夫が、さるバレーボールチームのロゴ入りウエアをもらってきた。トレードカラーの緑のスウェットにニット帽だ。
「ほら、ここにチーム名とマスコットが入っているんだぞ。スゴイだろ~」
誇らしげに、真新しいそのウエアを私と娘に見せると、おもむろに着はじめた。
「どうだ?」
仁王立ちする夫を見て、私たちは声を失った。10秒ほど経ってから、歯に衣着せぬ娘が意見した。
「……お父さん、そのニット帽やめたほうがいいよ。不審者みたいだよ」
「えっ、不審者!?」
夫は仰天し、あわてて鏡を覗き込んだ。
「あっ、本当だ! 全然似合わないっ!!」
私と娘はゲラゲラと笑い転げたが、夫はショックを隠せず、ひたすらしょげていた。
ニット帽が似合う人は少ないと思う。一歩間違えれば、たちまち不審者となるアイテムだから、あっという間に怪しい人のできあがりだ。
「お父さん、その帽子かぶって小学校に来ないでよ」
ちょうど、学校公開週間ということもあり、娘が釘を刺した。夫は悔しそうに答えた。
「ミキが悪さをしたら、これをかぶって行ってやるからな」
「えー、やだやだ、絶対やだ! 悪いことしないから来ないでよぅ」
しかし、夫の不審者ぶりなどまだまだ序の口だ。
昔の同僚に、鳥山明の『ドラゴンボール』に出てくる登場人物の一人、魔人ブウに似ている人がいた。
当時勤務していた学校は、2月にマラソン大会を実施するのが常だった。とにかく寒い時期だ。生徒は走るからよいが、教員はしっかり防寒をしないと風邪をひく。
「ねえ、ちょっと……。小川さん、やばくない?」
同僚の女性が目配せするほうを見ると、魔人ブウこと小川先生の姿があった。ダウンジャケットだけにしておけばいいものを、ニット帽までかぶっており、とてつもなく危険な人に見えた。
私のこれまで見た中で、もっともニット帽の似合わない男ナンバーワンであることは間違いない。
「うっわー、あれはマズイでしょ! 近づかないほうがいいわね」
「でも笹木さん、あなた彼と一緒のチェックポイントでしょ」
あっ!! そうだった! すっかり忘れていた。
生徒がコースを間違えないように、曲がり角のチェックポイントには複数の教員が待機し、指示を出すことになっている。私はその年、彼と同じ場所を割り当てられていたのだった。
「やだぁ~、あんな変質者みたいな格好している人と一緒に立つのー?!」
思わず泣きを入れたが、周りの反応は冷たい。
「ははは、頑張って!」
「離れていればいいじゃない♪」
……まったく、他人事だと思って。
チェックポイントに向かっていやいや歩いていると、後ろから小川先生の呼ぶ声がした。
「あ、笹木さん、一緒だったよねー。よろしく!」
仕方なく私は振り返り、弱々しい声で返事をした。
「……あ、よろしくお願いします……」
振り返った私を見て、小川先生はプッとふきだした。
「その紫外線対策のサングラスに、花粉用のマスクをしていると、相当怪しい人に見えるよ。やり過ぎでしょ」
「えっ、そうですか? いつもこんな感じなんですけど」
思いがけない指摘に、私は動揺した。
ってゆーか、あんたに言われたくないよ!!
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「ほら、ここにチーム名とマスコットが入っているんだぞ。スゴイだろ~」
誇らしげに、真新しいそのウエアを私と娘に見せると、おもむろに着はじめた。
「どうだ?」
仁王立ちする夫を見て、私たちは声を失った。10秒ほど経ってから、歯に衣着せぬ娘が意見した。
「……お父さん、そのニット帽やめたほうがいいよ。不審者みたいだよ」
「えっ、不審者!?」
夫は仰天し、あわてて鏡を覗き込んだ。
「あっ、本当だ! 全然似合わないっ!!」
私と娘はゲラゲラと笑い転げたが、夫はショックを隠せず、ひたすらしょげていた。
ニット帽が似合う人は少ないと思う。一歩間違えれば、たちまち不審者となるアイテムだから、あっという間に怪しい人のできあがりだ。
「お父さん、その帽子かぶって小学校に来ないでよ」
ちょうど、学校公開週間ということもあり、娘が釘を刺した。夫は悔しそうに答えた。
「ミキが悪さをしたら、これをかぶって行ってやるからな」
「えー、やだやだ、絶対やだ! 悪いことしないから来ないでよぅ」
しかし、夫の不審者ぶりなどまだまだ序の口だ。
昔の同僚に、鳥山明の『ドラゴンボール』に出てくる登場人物の一人、魔人ブウに似ている人がいた。
当時勤務していた学校は、2月にマラソン大会を実施するのが常だった。とにかく寒い時期だ。生徒は走るからよいが、教員はしっかり防寒をしないと風邪をひく。
「ねえ、ちょっと……。小川さん、やばくない?」
同僚の女性が目配せするほうを見ると、魔人ブウこと小川先生の姿があった。ダウンジャケットだけにしておけばいいものを、ニット帽までかぶっており、とてつもなく危険な人に見えた。
私のこれまで見た中で、もっともニット帽の似合わない男ナンバーワンであることは間違いない。
「うっわー、あれはマズイでしょ! 近づかないほうがいいわね」
「でも笹木さん、あなた彼と一緒のチェックポイントでしょ」
あっ!! そうだった! すっかり忘れていた。
生徒がコースを間違えないように、曲がり角のチェックポイントには複数の教員が待機し、指示を出すことになっている。私はその年、彼と同じ場所を割り当てられていたのだった。
「やだぁ~、あんな変質者みたいな格好している人と一緒に立つのー?!」
思わず泣きを入れたが、周りの反応は冷たい。
「ははは、頑張って!」
「離れていればいいじゃない♪」
……まったく、他人事だと思って。
チェックポイントに向かっていやいや歩いていると、後ろから小川先生の呼ぶ声がした。
「あ、笹木さん、一緒だったよねー。よろしく!」
仕方なく私は振り返り、弱々しい声で返事をした。
「……あ、よろしくお願いします……」
振り返った私を見て、小川先生はプッとふきだした。
「その紫外線対策のサングラスに、花粉用のマスクをしていると、相当怪しい人に見えるよ。やり過ぎでしょ」
「えっ、そうですか? いつもこんな感じなんですけど」
思いがけない指摘に、私は動揺した。
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