

だが「日本株の主なリスクは世界のデフレだ」「もし世界がインフレになると日本は最良の投資対象の一つになるが、もしそうならずに世界がデフレにはまり込むと日本はデフレから抜け出すことは決してできないだろう」というタスカ氏の警告で記事は終わっている。

☆  ☆  ☆

日本株市場が非効率な市場だという分析が正しいとすると、日本株についてはパッシブ運用は非効率的な運用ということになる(少なくとも運用資産がそれ程多くない個人投資家にとって)。

日本株投資におけるパッシブ・アクティブ運用の比率を考える上で留意しておくべき点だろう。

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