金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

Decade(10年)の尺度で見れば

2009年12月29日 | うんちく・小ネタ

クリスマス前から欧米の新聞では「この10年」「これからの10年」という議論や予想が多かった。2000年代の最初の10年が過ぎ、次の10年が始まるからだ。10年のことを英語ではdecadeという。DecadeのDecaの語源は10を意味するDekaで、decadeという言葉が使われだしたのは15世紀中頃だそうだ。

日本語に10年を指す特別な言葉はないと思うが、10年を一単位とする考え方は古来よりあった。直ぐに思いつくのは論語に出てくる孔子の言葉だ。

「我四十にして惑わず、五十にして天命を知る。六十にして耳順(した)がう。」である。世の中のことも己のことも十年単位で見る・・・という視点は必要なのだろう。

過去10年は簡単にいうと、ITバブルの崩壊とその後の金融の超緩和、それによる欧米の不動産・サブプライムバブルの発生と崩壊。米国の消費景気や資源ブームに支えられたBRICs諸国の躍進の時代だった。そして残されたものは先進国政府の大きな借金である。

次の10年を予想する鍵は何だろう?

常識的なところだが、石油を中心として資源・水を含む食糧・環境・高齢化と健康などがキーだろう。石油については、国際エネルギー機構の推計が正しいとすると、次の10年の終わり頃、産出量はピークを迎える。それから先急に石油が枯渇する訳ではないが、産出量は逓減していく。

10年先の石油価格を予想すること不可能だが、代替エネルギーの開発や省エネ化が進まないとかなり高いものになっているだろう。また代替エネルギーの開発が進んでも、恐らくジェット機やロケットの燃料が石油に依存してることは変わらないだろう。とすると海外旅行の値段は高いものになっている可能性が高い。「海外旅行を楽しみたい」と考えている人は早い目に行く方が良いかもしれない。

今年の夏頃、ピムコのビル・グロス氏が「ニューノーマルへの移行」ということを唱えた。ニューノーマルへの移行とは、米国の消費者の借金が臨界点を超えたため、今後貯蓄(借金の返済を含めて)性向が高まり、消費支出が減り、地味な生活の時代に入るというものだ。

今日の日経新聞にはRepair(修理)、Reuse(再利用)、Rental(レンタル)の3つのRがキーワードだと書いていた。これもニューノーマルの一つだろう。だがこのことは悪いことではない。地球環境と限られた資源を守るための神の配慮と考えるべきである。

以上のように考えるとこれから先の10年は、今のところ先進国においては節約型の10年が予想される。しかし人は節約・節約では逼塞感に息が詰まる。また目標のない人生は余りもむなしい。人はやがて心と体の鍛錬という目標に向かって歩き始め、走り出す。

「荘にして学べば、即ち老いても衰えず。老いて学べば即ち死しても朽ちず」と至言を述べたのは江戸後期の儒学者・佐藤一斎。「学べば」のところは各々自分の好きな趣味を入れてはどうだろう。

私の場合「(山に)登る」を入れたい。壮年時代に山に登れば中年になっても衰えることはない。中年になっても山に登り続ければ、老年になっても朽ち果てることはない・・・・

高齢化の進む日本の中で、このような分野にフォーカスする産業は活路を見出すと私は考えている。

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アメリカの楽観、フランスの悲観

2009年12月29日 | 社会・経済

FTの依頼を受けたハリス調査は、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、米国で「今は10年前より良いと感じているか?」「10年後は今より良いと思うか?」という世論調査を行った。

調査結果によると、米国のリセッションにも関わらず、10年後の見通しについて米国が欧州諸国より楽観的だった。また米国の方が欧州よりも過去10年間で個人的な生活水準が向上していると感じている人が多かった。

過去10年間で生活水準が悪化したと感じる人が一番多いのはフランスで、44%の人が悪化したと感じている。二番目はスペインで37%の人が悪化と答え、以下イタリア33%、米国33%、英国32%、ドイツ31%が続く。

向こう10年間の見通しについては、フランスでは4割以上の人が悲観的で楽観的な人は2割強に過ぎない。次に悲観的な国は英国で35%強の人が悲観的で楽観的人は30%を切っている。その他の国は楽観的な見通しを持つ人が悲観的な見通しを持つ人を上回っている。一番楽観的な見通しを持っている国は米国で4割強の人は楽観的な見通しを持ち、悲観的な見通しを持つ人は3割強だ。

「国が向こう10年間に経済的に個人を支援する期待度」も調査されているが、ここでもフランスが最悪で、75%の人は国のサポートは今より悪くなると回答している。英国では69%の人が悪化すると回答。以下ドイツ68%、イタリア55%、スペイン55%と続き、米国は54%だ。

国民の将来見通しの明暗が消費動向や経済活動に影響を与えるとすると、米国の方が欧州より活気があると判断できる。私は少し前から来年は「ユーロ安・米ドル高」になると見ているが、ハリス調査はこのビューをサポートするものだと考えている。

ハリス調査は日本をカバーしていないが、もし日本で調査をするとどのような結果になっただろうか?

最近内閣府が発表した日本の一人当たり名目GDPは世界で19番目だった。直ぐ後ろにはスペインやギリシアが迫っている。もし同じような調査をすると日本はフランスを抜いて最も悲観的な国になったのではないだろうか?

ところで2年前(2007年)の5月にサルコジ大統領が選ばれた時、楽観主義が広がったが、支持率は急速に下がった。FTはフランス国民が将来について悲観的な理由は「サルコジ政権が財政規律の回復のために、社会福祉や健康保険給付を削減することを恐れているからだ」と解説している。

米国人が何故楽観的なのか?につてい分析はないが、私は他の先進国ほど人口高齢化の問題が深刻でないことや今まで健康保険など社会保障が薄かった分、今後の保障拡大余地が大きいことなどが原因だろうと考えている。

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