金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

余り実感のない世界の富裕国・日本

2006年12月08日 | うんちく・小ネタ

今月5日に世界開発経済研究所(WIDER)が世界各国の富の分布状況に関する研究を発表していた。簡単な内容は日本の新聞にも出ていたが、ちょっとWIDERのホームページからポイントを引き抜いてみた。このようなデータを自分のブログにまとめておくと、将来ものを書くときなど何かと利用できるので便利だ。なおエコノミスト誌にこのレポートに関するコメントがあったのでこちら参考にした。

  • ここでいう富とは「資産から負債」を引いたものである。資産は不動産、金融資産、その他有形資産である。以下富Wealthをここでは分かり易く純資産と呼ぼう。調査時点は2000年である。
  • 純資産保有について上位2%のものが世界の家計純資産の半分以上を保有する。また1%のものが4割の純資産を保有し、10%のものが85%の純資産を保有する。2,200ドル(約25万円)の純資産があれば、世界ランクの真ん中であり、6.1万ドル(約7百万円)あれば世界のトップ10%に入り、51.4万ドル(約59百万円)あれば世界のトップ1%に入る。もっとも世界のトップ1%の数は37百万人もいるが。
  • 世界の家計の純資産の合計は125兆ドル(1京4,375兆円)である。(・・・いゃー生まれて初めて京という単位を文章で使いました。)これは世界のGDPの約3倍である。

一人当たりGDPと純資産の関係は、GDPが高くなる程純資産が増える傾向にある。日本の一人当たり純資産は18万ドルで一人当たりGDP3万75百ドルの4.8倍になっている。因みに日本の純資産18万ドルという数字は米国の14.4万ドルを抜いて世界1位である。もっとも購買力平価ベースで見ると日本の一人当たり純資産は12.5万ドルとかなり減る。

  • 一人当たり純資産は収入の高い先進国の中でも差がある。北欧諸国では公的年金などの社会福祉が充実しているので、個人資産の蓄積が抑制されているのではないか?とレポートは推測している。
  • 最近格差の尺度として有名になっているジニ指数であるが、大部分の国において所得の分布については35%から45%のレンジである。しかし純資産についてはもっと格差が大きく通常65%から75%になっている。

アメリカと日本という2つの資産富裕国で際立った違いがある。日本の純資産のジニ指数は55%で米国のそれは約80%である。世界レベルで見た場合のジニ指数は89%である。この不平等さは10人のグループの内の1人が99%の富を所有し、残る9人で1%の富を分け合っている状態に等しい。

  • 世界の中で最も純資産の多いトップ1%の内、米国人が37%、日本人が27%、英国人が6%、フランス人が5%、イタリア・ドイツ人が4%、カナダ、スペイン、スイス、台湾人が各1%を占め残る10%がそれ以外の国の人である。

以上がレポートの概要だ。しかし多少でも欧米を旅行したことのある人は日本が一人当たり純資産で世界一だということに違和感を覚えるのではないか?これは住宅地の評価額が他の国より極端に高いことによる計算上の話に過ぎない様な気がする。それにしても「お金持ちですね」と言われても、全然豊かさが実感できないということはどういうことなのだろうか・・・・・・

コメント
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