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これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

お見舞いに行こう!

2010年02月07日 21時17分56秒 | エッセイ
 義母が、白内障の手術のため入院している。
 先週は左目、今週火曜には右目を手術するそうだ。
 今日は、お見舞いに行くことにした。

 お見舞いの定番は花である。
 シクラメンは「死」と「苦」につながるから、タブーとされている。鉢植えも、「根つく」ところから「寝付く」に通じ、避けねばならない。
 そういえば、昔読んだ漫画に、嫌がらせでシクラメンの鉢植えを持って、お見舞いに行く場面があったっけ……。

 私の母も、なかなか激しい。
 かれこれ20年近く前になるが、夫がアキレス腱を切り、入院したことがある。仕事の帰りに病院に寄ると、すでに私の両親が来ていた。
「ああ、来てくれたの。ありがとう」
「近いからね。花を持ってきたわよ」
 母は得意げにそう言い、夫の枕元を指さした。そこには立派な白い花が生けられていたのだが……。

 ユリ!! 死者に手向ける花でしょ~~っ!!

 ユリは下を向いているところと、菊と同様、葬儀に用いられることから、お見舞いでは嫌われる。しかも、むせるような強い香りが部屋中に充満しているではないか。

 ああっ、4人部屋なのに、どうしようっ!

 夫は匂いに咳き込み、私は冷や汗をかいた。
「花瓶がないんじゃないかと思ってさ、一応ウチから用意してきたんだよ」
 だが母は、自分の用意周到ぶりに酔っていて、非常識な行為とは夢にも思っていない。「アタシは昔から気が利くって言われてたのよ♪」と自画自賛して帰っていった。

 川村学園卒の、元祖お嬢様の義母には、とても聞かせられない話である。
 今日は、義母に相応しい、ドーナツのアレンジメントを用意した。



 食事制限はないから、お菓子も持っていきたい。しかし、80歳をとうに過ぎ、すっかり食が細くなった義母は、たくさんの量を食べられない。
 夫が入院したときは、「食事が少ない」「お腹が空いた」と年中騒がれたので、パンやおにぎり、バナナに大福など、お腹にたまるものを連日持参した。
「ご飯も大盛りにしているんですけどね。足りない分は奥様が食べさせてください」
 看護師さんにそう言われたときは、こちらのほうが恥ずかしくなった。

「虎屋の小形羊羹も持っていくね」
 義母が喜びそうな手土産を思いついたので、夫にメールを送った。これなら、一度にたくさん食べられない人でも大丈夫だ。きっと、同室の女性と分け合って、和やかなおやつタイムになるだろう。



 間もなく、夫から返信がきた。
「虎屋の羊羹は、しばらく食べていません。私も食べたいです」

 しまった、夫の食欲を刺激してしまったか!!

 小さいからと、合わせて20個買ったら、紙袋にズッシリとした手応えを感じた。
 うう、羊羹は重い……。




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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (24)
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