「さとかず」の読書のススメ

シンガポールから送る独断的な読書録
(基本ルールとして、単行本は出版社名、文庫本は文庫シリーズ名を記載)

本日読了、「肉体の悪魔 レイモン・ラディゲ」

2006-01-31 08:32:36 | 思想・文学
お恥ずかしいながら、読んでおくべきだった本を時々こっそりと読んでいます。そのうちの一冊を本日読了。

「肉体の悪魔 レイモン・ラディゲ アーティストハウス」

せめて大学生の時にでも読んでおけばよかったかな、と思えます。解説にもあるように各所にうならせる箴言がちりばめられていて、うなずきながらも読んでいます。これは10代後半~20代前半に読み、再度歳を経て読む本ということなのかもしれません。

ジャン・コクトーが阿片に溺れる原因となったラディゲの死。表紙はこれも30代で死んだジェラール・フィリップ(表紙に惹かれて購入したこの本)。

若くして死ぬことはその若さの残像が他の人の記憶に生き続けるということ。それが長らく他の人の苦痛になろうとも。

本日読了、「物語で読む先物取引 河村幹夫」

2006-01-30 18:30:11 | 政治・経済
あまり読む部類の本ではないのですが、気の迷いか(?)で購入していた為、我が家の本棚で眠っておりましたものを本日読了。

「物語で読む 先物取引 河村幹夫 日本経済新聞社」

「先物取引」という言葉に何かしら胡散臭いものを感じておりましたが、それは現在の経済社会においては「あるもの」として存在し続けるものなのでしょうね、という感想。
個人的感想としては、読んで得るものは何もなかったかな?漠然とふ~んと思えただけで。

為替を扱う外資系銀行ディーラーを知人に持っていましたが・・・・・・。その人のことを思い出しました。業界では有名人だったそうですが。

本日読了、「サイゴンから来た妻と娘 近藤紘一」

2006-01-28 19:30:51 | その他
東南アジアで日本語の本を扱うお店には必ずある(?)と思われる近藤紘一の文庫本。何となく手には取っていたのですが、購入した初めての本を本日読了。

「サイゴンから来た妻と娘 近藤紘一 文春文庫」

サイゴンが陥落したときにその場にいたことで、有名になった新聞記者くらいの認識しかありませんでしたが、本を読むとちょっとごつごつと硬いながらも洒脱で面白いことを実感できます。生きていたら今頃どのような本を書いていたのでしょう。数年前に行ったホーチミンシティ(旧サイゴン)を思い浮かべながら読了。90年代にドイモイ政策のベトナムがバンコクで多く語られていました。絶対権力は絶対に腐敗する必定は避けられないのでしょうね、やはり。

他の本も購入することを決めました。

この本が大宅壮一ノンフィクション賞を取った授賞式があった時、作者は産経新聞の支局長としてバンコクへ駐在(’78年から’83年)。90年代にバンコクにいた時に、作者がいたであろうルンピに公園近くのオフィスに出入りしておりました。産経新聞の記者が近藤さんがここで働いていたんだよな~とつぶやいていたのが記憶に残っています。

余談ですが、マスコミの東南アジアの拠点はバンコクです。

やはり入手済み「マクナマラ回顧録」を読まなければ・・・・・・。

ただ今、2月1日から休暇で行くサムイ島に持っていく本を吟味中です。

本日読了、「朝鮮戦争 萩原遼」

2006-01-23 11:00:11 | 歴史・戦争
深夜に読了。

「朝鮮戦争 金日成とマッカーサーの陰謀 萩原遼 文春文庫」

1950年6月25日に戦火がひらかれたこの戦争準備を北側がどう周到にし、またそれを利用したアメリカ合衆国(このところは簡単にしか触れられていませんが、日本が真珠湾を仕掛けた時も幾分この要素があったのでしょう)。

なかなか読み応えのある本でしたが、朝鮮半島の地図を眺めながら読む必要があるようです。再読に耐えうる本としていつかまた読んでみたいと思います(今回は地図を準備していなかったので、次回は地図を片手に)。

