再掲:「胡服騎射(こふくきしゃ)」
【解説】戦国の七雄の中でも北方に位置する趙は、つねに胡(北方民族)と戦っていたが、武霊王(? - 紀元前295年)は彼らから戦術を学ぶとともに胡服騎射(北方民族の衣服をまとい騎馬で戦う)の制を採用し軍制を改革した。その結果、中山から燕、代、さらには雲中、九原(ともにオルドス北方)に至る北辺の地を攻略し、国勢は大いにふるった。(『史記索隠』唐の司馬貞による『史記』の注釈書)
【大意】伝統にこだわらず、時代変化に対応して、柔軟な発想で改革を遂行すること。
【出典】「中国故事の「名場面」に学ぶ人間学」 森友幸照著 すばる舎
【所見】この章を読んでいて感じたことは、人間社会というものは今も2300年前の昔も何も変わっていないということだ。特に、「伝統にこだわらず、時代変化に対応して、柔軟な発想で改革を遂行すること。」との解釈は、拉致被害者救出活動を続けている家族会・救う会の現行運動方針にそのまま当てはまると思う。
本年2月に採択した「今後の運動方針」には、「私たちはこれまで一貫して「全拉致被害者の即時一括帰国」を実現せよと求め続けてきた。その方針に変わりはない。」とあり、これまでの主張を繰り返している。一貫した主張ともいえるが、この方針で拉致問題の解決に何ら至っていないことは、日朝平壌宣言以降の歴史が証明している。
「家族会は拉致被害者と静かな日常生活を送ることを切望していますし、救う会もその実現を日本政府に求めるだけです。」と運動方針で表明する一方で、「朝鮮総連の活動を厳しく取り締まることができる新法制定を求める。」等の主張をするのでは、北朝鮮側がこの運動方針と家族会・救う会を信用することはないだろう。
この先、同じような運動方針を採択しても局面が動くとも思えないし、膠着状態が続けば家族会のメンバーは高齢化が進行して運動の第一線から退かざるを得ない。それでも構わないと考えて家族会は活動しているのかと疑問に思う。
今こそ「胡服騎射」、伝統にこだわらず、時代変化に対応して、柔軟な発想で改革を遂行するべきではないのか。家族会・救う会の「全拉致被害者の即時一括帰国」は理念としては存在できても、現実を動かしていく戦術とはなりえない。家族の願望と国際政治の現実が混同して語られ、その結果、家族の願望だけが取り残されていく。今からでも運動方針を一から練り直し、柔軟な発想で改革を遂行するべきではないのか。
令和2年2月27日
救う会徳島 代表 陶久敏郎
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます