ファイナンシャルタイムズ(FT)は世界で最も権威のある金融専門紙でカバーする範囲は米国の連銀議長の演説の解釈から中国の地方政府に対する暴動まで広範囲だ。そんな中で「新生銀行の外人スタッフが次々と辞めている」という記事があった。最近日本で余り面白い記事がないので埋め草的に掲載した話かもしれないし、何かが起こる予兆を示唆しているのかもしれない。
まず記事のポイントを見てみよう。
- 新生銀行は成功するビジネスモデルを確立すべく苦闘しているが、モラルが低下する中で過去数ヶ月間に幹部職員が続いて退職している。新生銀行の担当者が言うには特にリテイル部門の退職者が多い。
- 最近の退職者が多い背景には、同行が産業界に長期金融を行っていた長期銀行jからインターネット時代の銀行に転換することの難しさがあると事情に詳しい人は述べている。
- 新生銀行のビジネスモデルは「リテイル銀行業務」「機関投資家向け業務」「消費者金融」の3本柱だが、どれも今までのところ銀行に大きな貢献をしていない。その結果自己勘定投資を含む投資銀行業務への依存が高まっている。
証券会社が提供している四半期決算の簡単な分析によると、新生銀行は第一四半期に自己勘定投資等で昨年同期の2倍の業務純益を稼いでいる。しかし株式市場は自己勘定投資による稼ぎを評価せず同社の株価はピーク時の半分程度になっている。
- 最近同行を退職したある幹部は「ビジネスモデルが機能するかどうかが問題だ」と言い又別のものは「新生銀行は方向を失っている」と言う。
- 日本人の職員も辞めているが、目立つの外人幹部が辞めていることだ。
私は外国人というのは「沈みかけた船の鼠」ではないかと思っている。船が沈む前に嗅覚の鋭い鼠は船から逃げると言うがこのことが新生銀行で起きているのかもしれない。FTの記事はこの後最近退職した外国人幹部の個人名を数名列挙しているが省略する。かなり内部事情に詳しい人間がFTに話をしたのだろう。
クレディスイスのアナリストは「新生銀行の困難さは、商業貸付を伸ばすことで消費者金融部門の不確実さをカバーできないことにある」と言う。
新生銀行の株式部門のヘッドや不動産融資のヘッドの外人達は新生銀行を辞めてドイチェ証券に行ったとFTは書いている。鶏口となるも牛後となるなかれという諺は英語ではIt's better to be a big fish in a little pond than a little fish in a bing pondと言うそうだ。しかし小さな池でも水がある内は良いが、将来の水の量に不安を感じると魚は大きな池を求めるのかもしれない。はしっこい外国人の動きは要注意なのだ。