佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

リーダーの暗示学45――変革リーダーの戦略と暗示(2)

2005-01-21 07:32:12 | 伝動戦略
「伝動戦略と暗示効果」
 私の提唱する『伝動戦略』は、変革のためのリーダーシップ理論です。なお、この項は昨日の続きですので、まだ読んでいない方は、まず昨日の方から読んでください。昨日は伝動戦略の説明をいたしましたので、今日はこれと暗示をからめるとどうなるか、説明いたしましょう。

 暗示効果が最も必要な局面は、だいたいにおいて、戦略遂行時の初期にあります。

 小泉さんの例で言えば、予備選挙での“人気沸騰”です。これで、印象がぐっとよくなった。ことのきは、小泉さんが街頭に立つと、ものすごい人だかりになりました。そこで、例のパフォーマンスで、「自民党をぶっ壊す」と言ったものですから、フィーバー状態になったわけです。

 こういう場面が、テレビに映し出されたとき、橋本派の人たちは心穏やかではなかったでしょうね。相当プレッシャーを感じたはずです。まあ、そういう暗示効果を、マスコミも協力してつくりだしたということなのでしょう。

 変革リーダーが伝動戦略を採用するときは、少なくとも次の四点には気をつけなければなりません。

 まず第一は、抵抗勢力からできるだけ離れたところで、活動を開始することです。小泉さんは、国会議員から遠い一般党員のところで、まず戦った。社内ベンチャー事業であれば、できれば、外に出てやった方がいい。相手の影響力の強いところで活動すると、すぐ目に付いて、妨害されたり、圧殺されることすらあるからです。「辺境の地」で力を貯めるのです。
 別の言い方をすれば、対立の存在しないところで、実力を培い、時機到来を待つわけです。

 第二に、先例、成功例をできるだけ見にいくことです。社外にそれがあれば、積極的に視察にいくことです。これは、「人ができれば、自分もできるはずだ」という空想を、メンバーに無意識にもたらします。つまり暗示効果ですね。昔の日本人は、よくアメリカに視察に行ったものです。これも、そういう効果が得られました。
 異分野の類似例、あるいはアナロジーからも有益なヒントが得られます。秋山真之に言ったマハン大佐の言葉を思い出してください。
「海戦ばかりか、陸戦もよい研究材料になる。戦争であれば、今の時代の戦争ばかりでなく、昔の戦争事例でも参考になる」
 新しいサービスは、異分野のアイデアをリメークして成功するケースが結構あります。ほかの分野のことだなどと、狭い了見でいると、せっかくのチャンスを見逃してしまうかもしれませんよ。例えば、サッカー・ビジネスから野球ビジネスを考える、というようなことです。これは、頭の柔軟性、応用力の問題でしょう。

 第三に、できるだけ早い段階で、小さな成功でよいから、完璧な成功を得ることです。すると、まわりが、「今は小規模だが、このまま続けると、すごいことになりそうだ」という空想をするようになります。これも暗示効果です。そうなると、うまい具合に歯車が回りだします。
 なお、このときの成功は完璧なものでなければいけません。中途半端なものでは、そういう空想がわきません。
 結果は小規模でも構いません。いや、むしろ小規模の方がいい。だいたいこういうときは、お金が不足しています。だから、規模が小さくならざるをえないのですが、そのために、抵抗勢力もあまり反発しないというメリットがあります。また、小規模の方が、途中の修正が楽です。大事なのは、百パーセントの成功です。初期段階で重要なのは、規模ではなく質なのです。

 第四は、熱きマグマのような魂をもつ人間集団を形成することです。特に初期段階においては、リーダーの信念や考え方を共有する人たちを集めなければなりません。
 もちろん、初めは数人もいないでしょう。でも、数は少なくても、熱く燃える同士が欲しい。リーダーは、それらの人と寝食をともにするような感じで、彼らを教育し、理念を共有するようにしなければいけません。
 キリスト教でいえば、彼らは「12人の使徒」というような存在でしょうか。リーダー一人では、サービスを普及させるのには限界があります。リーダーの手足となり、普及を促進してくれる人が、だんだん必要になってくるのです。
 やがて、“使徒たち”が、さらに新しいタイプの顧客を引っ張ってくるようになります。そうなるためにも、彼らとリーダーとの間には、強い絆、一体感が必要になります。

 伝動戦略の詳細は、私のホームページをご覧ください。

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