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これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

判定2連発

2012年01月19日 20時34分33秒 | エッセイ
 その日は、年明け早々に行った体外受精の判定日だった。
 過去に妊娠したときは、乳首が痛い、気持ち悪い、激しい眠気に襲われるなどの兆候が見られたが、今回はそれがない。スカを覚悟して病院に向かった。
 妊娠の判定は、尿検査ではなく血液検査で行う。この病院は、血中ホルモン値で体の状態を判断することが多いので、万年貧血気味の身にはつらい。でも、血液からの情報量の多さには驚くことが多い。
 血液検査の結果が出るまで小一時間待ち、ようやく診察室に呼ばれた。ドアを開けると、採卵や移植をしたときと同じ先生がいて、目が合う。表情から、何を言われるかがわかってしまった。
「笹木さん、……残念ながら、今回は妊娠していませんでした」
 ああ、やっぱり。
 予測していても、心にズシリとめり込んでくる。
 医師は私の様子を気遣いながら、さらに言葉を進めた。
「これが血液検査の結果です。このβ-HCGという数値を見てください。0.1となっていますが、これだと受精卵が胚盤胞まで成長しなかったと考えられます」
 移植した受精卵は4分割だったが、さらに細胞分裂を繰り返し、着床可能な胚盤胞という状態に成長する。でも、私の卵は、そこまで至らなかったというのだ。血液から、どこに問題があったかがわかるとは思わなかった。
「グレード2の、まずまずの卵だったんですが、この年齢ですと、胚盤胞まで成長するのは2割程度なんです」
 それは知らなかった。35歳までは8割が胚盤胞まで達するというのに、その後は加齢とともに割合が低下し、40歳では50%程度、44歳では30%以下、45歳では10%以下となる。
「次回は胚盤胞まで培養し、いったん凍結させてから、次の周期に戻すことにしましょう」
 医師は、もっともな提案をした。採卵する周期より、採卵しない周期のほうが、着床率がよい。そこで、凍結という技術が活躍するわけだが、問題は受精卵が凍結できる状態まで成長するかである。体内でも培養でも、2割であることに変わりはないので、成功率はかなり低い。
 昨年1月の体外受精では、着床までたどり着いたというのに、1年後の今は加速度的に悪化している。高齢出産の限界を感じ、なにやら絶望的な気持ちになってきた。

 家に帰ると、郵便受けに手紙が入っていた。先日、娘のミキが受けた模試の結果だ。
 前回までは、志望校の合格判定がCで、合格率40%以上という厳しい状況だった。もし、今回もCならば、志望校のランクを下げるつもりらしい。
 ミキはすばやくハサミを取り出し、結果を開封し始めた。
「あっ、Bだ!!」
 Bは合格圏で、60%以上の合格率となる。
「しかも、あと一歩でAになるBだよ! やったぁ!!」
 Aは安全圏で、合格率80%以上だから、一気にランクアップしたわけだ。家庭教師に大枚はたいた成果は、十分にあった。絶望的な気分が吹き飛び、私も笑顔になる。
「よかったね、ミキ」
「うん! やっぱり、志望校は変えないよ」
 赤ちゃんができることと、娘が希望校に合格することの、どちらが大事かと問われれば、私は迷わず娘のほうだと答える。ツキは全部あげてもいいから、行きたい高校に合格してほしい。
 いずれにせよ、4月からは忙しくなるから、体外受精も3月いっぱいで区切りをつけるつもりでいる。
 さて、もうちょっと、私も頑張らなくちゃ。



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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (18)
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