これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

郵便物から宝探し

2024年07月28日 20時54分21秒 | エッセイ
 郵便物の処理はやりたくない仕事の一つだ。
 重要な連絡はほんのひと握りで、ほとんどがどうでもいいイベントのチラシや、掲示する必要もないポスターばかりで、開封した時点でゴミになる。作業の意義を感じられない。
 しかし、その日の郵便物には明らかに異質なハガキが混じっていた。「笹木砂希先生」と書かれたあて名も学校の所在地も、何度も下書きをしては書き直し、成功した文字にペンを入れ、消しゴムをかけたように見えた。
「おやおや? 誰からだろう」
 差出人は近隣の中学生であった。ほかにも2通、同じ中学からのハガキが届いており、おそらく教員の指導を受けて書かれたものと思われた。
「そうか、あのときの生徒だ」
 7月早々、勤務先の高校に中学2年生6名が、上級学校訪問としてやってきたことを思い出す。
「どのような校則がありますか」
「部活動は強いですか」
「○○という授業の内容を教えてください」
 他にもたくさんの質問を準備して来校したが、対応をした教員が私だったので、お礼と感想等を自分たちの言葉で綴ったハガキを送ってくれたらしい。
「へえ、こんなことを感じたんだ」
 サッカー部の活動が聞けてよかったとか、○○室は中学校にない施設なので面白かったなどと率直な意見が書かれており、真剣に取り組んだ姿勢が伝わってくる。
 これはうれしい。今年度、受け取った郵便物の中で、間違いなく一番光り輝いていた。先生方からお礼状をいただくことはあるが、生徒から受け取る機会はそう多くない。どのようなリアクションをしようかと頭を捻り考えた。
「よし、暑中お見舞い申し上げますって書いてあるから、見舞状として返信しよう」
 名案が浮かび、ハガキを買いに走る。普通ハガキのストックならあるが、近所の文具店の、ちょっとおしゃれなポストカードがいいだろう。



 夏らしいイラストが気に入り、こちらもレジに持っていく。



 切手は、何年も前に調達したシートの残りを使えばよい。



 おそらく、今の中学生が郵便を利用することはまずない。自分たちの送ったハガキが無事到着し、気持ちも届けられたと実感できれば、紙媒体の味わいを知るきっかけにもなる。手紙のよさをわかってほしくて、返信の文面には人生に生かせそうな名言もつけ加えた。
 書いている間は、わくわくする想いに満たされ、私の方が元気をもらったのだと気づく。楽しいひとときだった。
 明日からまた一週間が始まる。
 次から「郵便物の山には宝が紛れているかも」と考えながら開封することにしたい。

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コメント (6)
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