後書きで書かれてあるように、何故か韓国のジャーナリストや学者がアメリカ合衆国にある膨大な資料を読み、歴史の検証をするまえに、日本人がその作業をし、この本を出したということが皮肉です。
やはり、韓国という国では歴史の検証という作業が遅れているのでしょうか?これは国民性によるものか・・・・・・。

萩原遼、また次の本を読んでみたいと考えております。
*個人的には「北朝鮮に消えた友と私の物語」の方が本が手放せないできです。「朝鮮戦争」は研究書の類と思えます。

「Memories of a Geisha」

2006-01-22 00:45:32 | その他
土曜日、映画Memories of a Geishaを観ました。

入手本未読
「さゆり アーサー・ゴールデン 上・下 文藝春秋社」

本棚にありました原作、これを近々読んでみたいと思っております。

映画自体は、これを観て勘違いする外国人がまたいるのだろうか、と思う程度のでき。その中で、桃井かおりがよかったですね、やはり。

加えて、映像はやはり本を読む想像の域を超えることはできないということでしょうか。もちろんのこと、映像を超える想像を脳みその中で作り出すには雑多な知識が必要なのでしょうが。

ところで映画に出てきた陸軍ジェネラル(将軍)の軍服がたて襟だったので、さゆりが都をどり(?)で踊ったのは昭和13年以前でしょうね。

昨日購入、「朝鮮戦争 萩原遼」

2006-01-18 08:57:50 | 歴史・戦争
昨日は仕事の合間に日本の本を置いてある古本屋に行き、一冊購入。

購入本
「朝鮮戦争 金日成とマッカーサーの陰謀 萩原遼 文春文庫」

現在、朝鮮半島を巡る問題の発生は日本の敗戦後の半島におけるソ連とアメリカ合衆国の駆け引き。買いたいと思っていた本の1冊です。

価格:4シンガポールドル(約260円)

本日読了、「雨は降るがままにせよ ポール・ボウルズ」

2006-01-17 08:46:17 | 思想・文学
ビートニクにも大きな影響を与えたという作家、ポール・ボウルズ。死去したのは数年前(1999年)。
この2~3日は比較的天気がよいのですが、ここしばらく雨が続いていたシンガポール、思わず本棚から取り出し読み始めました。

「雨は降るがままにせよ ポール・ボウルズ 思潮社」
(原題:Let it come down)

サルトルの「嘔吐」を何故か連想。

登場人物のそれぞれから周りになじめない疎外感が伝わってきそうです。海外に住む個々の生き方、そこに加わるアメリカ人ダイアーが起こすさざ波と・・・・・・。

一応おさえておく1冊であることは間違いないでしょう。
他の小説が読みたいのですが、日本語の翻訳はシンガポールでは手に入らないでしょうから、日本に帰国時にでも購入しようと考えております。

ポール・ボウルズに関して、面白いWEBサイトを見つけました。ご参考までに。

本日読了、「フーコン戦記 古山高麗雄」

2006-01-10 18:26:51 | 歴史・戦争
ここ数日雨が続く雨季のシンガポール。戦争中の熱帯の兵が雨季の中で辿った敗残路はこの世の地獄。

「フーコン戦記 古山高麗雄 文芸春秋社」

ビルマ(ミャンマー)北部のフーコン谷地で行われた軍の展開を菊兵団(第18師団)55連隊、56連隊を中心に描く本。小説として淡々と続く物語は、ひとりの老人の遠い記憶を辿ることでフーコンで行われた戦闘を浮かび上がらせてくれます。

熱帯に住み、自然公園などを歩く機会があると想像しますが、恐怖を感じながら道なき道を歩き、そして倒れていく人たち、それがこの熱くうっそうとしたジャングルの中で繰り広げられたというのは、陰惨な風景だったのでしょう。

主人公は傷痍軍人として、戦後を生きるのですが、そういえば親戚に戦争で片足になった人がいたことを思い出しました。

本日読了、「マレー捕虜記 本田忠尚」

2006-01-08 13:27:40 | 歴史・戦争
シベリアの抑留、強制労働話はよく知られていますが、南方にてもこの暑さの中、捕虜がどう扱われたかを伝えるべく、残された本。

