義母が、白内障の手術のため入院している。
先週は左目、今週火曜には右目を手術するそうだ。
今日は、お見舞いに行くことにした。
お見舞いの定番は花である。
シクラメンは「死」と「苦」につながるから、タブーとされている。鉢植えも、「根つく」ところから「寝付く」に通じ、避けねばならない。
そういえば、昔読んだ漫画に、嫌がらせでシクラメンの鉢植えを持って、お見舞いに行く場面があったっけ……。
私の母も、なかなか激しい。
かれこれ20年近く前になるが、夫がアキレス腱を切り、入院したことがある。仕事の帰りに病院に寄ると、すでに私の両親が来ていた。
「ああ、来てくれたの。ありがとう」
「近いからね。花を持ってきたわよ」
母は得意げにそう言い、夫の枕元を指さした。そこには立派な白い花が生けられていたのだが……。
ユリ!! 死者に手向ける花でしょ~~っ!!
ユリは下を向いているところと、菊と同様、葬儀に用いられることから、お見舞いでは嫌われる。しかも、むせるような強い香りが部屋中に充満しているではないか。
ああっ、4人部屋なのに、どうしようっ!
夫は匂いに咳き込み、私は冷や汗をかいた。
「花瓶がないんじゃないかと思ってさ、一応ウチから用意してきたんだよ」
だが母は、自分の用意周到ぶりに酔っていて、非常識な行為とは夢にも思っていない。「アタシは昔から気が利くって言われてたのよ♪」と自画自賛して帰っていった。
川村学園卒の、元祖お嬢様の義母には、とても聞かせられない話である。
今日は、義母に相応しい、ドーナツのアレンジメントを用意した。

食事制限はないから、お菓子も持っていきたい。しかし、80歳をとうに過ぎ、すっかり食が細くなった義母は、たくさんの量を食べられない。
夫が入院したときは、「食事が少ない」「お腹が空いた」と年中騒がれたので、パンやおにぎり、バナナに大福など、お腹にたまるものを連日持参した。
「ご飯も大盛りにしているんですけどね。足りない分は奥様が食べさせてください」
看護師さんにそう言われたときは、こちらのほうが恥ずかしくなった。
「虎屋の小形羊羹も持っていくね」
義母が喜びそうな手土産を思いついたので、夫にメールを送った。これなら、一度にたくさん食べられない人でも大丈夫だ。きっと、同室の女性と分け合って、和やかなおやつタイムになるだろう。

間もなく、夫から返信がきた。
「虎屋の羊羹は、しばらく食べていません。私も食べたいです」
しまった、夫の食欲を刺激してしまったか!!
小さいからと、合わせて20個買ったら、紙袋にズッシリとした手応えを感じた。
うう、羊羹は重い……。

楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
先週は左目、今週火曜には右目を手術するそうだ。
今日は、お見舞いに行くことにした。
お見舞いの定番は花である。
シクラメンは「死」と「苦」につながるから、タブーとされている。鉢植えも、「根つく」ところから「寝付く」に通じ、避けねばならない。
そういえば、昔読んだ漫画に、嫌がらせでシクラメンの鉢植えを持って、お見舞いに行く場面があったっけ……。
私の母も、なかなか激しい。
かれこれ20年近く前になるが、夫がアキレス腱を切り、入院したことがある。仕事の帰りに病院に寄ると、すでに私の両親が来ていた。
「ああ、来てくれたの。ありがとう」
「近いからね。花を持ってきたわよ」
母は得意げにそう言い、夫の枕元を指さした。そこには立派な白い花が生けられていたのだが……。
ユリ!! 死者に手向ける花でしょ~~っ!!
ユリは下を向いているところと、菊と同様、葬儀に用いられることから、お見舞いでは嫌われる。しかも、むせるような強い香りが部屋中に充満しているではないか。
ああっ、4人部屋なのに、どうしようっ!
夫は匂いに咳き込み、私は冷や汗をかいた。
「花瓶がないんじゃないかと思ってさ、一応ウチから用意してきたんだよ」
だが母は、自分の用意周到ぶりに酔っていて、非常識な行為とは夢にも思っていない。「アタシは昔から気が利くって言われてたのよ♪」と自画自賛して帰っていった。
川村学園卒の、元祖お嬢様の義母には、とても聞かせられない話である。
今日は、義母に相応しい、ドーナツのアレンジメントを用意した。

食事制限はないから、お菓子も持っていきたい。しかし、80歳をとうに過ぎ、すっかり食が細くなった義母は、たくさんの量を食べられない。
夫が入院したときは、「食事が少ない」「お腹が空いた」と年中騒がれたので、パンやおにぎり、バナナに大福など、お腹にたまるものを連日持参した。
「ご飯も大盛りにしているんですけどね。足りない分は奥様が食べさせてください」
看護師さんにそう言われたときは、こちらのほうが恥ずかしくなった。
「虎屋の小形羊羹も持っていくね」
義母が喜びそうな手土産を思いついたので、夫にメールを送った。これなら、一度にたくさん食べられない人でも大丈夫だ。きっと、同室の女性と分け合って、和やかなおやつタイムになるだろう。

間もなく、夫から返信がきた。
「虎屋の羊羹は、しばらく食べていません。私も食べたいです」
しまった、夫の食欲を刺激してしまったか!!
小さいからと、合わせて20個買ったら、紙袋にズッシリとした手応えを感じた。
うう、羊羹は重い……。

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