これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

「ライフ・オブ・パイ」が調味料

2013年02月21日 20時53分31秒 | エッセイ
 ※一部ネタバレがありますことをご了承ください。

 公開中の映画「ライフ・オブ・パイ」を観に行くことにした。



 2Dは安いが迫力がない。どうせ観るのなら、最高の画質といわれるIMAX3Dがいい。
 この選択は正解だったようだ。奥行きのある画像に、臨場感たっぷりのサウンドが、映画をさらに印象深いものにしてくれた。
 ストーリーは、パイ青年の漂流記である。
 パイの両親は、インドで動物園を営んでいたが、カナダへ移住することになり、園をたたむことにした。買い手のついた動物と一緒に、一家は貨物船に乗り込む。だが、不幸なことに、船はタイタニックのごとく沈没してしまうのだ。
 タイタニックと違い、救命ボートの数は足りていたのだろう。逃げ遅れた家族は船に取り残されたが、甲板にいたパイはボートに乗ることができた。しかし、一人ではなかった。シマウマ、ハイエナ、オランウータン、そしてベンガルトラが一緒だったのだ。
 小さなボートで繰り広げられる、弱肉強食の世界。周りは果てなき大海原で、どこにも逃げ場がない。生き残ったパイとトラの、227日にも及ぶサバイバル生活が、迫力満点の3D映像で飛び出してくる。
 特に素晴らしかったのが、トラのしなやかでリアルな動きである。ほとんどがCGらしいが、とても作り物とは思えない。のっそりのっそりと、警戒しながら歩くときの毛皮の揺れ方、豪快な咆哮とともに、素早く獲物に飛びかかる瞬発力、媚びない威厳を漂わせた表情、どれも自然でビックリするほどだった。
 私が一番気に入ったシーンは、トラが魚を追って、ボートから海に飛び込むところだ。トラは泳ぎの名人だそうで、顔を出し、ふわふわの毛皮をびしょぬれにして、スイスイと水面を進んでいく。実は、イカダの上のパイを襲うつもりだったのだが、危険を察知した彼に逃げられてしまう。今度は、トラがボートに戻れないというピンチを迎え、形勢が逆転する。必死で前足をボートにかけ、「助けてくれ!」と言わんばかりに吠えまくっていた。
 結局、パイは助けてやるのだが、実際にはCGである。俳優はトラのいないところで、一人芝居をしたそうだ。撮影現場を想像すると、クスッと笑いが込み上げてきた。
 ボートがメキシコに到着したところで、長い長い漂流生活にピリオドが打たれる。パイは海岸に倒れこむが、トラはパイを無視して森へと去っていく。彼は、そこで初めて、トラが生きる希望になっていたことに気づき、別れを惜しんで涙を流すのだ。
 自分の命を脅かすものが、生きる糧となることもある。しかし、このトラ、今度はメキシコ内を震撼させるに違いない。細かいことだが、「野放しで終わらせていいの?」と少々気になった。
 上映時間127分。終わったあとは、私自身が漂流したような疲れを感じた。
 難しいことはなく、誰もがストーリーに入り込める秀作だったと思う。
 夕食の時間が迫っていたので、その日は手軽で簡単な料理を作ったが、やけに美味しく感じられた。
 パイは、乾パンらしきものや生魚を食べ、雨水をためて飲んでいた。スクリーンを通して、疑似体験をした気がする。
 家族みんなで観れば、しばらくは手抜き料理でも許されるかもしれない。


