金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

エコノミスト誌、1月利上げを予想

2006年12月20日 | 株式

日銀は昨日(19日)の金融政策決定会合で現行金利(0.25%)維持を決めた。これに関する日経新聞の記事は「来月利上げにも不透明感」という見出しで始まっている。一方エコノミスト誌は19日にネット上で「日銀は1月に金利を引き上げると予測する」という記事を発表した。その内容は後で見るとして、エコノミスト誌の記事は日銀の政策に強い影響力を持っているから結果としてエコノミスト誌の予想どおりになる可能性は高いだろう。

その記事の中でエコノミスト誌は日本経済の先行きに楽観的見通しを持っているので、同紙を信じるならばしばらく日本株には強気で良いかもしれない。ではどれ位の間強気で良いのか?と思っていると今日(20日)の日経新聞朝刊で立花証券相談役の石井久氏が次のように言っていた。

「いまの上昇相場は2,3年くらいしか持たないのではないか。日本の政府は約八百億円もの借金を抱え、人口減少という深刻な問題を抱えている。こういう国の経済が中長期で強くなるわけがない。」

「株というものはどこかで大天井を打つ。その局面で必ず持ち株を全部売ることを念頭に置いた上で投資をして欲しい」

実際私の経験でも株は買うより売る方が難しい。さてエコノミスト誌の記事のポイント。

  • エコノミスト誌は2006年のGDP成長率を前回予想2.7%から大幅に引き下げて2.1%に修正する。また07年から08年の成長率も前回予想の2%から若干引き下げて1.7%と推測する。
  • しかし成長率の引下げ見直しにもかかわらず、同紙は日本に回復は軌道に乗っているという見方を維持している。強い企業セクターのセンチメントは事業投資が成長のキードライバーになることを示唆している。企業の収益性も強い。財務省の調査によると第3四半期の製造業・非製造業の経常利益は前年同期比各々15.5%、13.5%と猛烈な勢いで伸びている。また12月の日銀短観では中企業と小企業のDIは各々17(前の四半期14)、10(同6)と改善している。
  • 賃金の伸びは鈍いがこれはコストの高い高齢者が退職するという人口動態の変化とパートタイマーが増えるという労働市場の規制緩和によるものである。また日銀が段階的に金利を引き上げることも日本の貯蓄者得に高齢者には良いことである。
  • 日本の輸出に関するアウトルックも好ましい。円は実質交換レート指数で1980年代半ば以降最も弱くなっており、輸出業者は引き続き利益をうけるだろう。

従ってエコノミスト誌によると日銀は景気の腰折れを気にすることなく、資産バブルを押さえ込むために金融引締め政策をとるべきだと述べる。

  • 福井総裁も最近の経済データが「幾分弱い」ということを認め、日銀が将来消費支出と物価に関する金利引き上げを必要とする統計を待っていると示唆している。しかしエコノミスト誌は日銀が1月に金融引締めを行なうという予想を維持する。その理由は日銀が頻繁に行なっているコメント、つまり超金融緩和政策が日本のアセット・バブルにインパクトを与えているのでフォワード・ルッキングな政策が必要という観点に立てば、最近の弱い経済データは金利引き上げの障害とはならない。エコノミスト誌は更に07年の後半に更なる金利引き上げを予想する。

以上がエコノミスト誌のポイントであるが、もし日銀が金利引き上げを実施すると私の見るところでは、長短金利の異常接近ないしは逆転が起こる可能性がある。勿論これは日銀が短期金利をどれ程引き上げるかにかかわっているが。また地域によってばらつきのある景気回復の差を一層鮮明にする可能性があると見ている。

その理由は一般の物価や賃金と株や土地の値段の動きは別のものであるということだ。つまり中国という巨大で安価な労働力を持つ国に隣接する日本では物価や賃金が急速に上昇することは起こりえない。一方過剰な流動性は一部の不動産や株に向かうので一定範囲のアセット・バブルが起こる可能性はある。しかし今は80年代のバブル期とは異なる。投資家はもっと利回りベースで投資を行なうので際限のないバブルは考えにくい。むしろ日銀の引締め政策は本当に低金利を必要とする地方企業等にボディブローのように効いてくるのではないだろうか?

このような問題を金利政策だけで解決するのは難しいかもしれない。日本の賃金や物価が上昇しないという前提のもとでアセットバブルを防止するには税によるタガなども考えるべきだろう。

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