佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

リーダーの暗示学98――リーダーの叱り方

2005-03-17 07:14:00 | リーダーの条件
「叱る難しさ」
 これまで当ブログでは、ほめる方法についてはいろいろ論じてきました。また、叱ることについては、できれば避けたほうが無難であると述べてきました。

 へたに叱ると、若い人は嫌になってすぐやめてしまいますからね。それでは上司も困るでしょう。あるいは、妙に卑屈になって、閉じこもってしまう人がいるかもしれませんね。それで、昨今の上司たちは部下を叱ることができなくなっているようです。

 私は自分の部下をもった経験はあまりないのですが、かつて研修教育を請け負ったとき、顧客の若手スタッフをよく叱りました。一生懸命になると、つい怒鳴ってしまうのです。若気の至りですかね。

 しかし、叱ったあとは、気分が悪いものです。はたして、ちゃんと自分の言ったことが通じたかどうか、それが心配でしかたなかった。そのあたりが、叱る場合の問題ですね。

 この研修会は、プレゼンテーションの能力アップが目的でした。月1回くらいのペースで行いましたが、毎回各グループに発表させました。それで、発表が終わると講評をして、改善点を示し、次回にはそこを直すように宿題を出して、また次回発表させるわけです。

 ところが、ある人は、私の言ったことをやってこなかった。それで私は猛烈に怒ったのです。
 「どうして、言われたようにやってこないのですか。前回、これこれのことを調べるように言ったじゃないですか」

 相手は、なんだかんだと、答えておりましたがね。それから、なんで一ヶ月も前に言ったことを、こと細かくしぶとく覚えているのか、不思議そうにしておりました。

 分析作業に関しては、私の記憶力は抜群なのです。別に頭がいいわけではありませんよ。長年の経験から、情報整理のコツを知っているだけです。これは、別の機会にまた話しましょう。


「叱るときの条件」
 さて、叱ってはみたものの、その人がへんにめげたり、あるいは反発しないかと、私は気が気ではありませんでした。幸いにもこの人は、そういうことはありませんでしたので、ほっとしました。

 おもしろいことに、あとでその人は、「怒られてうれしかった」とさえ言っていました。私がその人のことを思って怒っているのがわかったからだそうです。それから、怒る理由が納得できたからだとも言っていました。

 上司が部下を怒るとき、はたして、そのときの私のような気持ちで怒っているでしょうか。多くの場合、自分の不満や不快感を発散させるために怒っているだけなのではないでしょうか。また、頭ごなしで理由も言わず怒るケースが多いとも思います。

 きちんと理由を説明できないのは、説得の能力がないか、事態を正しく把握・消化できていないからでしょう。それで、怒ってごまかしてしまう。上司の権限にすがっているのです。

 今の若い人は成長志向が強いですから、自分の成長を願って怒ってくれているのだとわかれば、叱っても通じると思います。通じないのは、リーダーとしての能力に問題があると考えるべきでしょう。


「上司は上司の立場を守れ」
 かく言う私も、失敗をしたことがあります。ある人が「戦略案をつくっても、ラインがそれを採用してくれない」と、愚痴をこぼしたのです。それを聞いた私は、「あなたの戦略策定能力に、どこか弱点があるのではないか」と言ったのです。

 そうしたら、相手は猛反発しました。この反応は、実は私の意見が図星だったからなのです。自分の身を守りたいと思うと、そうやって猛反発するものなのですよ。

 図星だからといって、相手がそのような反発を示したのは私の失敗です。欠点の指摘は慎重にしなければならないといつも言っている私が、失敗してしまったのです。

 心に余裕のある人、能力に自信をもっている人は、問題点を指摘されると、それを改善しようとします。心がポジティブな方に向かうのです。しかし、自分に自信がない人は、反発します。

 私が失敗したのは、相手の心の余裕を見損なったからではありません。もちろん、そういう失敗をすることもあります。しかし、このときはそのケースではなかった。相手が生意気で小憎らしいと思ったから、つい嫌味を言いたくなったのです。

 リーダーはそういう気持ちをもったら失格です。相手と同列にいると、つい競争心が働いて、そういう態度をとってしまう。私はリーダーとしての立場を守れなかったわけです。

 リーダーはメンバーと同列にいてはなりません。ただし同列にいないというのは、上にふんぞりかえっていればいいという意味ではありませんよ。メンバーの成長を心から願える気持ちがあるかどうかということです。

 そのようなリーダーでなければ、真のリーダーたる資格はないということです。そういうリーダーであれば、たまに本気で怒ったとしても、メンバーはしっかりついてきてくれます。


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