23日付のFTに「投資家はアナリストの業績予想を無視する」という短い記事がでていた。Tulane大学のHansen教授などの研究は、1997年から2007年の間に四半期ベースおよびより長期の業績予想の変更が発表された後、株式市場がどう動いたかを分析したものだが、アナリストの業績予想の変更は投資家の銘柄選択にほとんど影響を与えなかったことを明らかにした。
Hansen教授はその原因について「我々の見解では業績予想は株式について市場に新しい情報を提供するものではない。それは恐らく重要な情報だろうが・・・既に株価に織り込まれているだろう」と述べている。この研究結果は「効率的市場仮説」特に「セミストロング型効率的市場仮説」の考え方に一致するものだ。「効率的市場仮説」は「仮説」という言葉が示すとおり、有意性は必ずしも実証されなかったが、このような研究が積み重なると「仮説」が仮説でなくなる日が来るかもしれない。
FTによるとこの研究に対して証券会社の何人かのリサーチ部門のトップはコメントを公表することを差し控えている。しかしあるアナリストは「アナリストは違った方法で付加価値を提供しているし、短期間に株価を動かすことはアナリストの主な目標ではない」と述べている。
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少し実例を見てみよう。たまたまネット経由で本日JPモルガン・アセット・マネジメントが運用するJFアジア株・アクティブ・オープンというファンドの運用報告書が送られてきたが、このファンドの運用実績(5月から11月の期中騰落率)は23.2%で、ベンチマークのMSCIオール・カントリー・ファーイースト・インデックスの実績と全く同じだった。過去2年ほどの騰落率を見てもベンチマークとほとんど変わらないのである。このファンドはモーニングスターで☆2つと評価が高くないファンドなので、この一事をもって「アクティブ・ファンドのパフォーマンスは市場平均並である」と断言することは危険だ。しかし「将来高いパフォーマンスを上げるファンドをピックアップすることは幸運の賜物」と考えると、インデックス運用が当たり外れのない運用方法であることは間違いない。
幸運の賜物といえば、2年程前インドのIT大手企業・インフォシスのADRを買っていたことはラッキーだった。インフォシスのパフォーマンスをダウと比較すると、この1年でダウが22.8%上昇したのに対し、インフォシスは122%上昇した。過去5年で較べるとダウは▲3.23%なのに較べてインフォシスは63.6%上昇している。
ところで1年前のこの銘柄に対するアナリストの推奨はどうかということを調べると、33人のアナリストの内15人が「買い」、7名が「アウトパフォーム」、5名が「保有」という判断を下していた。少なくとも3分の2のアナリストが「市場平均を上回る」と判断を下していた訳だ。
これを見る限りアナリスト集団全体の意見を聞くのも悪くない・・・という気はしてくる。もっとも逆の場合もあるのだが・・・
いずれにせよ個人が限られた資金と時間の中で市場を上回る運用成果を上げることは幸運の賜物程度に考えておく方が良いと私は考えている。