金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

健康はお金で買えるのか?

2008年01月15日 | 健康・病気

今年国内外で大きな話題になるのは健康問題、特にメタボリック症候群と医療費問題だろう。メタボリック症候群については日本で今年の四月から「特定健康診査・特定保健指導」が始まるからだ。特定健康診査のスタート点は腹囲(男性85cm、女性90cm)とBMIだ。BMIとはBody Mass Indexことで、「体重(kg表示)÷身長(m表示)の自乗」で計算される。私の場合身長1.7m、体重69kgなので
69÷(1.7×1.7)=23.87である。BMI25以上は肥満とみなされるのでかろうじて踏みとどまっているというところだ。BMIが低すぎるのもやせ過ぎでいけない。一般にはBMIが18.524.9を正常範囲といっている。
医療保険問題が大きな話題になるのは米国だ。貧困層に対して税金でどこまで医療費を負担するか?という問題は大統領選挙の一つの争点になるはずだ。
「メタボ問題」と「医療費問題」は密接な関係がある。例えば日本で特定健康診査が持ち出されたのは、このままでいくと56兆円に膨れ上がる医療費を48兆円に抑えるには「メタボ対策」が必要ということで、厚生労働省が音頭をとったものだ。

ところで最近のエコノミスト誌の記事で「先進国は75歳以下の防止可能な死亡をどれ位下げているか?」というものがあった。(研究を行っているのはロンドン衛生・熱帯医療大学)
その研究によると1997年から2003年の間にオーストリアがトップで25%減少させている。二位はほぼ同率でアイルランド、
三位ノルウェー、四位英国続き日本は19ケ国中下から4番目で13%。米国はダントツに低くて4%でビリだ。

「防止可能な死」として研究は「バクテリアによる感染」「治療可能なガン」「糖尿病」「手術による合併症」を挙げている。男性の5分の1、女性の3分の1が「予防可能な死因」により死亡している。
余談になるが「防止可能」という言葉をエコノミスト誌は様々な単語で表現している。Preventableavoidableamenableという具合
に。(同意語を多様するのが、良い文章だという英語の慣習は外国人には手間がかかるものだ。)

一人当たりの医療費を一番多く使っているアメリカなのに防止可能な死亡を減らす点でもっとも成績が悪いというのはどういうことだろうか?エコノミスト誌はこの点について結論を出していないが私は論理的および現実的に幾つかの可能性があると思う。97年当時の死亡率がこの記事からは分からなかった。論理的にいうともし既に死亡率が相当低ければ改善の余地があまりないことになる。恐らく日本の改善率が低いのは既に相当「防止可能な死」は防止しているということかもしれない。

しかし米国の場合の最大の問題は4千万人に及ぶ無保険者の問題が大きいだろう。つまり金持ちは医療費をジャンジャン使っているが低所得者層は医療保険に入っていないので「治療可能なガン」のような病気でも死んでしまうということなのだ・・・と私は理解している。

医療費の各国比較は極めて難しい問題で「沢山医療費を使っているから健康で長寿だ」と断言はできない。例えばアメリカの医療費の中には高額が歯科医療(例えば歯列矯正)や近眼の手術なども含まれているのではないだろうか?もしそうだとすると「生活の質を高めるための医療費」と「死に至る病を避ける医療費」を同列に比較して良いか?という問題がでるだろう。
とはいうもののガンやメタボリック症候群を避ける生活を送るにはある程度お金が必要なことも確かだろう。

世界ガン研究基金が発表しているガン予防法はメタボリック予防法と極めて類似している。それを見ると「少し太っている方がガンになりにくい」などというのは俗説という気がする。
まず同基金は「BMIを21-23に保て」という。今の私はこの基準から見ると少し太りすぎ。身長1.7mの人は体重を60.69kgから66.47kg
する必要がある。つまり私は後2,3kg減量が必要。次に「一日最低でも30分以上活発に歩きなさい」という。これはOK。次に「赤身の肉は週300g以下に抑え、ベーコン、ハムなど食肉加工品は食べない」「食塩は一日5g以下」「炭水化物の摂取を減らす」「お酒は日に2杯まで」「100g中の125kcal以上のカロリーを持つ高カロリー食品は避ける」と続く。

脂っこいジャンクフードを食べているとたちまちアウトだし、私のように酒好きも困ってしまう。美味いものを食べなくて何の長生きか?という気がしないでもない。

ところでガンの予防とメタボ予防策が共通することについて根拠が明確になっている訳ではないが、次のようなことが推測されている。メタボリックとは新陳代謝のこと。メタボリック症候群では脂肪と糖分の代謝異常が起きる。ガンは細胞の突然変異による異常増殖だが、この異常増殖と代謝異常に何らかの関係がありそうだという話だ。

話が長くなったが「防止可能な死因」による死亡を減らすには、社会全体で健康・予防医療に対する投資が必要だ。また個人レベルでも質の高い食事を取り、ストレスを管理して、持続的に運動を行うにはある程度安定した経済基盤が必要ということになる。

良い食材で適量の食事を取って満足するには、食事や酒以上に大きな楽しみを持つということであり、健康とは結局ライフスタイルの問題になるのだろう。もっとも健康を保つには一般的には特別お金持ちである必要はない。野菜や魚を中心としてカロリーを抑えた食事を丁寧に食べ、車の利用を控えてよく歩くということでかなりガン基金のガイドラインに近づく。

とはいうものの今の医療技術の進化は著しく、痛んだ組織を再生する再生医療などが実用化してくるとお金持ちが特別な医療サービスを受けより長寿になる時代がくる可能性がある。健康はお金で買えるという側面があることは事実なのだ。

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