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北朝鮮の韓国砲撃は内部崩壊の兆候か?

2010年11月24日 | 国際・政治

昨日の北朝鮮の延坪島砲撃の狙いについて、内外メディアは主に二つの可能性を指摘している。一つはウラン濃縮装置の公開と合わせて、北朝鮮の武力行使能力を誇示することで、米国との二国間協議に漕ぎ付け経済援助を引出そうとしているという可能性。もう一つは金正恩への権力継承のための体制固めの可能性。なお少数ながら現地部隊の暴発という見方もある。

ファイナンシャルタイムズは、The Center for a New American Securityのシニア・フェローRobert Kaplan氏のAttacks that maysignal a Pyongyang improsionという寄稿を紹介していた。Kaplan氏の説は「体制固め説」に近いと思われるが、注目するべきは北朝鮮の内部崩壊の兆候ではないか?と指摘している点だ。だがより注目するべきは、北朝鮮の崩壊が東アジアの相対的に安定していた安全保障環境が変化するだろうという指摘だ。

我々に必要なことは「原因の究明よりも具体的な対応策」なのだろう。釈尊に「毒矢の教え」という説話がある。それによると「毒矢を射られた人はその矢が誰により射られたものかを詮索するよりまず毒矢を抜いて処置をしなければならない」と釈尊は教えられた。我々はまず毒矢を避けることを考え、また万一毒矢に当たることを視野にいれその時の処置を考える必要がある。

さてKaplan氏の寄稿に話を戻すと、北朝鮮は核開発、春の韓国護衛艦の雷撃、今回の砲撃などを通じて、新しいリーダーとしての金正恩の信任固めを図っている。これは私の表現だが、北朝鮮は戦時体制という自転車に乗っている国だ。走り続けることでのみ政権を保ちうる。

ところがKaplan氏によると、若い金正恩の地位継承を進めているのが金正日の義弟のJang Song-taek張成沢と正日の妹のKim Kyong-huiである。今まで金正日一極体制だったが、北朝鮮史上初めて多極体制になりつつある。

そこで信任固めのため軍事的行動が目立っているが、Kaplan氏はこれを金政権がひどく困難な状態にある兆候ではないかと分析する。

金政権が崩壊するとどうなるか?北朝鮮の23百万人が難民となり、国際的に(実質的には米中韓で)保護されることになるだろう。Kaplan氏は概念的には金政権の交替は歓迎するべきことながら、イラクの先例から独裁政権でも無政府状態よりはましだということを思いおこすべきだと述べる。

最後にKaplan氏は金政権の崩壊は、中国の台頭とともに、アジアの不安定要因になり、日本からオーストラリアにいたる総ての国の軍事的負担を増すだろうし、米中関係の新たな試金石になると結んでいる。

☆   ☆   ☆

北朝鮮の崩壊は時間の問題と考えて真剣に対策を講じる必要があるのだろう。何とかなる・・・というのは希望的観測以外の何ものでもないだろうと改めて感じた次第である。

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