「さとかず」の読書のススメ

シンガポールから送る独断的な読書録
(基本ルールとして、単行本は出版社名、文庫本は文庫シリーズ名を記載)

折れた竜骨 上・下 米澤穂信 創元推理文庫

2013-09-24 03:19:15 | 思想・文学
独特の世界を持つ物語が暗い基調の中で語られます。

上=「『警戒するのは悪くない。次は観察、そして論理だ』」p29
下=「不可解にも扉が閉ざされている場合、それは『何らかの方法で』閉じられたのだと解すべし、と」p188

魔術が物語の中にあるも、大切なのは論理であるという事。

とっつきにくい小説家と思いきや、上下2冊はさらっと読める内容。
家で週末に読んだものの、旅行先に持っていくにちょうどよい小説でした。

文庫本の装丁の絵が何ともいい感じです。

サトリ 上・下 ドン・ウィンズロウ ハヤカワ文庫 (上=8月25日・下=8月27日読了)

2013-08-27 12:04:54 | 思想・文学
上=「成功の可能性を考えるな―失敗の不可能性のみに思いを致せ」p207
下=「なぜなら自分は生きていて、それが自分の業(カルマ)だからだ。」p333

シブミ(著:トレヴェニアン)の続編として、主人公ニコライ・ヘルの若き日をドン・ウィンズロウが描いた物語。
シブミの謎解き的な話も所々に出てきて、これは?と思いつつ読み進めました。

上巻では、岸川将軍の言葉、失敗の不可能性という言葉を指針とし、下巻では、全てが終わり始まる時に「業」というものを生の中に感じるニッコ。

基調に流れる古き良き日本精神と言うものに、味を加えた物語です。

レオナルド・ディカプリオ主演で映画化されるという話があったようですが、どうなっているのでしょうか?
ネットで調べてみても、それらしいものは記事とイメージ写真程度程度しか見つかりませんが・・・・・・。


掏摸スリ 中村文則 河出文庫 (13年8月18日読了)

2013-08-19 17:28:44 | 思想・文学
「僕はこの顔を見ながら、関わらない方がいいと思った。」p142

暗く低調な重い空気を感じながらも、先へ先へと読み続けた1冊。

気になる一言は、顔を見ながら関わらない方がいいと思ったという主人公の言葉。
時々その様な人と会う事はありませんか?
人の第6感というものはあると思えます。
そういう場合には、迷わず逃げる、でしょうね。

続編も読んでみたいと思えたお勧めの本です。


08年10月27日読了、「明日の記憶 萩原浩」

2009-05-23 22:29:39 | 思想・文学
08年10月27日読了、

「明日の記憶 萩原浩 光文社文庫」

若年性アルツハイマーに罹った主人公が会社での居場所をなくし、そして・・・・・・という小説。
なかなか読ませます。

寝る間も忘れて明け方までかけて読み切りました。


昔の上司が主人公とまさに同じ病気になりました。
東証一部上場会社の会社で、役員くらいにはなるだろう人でしたので(事実その人よりどうみても仕事上、格下の人が役員になっています)、その姿が痛々しくて、そのことを思い出しました。

病気だけは・・・・・・。

08年10月12日読了、「わたしを離さないで カズオ・イシグロ」

2009-05-23 21:49:27 | 思想・文学
08年10月12日読了、

「わたしを離さないで カズオ・イシグロ 早川書房」

隠されているもの、その何かに引っかかりながらも読み続けるうちに、少しづつその存在の意味が明かされていく、この物語は近未来なのかどうか。

カズオ・イシグロのこの小説は現在の医療のたどり着くひとつの答えを暗示しているようでもあります。

重い内容を淡々とした抑制のきいた文章で、最後まで読ませる筆力はさすがだと思えます。
しかし、何だかやるせない切なくなる要素を持つ1冊です。

08年8月30日(上)&31日(下)読了、「楽園 宮部みゆき」

2009-05-17 22:51:06 | 思想・文学
08年8月30日(上)&31日(下)読了、

「楽園 宮部みゆき 文藝春秋」

模倣犯という長編傑作を世に出した著者の続編は意外な形での小説でした。
前の作品とは比べものにはちょっとなりませんが、読ませる力はさすが宮部みゆきです。

しかし、模倣犯は面白かったと改めて思い起こさせた続編でした。

’08年4月20日(上巻)・5月5日(下巻)読了、「海辺のカフカ 村上春樹」

2008-11-02 18:45:16 | 思想・文学
’08年4月20日(上巻)・5月5日(下巻)読了

「海辺のカフカ 村上春樹 新潮文庫」

久しぶりに読んだ村上春樹の長編。
ちょっと、物語の2重構造が「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」を思い起こす1冊でした。

20代の頃はむさぼり読む感じだった村上春樹ですが、
今は面白いのだけど、ある面うまく入っていけないのは、自分の年齢によるものなのかもしれませんし、作家の物語にどこか重いものがあるからかもしれません。

’08年3月30日読了、「灼熱 シャーンドル・マーライ」

2008-11-01 13:07:03 | 思想・文学
’08年3月30日読了。

「灼熱 シャーンドル・マーライ 集英社」

ハンガリー作家、帯を見て購入しました。
ストーリーは緩慢に、そして静かに流れます。
近年小説にはないその速度を楽しむのもよいのかもしれません。
リゾートなどでゆっくりと読む本では?

