金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

今は「有事のドル買い」が機能しない理由

2011年03月01日 | 金融

「有事のドル買い」という言葉は、為替の世界で死語になるかもしれない。FTはDollar's haven status hangs in the balanceというタイトルの短い記事で、何故現在中東情勢が緊迫しているにも係わらず、ドルが買われないか?ということを分析していた。

hang in the balanceとは「崖っぷちにいる」という意味で、「ドルの安全資産としての地位は崖っぷちにいる」ということだ。ドルは安全資産としての魅力haven appealを失っている。

では何故ドルは魅力を失っているのか?FTが第一に上げるのは産油国のソブリン・ウエルス・ファンドの投資行動だ。原油高になると、資金は石油輸入国から石油輸出国にシフトする。ところが産油国のウエルス・ファンドの通貨配分は中央銀行の通貨配分より、ドルのウエイトが低いとUBSの為替ストラテジストのチーフは述べている。

またソシエテ・ジェネラルの為替リサーチ・チーフは現在の環境を「リスク回避しかし金利敏感」型だと表現している。前者はスイス・フランや円が買われる理由の説明で後者はユーロが買われる説明だ。

ユーロやポンドはインフレ懸念から、米国が金利引き上げに動く前に金利引き上げに動くと考えられるから、ドルよりも投資家に選好される訳だ。

米国の連銀は当面インフレ懸念より、経済成長を重視しているから、第三回目の量的緩和が予想される。また米国が中東で軍事行動に巻き込まれることを懸念する人もいる。

だがドルがこのレベルから更に弱含むかというと、オイルが150ドルをつけた2008年にその後ドルが急反発したことを引き合いに警鐘を鳴らす人もいる。暫く市場は神経質な動きをすると見ておくべきだろう。

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