金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「サブ・リスク」は思ったより大きい

2007年08月31日 | 金融

エコノミスト誌はサブプライム・ショックが実体経済に与える悪影響は大方の予想よりも大きいという主旨の記事を書いている。私はこの記事を読む前に某小雑誌に同様の主旨の寄稿を行った。分析の深さにおいて比べるすべもないものの、方向感は余りずれていなかったなぁと安堵している次第である。エコノミスト誌の主旨はこうだ。

  • 常識的にはサブプライム混乱と最悪の金融混乱の震源地である米国に対するインパクトが一番大きい。一見したところ第2四半期の生産の伸びは強い等実物経済は強い様に見えるが、詳しく見ると様相は明るくない。7月には自動車販売高が9年ぶりの低レベルに落ち込むなど消費の伸びは急速に低下している。
  • 住宅市場は多くの人が認識しているよりも悪い。7月に新築着工件数は低下しているにも関わらず、既存住宅の在庫は16年ぶりの高水準を示している。また住宅価格は下落を続けている。
  • 楽観主義者は今のところ消費者の抵抗力に慰めを見出しているが、それは恐らく誤りだろう。消費支出は住宅所有者が貧しくなったと感じるので~特にもし株式市場の下落が続くなら~抑制されるだろう。
  • 米国以外の国に与える影響もおそらく厳しいものだろう。サブプライム・ショックは金融感染という経路だ。損失が全世界的に広がっているので、消化はされやすいが同時に、金融に対する臆病さやリスク回避を拡散する。
  • 以前の金融の動揺時には新興市場の打撃が一番大きかったが、今回は富裕国特に欧州大陸への影響が大きい。
  • 直接的な金融面の感染は抑制されても、心理的な感染特に住宅バブルに対する再評価が生まれるだろう。返済懸念の高い借入人に対する融資の面では米国が突出しているが、住宅バブルは世界中で発生している。特に英国とスペインが要注意だ。

投資の世界で米国のサブプライム・ショックの影響をダイレクトに受けたのは、例えばインドだ。インドは米国の金融機関のアウトソースを受けているが、サブプライムイ・ショックから金融業界等の業務が減る。インド第二のIT会社(アウトソースの受け手)インフォシスは、サブ・ショックで売り上げが1百万ドル減少すると報じた。(もっとも市場はこの数字が予想よりも少なかったことを好感し、同社の株は発表後上昇した)

これは極一例だが、サブプライム・ショックは予想外に根が深い可能性が高いと私も見ている。ヘッジファンドが決算を発表する10月始め頃にまた思わぬショックが思わぬところから吹き出る可能性もある。

ここは少し悲観的な見方をする方がショックが少ないかもしれない。

コメント
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