日本でも劇で演じられたりもしたようです。

’08年3月15日読了、「文壇 野坂昭如」

2008-11-01 12:16:26 | 思想・文学
’08年3月15日読了。

「文壇 野坂昭如 文藝春秋」

相変わらず読みにくい文章ですが、なかなか面白い1冊でした。

印象に残っているのは、最後のページに三島由紀夫の自殺について書かれてあるといころ。
三島由紀夫が、金子國義などと共に数日前のパーティで見かけたということ。なるほど、どおりである人が三島由紀夫と会ったことあるようなことを言っていたのはこのつながりかなど、世間の狭いことを実感。

3月7日・9日読了、「怪鳥艇 上・下 深田祐介 新潮社」

2008-03-21 22:57:19 | 思想・文学
3月7日・9日読了、

「怪鳥艇 上・下 深田祐介 新潮社」

当たり外れの大きい作家、深田祐介のこの2冊。
日本、台湾、中国、北朝鮮、韓国、インド、ロシアなどを舞台とした物語。

面白く一気に読みきりました。
実際ありえるかどうかなど言うことでなく、物語としてはなかなか練られているものではないでしょうか。

主人公の二人、亡命北朝鮮女性戦士と台湾の血を引く日本人男性との恋物語を縦糸に、中国と台湾の関係における思惑が横糸になるその物語の中に引き込まれてしまえば、ちょとちたジェットコースターのようなストーリー展開を楽しめるのでは?

インドの部隊で同僚の亡命チベット人も出てきます。
奇しくも現在チベット問題が現実のものとして中国を揺さぶっています。
さて、現実ではどのように事態が推移していくのでしょうか?

3月5日読了、「蹴りたい背中 綿矢りさ 河出書房新社」

2008-03-21 22:43:09 | 思想・文学
芥川賞を取った小説、意識して読んだ本、記憶にあるのはたぶん10数年前に読んだ「背負い水 荻野アンナ」以来かもしれません。

とりあえず、これも一山いくらの大安売りの1冊。

3月5日読了、

「蹴りたい背中 綿矢りさ 河出書房新社」

思ったよりも面白く読書。
何でもないのに、面白く思えるのは自分の高校の時を思い起こすから?

しかし、この後歳を重ねてどういうストーリーをこれから作っていくのか・・・・・・。

2月29日読了、「ダ・ビンチ・コード 上・下 ダン・ブラウン」

2008-03-21 22:36:37 | 思想・文学
話題になっていた時に、購入するかどうか決めかねて、そのままになっていたところ、古本屋で一山いくらで売りに出ていたので入手。

2月29日読了

「ダ・ビンチ・コード 上・下 ダン・ブラウン 角川書店」

面白いのだけれども、先に読んだ「ハンニバル」ほどの深さはなく、まだ完読していない「フーコーの振り子」のような玄学ぽっさは感じられない、ちょっと軽い読みものといった感じ。

翻訳探偵小説として読むとちょうどいいかもしれません。

2月24日読了、「ハンニバル 上・下 T・ハリス 新潮文庫」

2008-03-15 15:06:02 | 思想・文学
2月24日読了、

「ハンニバル 上・下 T・ハリス 新潮文庫」

スタートはあの前作を読後感が蘇るが様に物語りに入っていけ、読み続けるにつれて何かがずれてきているような感が。
そういう具合に終わるのか、との終わり方は、何か取って付けたようです。そこが残念ではあるものの、最後まで飽きさせないストーリーはさすがでもあります。
ところどころに山場があり、そして途中退場の登場人物の描き方もきっちりとしているからでしょうか?

ただ、3作の中ではできはあまり褒められたものではないのでは?

本日読了、「葉桜の季節に君を想うということ 歌野昌午 文春文庫」

2008-01-13 18:43:07 | 思想・文学
本日読了、

「葉桜の季節に君を想うということ 歌野昌午 文春文庫」

物語のスピード感などは、あまり読書になじみのない人にはとっつき易いのかも知れません。
しかし、ひねりにちょっと無理がないでしょうか?
個人的には読書にかけた時間を思うと、人には勧められません。本のカバーの文句につられて買うものではないものの、やはり自らの直感(単行本では買うべきものではない)は当たっていたと再確認。

ミステリーにしてももう少し濃密な物語が読みたいものです。
ただ、この題は上手いと思えます。題で本を手に取るということはあるので。