「マレー捕虜記 本田忠尚 図書出版社」

会田雄次著「アーロン収容所 中公文庫」(読了済)も合わせて読むことを勧めます。
戦後の抑留というものは、ある面復讐的要素もありえるのでしょう。また、戦後のイギリス本国の国力の低下も捕虜の扱いに深く関係することであったでしょう。アメリカ合衆国がある面寛容であったのは、国力の違いであったのか?国民性なのか?他の本に、日本に進駐したオーストラリア人士官のアメリカ兵の一般日本人に対する態度は今まで殺し合いをしていたのが信じられない。我々はこうはできない。といった回想がありますが、これは何に起因したのか?

東南アジアでは、日本による占領によって、現地民の意識の確実な変化があっ
たのは間違いないところです。帰って来たイギリス人達にとって、現地民は以前のままではなかったのはせめてもの日本が成しえたこと。

どのような境遇に落ちても、矜持を保つこと。これは現在の我々にも共有できる大切なもの。

*:
JSP=Japanese Surrendered Personnel(降伏日本人)
マウントバッテン大将、1979年IRAのテロにて爆死
沼正三の「家畜人ヤプー」(読了済)を想起させる記載有




本日読了、「ぼくたちの終わらない夏 クリストファー・ライス」

2006-01-07 21:29:38 | 思想・文学
題が気になり買った本を本日読了。

「ぼくたちの終わらない夏 クリストファー・ライス BOOKPLUS(角川書店)」

4人の幼馴染とその親の人間模様が、ゲイの主人公を中心に、ミステリーを絡ませながら進む。
読み始めると最後まで読ませる力はありながらも、どこか釈然としない散漫な展開と安直さ。

やはりあとがきに書かれて作家の嗜好性が強く出た作品なのでしょう。

なお、途中に登場人物の名前の間違いと思われる点あり。

思い出すのはレス・ザン・ゼロ。しかし、それほどの小説ではないようです。

本日読了、「東條秘書官機密日誌 赤松貞雄」

2006-01-03 23:58:05 | 歴史・戦争
靖国神社参拝問題をA級戦犯が合祀されているから、という理由で中共などから非難されています。

本日は、東京裁判の主役たるA級戦犯東條英機の秘書官であった赤松貞雄の残した本を読了。

「東條秘書官機密日誌 赤松貞雄 文藝春秋」

陸士の34期の赤松貞雄にとっての東條英機を見る視点はひいき目にありますが、そういう考えもできるなと思わせる面白い本です。元々、公開される筈のなかった文章を遺族の許しを得て本とされたもの。

私にとって東條英機のエピソードを書いた一部よりも赤松大佐の陸相秘書官になるまでの二部の方が面白く感じたのは、当時の幼年学校、陸士、隊勤務などのことが書かれているからでしょう。

本日読了、「北朝鮮の消えた友と私の物語 萩原遼」

2006-01-01 14:31:13 | 歴史・戦争
昨年末に買った本を一気に読み終えました。

「北朝鮮に消えた友と私の物語 萩原遼 文春文庫」(シンガポールドル15.10リヤンコート・紀伊國屋にて購入)

寝るのも忘れ、読み続けました。久しぶりにノンフィクションの興味深い本に出会いました。
作家自身も赤旗の記者で北朝鮮に滞在した人間というのも肌であの国を知るひとり。昨日観た映画「血と骨」で、私が一番気になったのは帰国運動でした。本書を参考にすると在日朝鮮人と日本共産党の関係とその離反などが読み取れます(もちろんのこと書かれてあることすべてが真実かは検証の余地有)。総連の主導権争いがその大きな一要因であったとは。

日本にとっては彼らは棄民であったのでしょうか?これからの私たちにとって何ができるのか?

気になる点はありますが、これだけの力作には頭が下がります。

萩原遼の他の作品も購入してみようと考えております。

*赤旗日曜版を読んでいた私としてはこの人達が当時の赤旗を日本共産党の指導の下、つくっていたのだな、と。