カミサン伝説20真?ハッピー編「夏男の検査結果前」
「凄くおいしかったです。
これが残りものなんて。
どうもごちそうさまでした」
冬子が満足げな顔をして、
礼をすると、
「うちでしか食えないからよ。
将来、いや、やめとこう。
とにかく、気が向いたら、
いつでもケンタに作らせるから。
な! ケンタ」
「もちろん、
こんなのでよければ、いつでも」
寿司屋とケンタは顔を見合わせた後、そう言ったが、
寿司屋の妻の秋子が、
「でも、魚ばかりも飽きるわよ」
と言って、
舌をだした。
「そんな。贅沢な。
でも、
また、お邪魔させてもらいます」
冬子は秋子の言葉を本気にして、
そう言うと、
腕時計を見た。
「冬子さん、
おにいさんの検査の結果が気になって、
寝られなかったんでしょう。
でも、
結果がわかるのは午後ですよ。
期待しないで待ってた方がいいですよ」
ケンタも、
実は、
いつもと違って、
昨日はほとんど寝られなかったので、
冬子の気持ちを察してそう言った。
「そうですよねえ。
ダメだったら、
がっかりしますもんね。
河岸に連れていってもらって、
おいしいものいただいたら、
少しは落ちつきました。
結果が出るまで、
まだ、
時間があるので、
ここで今日は失礼させていただきます」
冬子が帰ると、
「ちょいとだけ仕込んだら、
一寝入りするか」
と
寿司屋が言うと、
ケンタも頷いた。
「いつもどおりでいいんだよ。
吉報が来たら、
すぐ起こすからね」
秋子は、
まるで夏男の検査の結果、
型が合うような言い方をしたのだった。
(続く)