今年のGWは人出が多いと聞くが、私は5日のうち4日は家でダラダラと過ごしていた。
唯一のお出かけは、戸栗美術館とシェ松尾がコラボした企画「アート&イート」に参加するため、渋谷に駆けつけたことである。
戸栗美術館のTwitterを見たとき、大好きな柿右衛門を鑑賞して、美味しいシェ松尾のフレンチがついてくる程度の認識しかなかったのだが、もっと奥が深かった。
「本日は、奥の部屋で作品に触れていただいたあと、展示室にご案内して初出展を含む展示をご覧になり、そのあとレストランに移動します」
「えっ、さ、触れるんですか!?」
「はい」
「すご~い!」
しかも、学芸員の方の解説付きであった。
まずは、1630年頃の作品から。
「この頃は製造技術が未熟で、数カ所に気泡がありますし、裏側には釉薬を塗り忘れたところも見られます」
「ホントですね、アハハ」
手に取ると、ズシリと重い。390年も前に焼かれた皿が、自分の手元に残っていることにロマンを感じる。
次に、1650年ごろの作品を紹介された。
「技術の進歩が見られ、薄くて滑らかな仕上がりとなっています。釉薬の使い方も変化しました」
20年も経ったのだから、それは当然だろう。花のようなカッティングが魅力的だし、華やかな色彩も見事だ。軽くて機能的なお皿という印象を受けた。
そして、本命の柿右衛門がやってくる。
「こちらは1680年頃ですね。柿右衛門様式は縁に赤で唐草模様が描かれていることが多いのです」
こんなに近くで見たことはないと思う。お皿に描かれた一つひとつの絵柄まで鑑賞できて舞い上がり、もし窓が開いていたら、風に乗って飛んでいったに違いない。
最後に1690年頃の金襴手となった。
「窓がいくつもあるデザインですが、中は同じ模様の繰り返しになっています」
「ほー」
どのお皿も手触りがよく美しかった。こんなに贅沢な鑑賞の仕方は、めったにない。来年もGWに同じ企画をするというので、また参加したい。
たっぷりお皿に触れたあとは、2階の展示室で「柿右衛門の五色」にまつわる解説を聞いた。自分のペースでゆっくり見るのもよいが、短時間で効率よく理解できるレクチャー付きはありがたい。
「赤、青、緑、黄、金が柿右衛門の五色です。ときには六色になることもあります」
どの絵柄に何色が使われるかは、規則性があるらしい。
「六色のときは茶色が使われます。植物の枝をご覧ください」
「おお~」
「こちらの犬は3色しか使われていませんので、黒が入ってきます。黒は剥離しやすいので、上から緑を重ねています」
「本当だ~」
という具合に、展示室の隅から隅まで見て回ったあとは、いよいよランチである。
渋谷区松濤という場所は、元は鍋島藩の治めた土地だったらしい。佐賀にゆかりのある場所で、佐賀の食材を使ったお料理をいただくのだから、粋な演出である。
どの料理も美味しかったが、春先のアスパラは季節感があってよい。
デザートには嬉野茶で作った葉が載っていた。
なんといっても、柿右衛門のお皿に乗って焼き菓子が登場してきたことがうれしかった。
食後はお庭に案内され、紅茶をいただいた。
ほんの4時間ほどのイベントだったが、中身が濃すぎて、家に着いてからも興奮冷めやらず……。
出かける日数や距離も大事だが、密度という視点から考えると、ここ数年ではこのイベントが一番盛り上がったかな。
作品と触れ合える、最強のアート鑑賞。
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
唯一のお出かけは、戸栗美術館とシェ松尾がコラボした企画「アート&イート」に参加するため、渋谷に駆けつけたことである。
戸栗美術館のTwitterを見たとき、大好きな柿右衛門を鑑賞して、美味しいシェ松尾のフレンチがついてくる程度の認識しかなかったのだが、もっと奥が深かった。
「本日は、奥の部屋で作品に触れていただいたあと、展示室にご案内して初出展を含む展示をご覧になり、そのあとレストランに移動します」
「えっ、さ、触れるんですか!?」
「はい」
「すご~い!」
しかも、学芸員の方の解説付きであった。
まずは、1630年頃の作品から。
「この頃は製造技術が未熟で、数カ所に気泡がありますし、裏側には釉薬を塗り忘れたところも見られます」
「ホントですね、アハハ」
手に取ると、ズシリと重い。390年も前に焼かれた皿が、自分の手元に残っていることにロマンを感じる。
次に、1650年ごろの作品を紹介された。
「技術の進歩が見られ、薄くて滑らかな仕上がりとなっています。釉薬の使い方も変化しました」
20年も経ったのだから、それは当然だろう。花のようなカッティングが魅力的だし、華やかな色彩も見事だ。軽くて機能的なお皿という印象を受けた。
そして、本命の柿右衛門がやってくる。
「こちらは1680年頃ですね。柿右衛門様式は縁に赤で唐草模様が描かれていることが多いのです」
こんなに近くで見たことはないと思う。お皿に描かれた一つひとつの絵柄まで鑑賞できて舞い上がり、もし窓が開いていたら、風に乗って飛んでいったに違いない。
最後に1690年頃の金襴手となった。
「窓がいくつもあるデザインですが、中は同じ模様の繰り返しになっています」
「ほー」
どのお皿も手触りがよく美しかった。こんなに贅沢な鑑賞の仕方は、めったにない。来年もGWに同じ企画をするというので、また参加したい。
たっぷりお皿に触れたあとは、2階の展示室で「柿右衛門の五色」にまつわる解説を聞いた。自分のペースでゆっくり見るのもよいが、短時間で効率よく理解できるレクチャー付きはありがたい。
「赤、青、緑、黄、金が柿右衛門の五色です。ときには六色になることもあります」
どの絵柄に何色が使われるかは、規則性があるらしい。
「六色のときは茶色が使われます。植物の枝をご覧ください」
「おお~」
「こちらの犬は3色しか使われていませんので、黒が入ってきます。黒は剥離しやすいので、上から緑を重ねています」
「本当だ~」
という具合に、展示室の隅から隅まで見て回ったあとは、いよいよランチである。
渋谷区松濤という場所は、元は鍋島藩の治めた土地だったらしい。佐賀にゆかりのある場所で、佐賀の食材を使ったお料理をいただくのだから、粋な演出である。
どの料理も美味しかったが、春先のアスパラは季節感があってよい。
デザートには嬉野茶で作った葉が載っていた。
なんといっても、柿右衛門のお皿に乗って焼き菓子が登場してきたことがうれしかった。
食後はお庭に案内され、紅茶をいただいた。
ほんの4時間ほどのイベントだったが、中身が濃すぎて、家に着いてからも興奮冷めやらず……。
出かける日数や距離も大事だが、密度という視点から考えると、ここ数年ではこのイベントが一番盛り上がったかな。
作品と触れ合える、最強のアート鑑賞。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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