金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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オバマ躍進にダイナミズムを見た

2008年01月09日 | 国際・政治

今日(米国では1月8日)ニューハンプシャーの大統領予備選挙の結果がでる。民主党ではオバマ氏が勝つだろう。

米国大統領予備選挙では「変革」を掲げる民主党のオバマ候補が圧倒的優勢を伝えられていたヒラリー・クリントン候補に肉薄している。アイオワ州での勝利で弾みがついてきた。全米でもクリントンに肉薄している。ニューハンプシャー州の予備選挙の予想はオバマ候補がクリントン候補を10パーセント上回っている。気の早い人の中にはオバマが次の大統領になると予測する人も出てきた。


これに対して私はまだオバマ候補の勝利を予想するの少し早いのではないかと考えている。長い選挙戦の間には色々なことが起こりそうだからだ。不確定要素の大きなものは米国の今後の景気の動向とテロだ。例えば選挙戦の間にアメリカ社会を震撼するようなテロが発生したならば、選挙民は経験豊富なクリントンに傾く可能性が高いと推測するからだ。

何か興奮させるものがアメリカにはある。あなたたちは今アメリカの歴史に新しい一章を書こうとしている」とオバマ候補はあふれる聴衆に告げる。オバマについては「若さゆえ大統領には時期尚早だ」という声もあるが、彼はキング牧師の言葉 を引用して今しかないという強烈な切迫感」に駆り立てられ立候補したと説明している。

ここで私は少し前に読んだ「生物と無生物のあいだ」(福岡伸一著 講談社現代新書)の中の言葉を思い出した。

秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない」 
私なりの説明を加えると人間を含む生命体は細胞の中のミトコンドリアという小器官で酸素を使い、糖分を分解してエネルギーを得ている。ここで生命体にとって有害な酸化が起きる。この結果たんぱく質が変質し崩壊が進む。そしてその乱雑さ(エントロピー)が増大するとやがて死に至る。

これを防ぐために福岡氏は「エントロピー増大(つまり死)の法則に抗う唯一の方法は、システムの耐久性と構造を強化することではなく、むしろその仕組み自体を流れの中に置くことなのである。つまり流れこそが、生物の内部に必然的に発生するエントロピーを排出する機能を担っていることになるのだ」と述べる。

引用がながくなったが、我々が住む社会(あるいは文明・国家)を生物に置き換えて考えるなら「文明がやがて崩壊・没落するという法則に抗う唯一の法則は、現在の体制を強化することではなく、むしろ社会制度自体を変化の中におくことなのである」ということになる。

私の仮説が正しいとすれば、変革に抵抗する社会はエントロピーの増大を早め、蓄積する弊害をスピーディに排出する社会だけが生存を続けることになる。

福岡氏は前掲書の中で「生命とは動的平衡(Dynamicequilibrium)にある流れである」と再定義した。
アナロジーを使えば持続性のある社会とは外的環境の変化にダイナミックに変革し、新しい均衡を作り出していくことができる社会だということになる。
オバマ氏が大統領選挙で勝利するかどうか今の段階で私には予想がつかないが、彼が善戦しているということはアメリカが動的平衡能力を備えた社会であることの証明だと私は考えている。

アメリカにこのダイナミズムがある限り、アメリカは数々の問題を乗り越えていくと私は信じている。ひるがえって日本はどうだろうか?今の日本には酸化した古い制度の残骸が累々とつみあがり、閉塞状態を招いているような気がしてならない。

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