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12 コメント

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Unknown (YUMI)
2013-02-21 22:03:39
自分の命を脅かすものが、生きる糧となることもある。
確かにそうでしょうね。
人間同士だって、憎い相手がいるから、そいつをどうにかするのが生きる糧なんて場合もあるだろうし。
幸いにも、そんなことが生きる糧にはなっていませんが。
さて、私の今の生きる糧は何かな?
ブログ?それも淋しい気もしますが…
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恐竜とか… (Yano)
2013-02-22 03:39:35
恐竜とかが出て来る映画にしてもそうだけど、リアルな映像からCGの凄さを実感するね。
個人的に、15~16年前に新宿にある3D専門のシアターによく行ってた程好きなので、今も勿論、映画は3D対応の作品に越した事はないと思う。ただ、当時その3Dシアターは意外にも毎回のように空いていたから、今何故3Dが流行り出したのか不思議な感もあるにはあるね。
そこは、ヘッドフォン付きの大きめのゴーグルを付け、普通の映画館よりだいぶ傾斜のある席から観るから観易かった。因みに、ゴーグルの脇にあるボタンを押すと音声が英語に切り替わる機能付き。
20~30分の短編の作品ばかりだった。でも、3Dは疲れるからそれぐらいでもちょうど良かった覚えもある。←これらシアターの話は、以前どこかに少し書いたかも知れないけどね。
最近の、映画館の3Dの映画やブルーレイの3Dの映画をまだ実は観た事がないんだけど、今の進化したりで、2時間観ても目は疲れないのかな? 何れにしても、早く一度観てみたいもの。まあ、理想は映画館だけど…。
いつも、作品のチョイスが中々良いと思う!(^^) 俺は、昨日レンタルでは“はずす”事も少なくない。
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ライバル (砂希)
2013-02-22 19:10:50
>YUMIさん

憎い相手、いなくてよかったですね(笑)
でもまあ、漫然と生きているよりは、「アイツを見返してやるっ」などと目標を持っていた方がいいかもしれません。
私の場合、「しっかりやらないと周りから叩かれる」かしら。
誰も何も言ってくれないと、自分のためにはなりませんね。
YUMIさんはブログという手段で自己表現をされているような印象があります。
今までお忙しかった分を取り戻しているような…。
生きる糧は、きっと旅行ですよ~!
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へー (砂希)
2013-02-22 19:15:15
>Yanoさん

新宿に?
当時は都内に住んでいたのかな。
そんなに昔から3Dを観ていたなんて贅沢だね。
空いていたのは、料金が高かったからかもしれないし。
好きなことにお金をつかうのはいいと思う。
3Dはやっぱり疲れるんだね。
終わった後のぐったり感がツラかった…。
ちょうど、16:20~18:37という時間帯だったから、出かける前に夕食を準備して、帰ってから温め直して食べる感じ。
主婦は不自由な身の上なんざんす。
作品のチョイスは口コミかな。
外した映画はブログに載せない(笑)
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【サバイバル】 (心機朗)
2013-02-22 20:28:31
タイトル見ても実は何の映画かわからなかったけど、あのトラと少年の漂流記ですか…。
あのトラさんはCGなんですか?スゴイな、CM見るかぎり本物にしか見えんかった。
肩に力入りそうな映画のような気がしますが、ヒミツグッズがあったようでだいぶ軽減されたのかな…?
相変わらずいい映画観に行ってますね。
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よかったです (砂希)
2013-02-22 20:44:18
>心機朗さん

いやあ、まるっきり本物のトラでしたよ。
今は、こんなに技術が発展したんですね。
すごいです。
これを、ヒミツグッズなしで見るのはきつい。
疲労感が違いますね。
まだまだ見たい映画があるんですが、時間があるかしら。
普段は遠出しないので、近場には何度も行きたいですね。
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IMAX3Dって知りませんでした A^^); (FREUDE)
2013-02-22 21:40:47
「子連れ狼」のワンシーンで、大人が梁漁をするのを見ているシーンがありました
大人たちが去ったあと、3歳の大五郎が真似をして魚を獲ります

やっとつかまえた小魚を小石で叩いて身を取って食べるのですが
3歳児がこんなこと、できるのかなと
今でも疑問であります
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観て見たい (ヤッギー)
2013-02-23 07:05:12
ライフ・オブ・パイって観て見たい映画の一つです。

迫力がありますよね~。

最後は涙を誘う映画って感じですね。
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たしかに (砂希)
2013-02-23 18:59:54
>FREUDEさん

子連れ狼は見たことがありません。
三歳児が梁漁を?
魚は捕れるかもしれませんね。
しかし、食べるところまではちょっと…。
焼いたらもっと疑問です。
でもまあ、許してあげましょうよ(笑)
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考えてみれば (砂希)
2013-02-23 19:02:04
>ヤッギーさん

いい映画でしたよ。
でも、考えてみたら、パイはこの航海で家族も財産もすべて失うんです。
その上命まで脅かされ、悲劇ですね。
しかし、人間、それ以上の困難があると、乗り越えようと奮闘するものなのかしら。
ぜひご覧になって~♪
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