三笑会

三笑会は、平成30年6月1日~陶芸活動と陶芸教室、喫茶室、自家野菜販売、古美術・古物商経営を総合的に活動していきます。

「阿波遍路恋唄」床本その1

2022-03-22 12:07:27 | 日記
「阿波遍路恋唄」床本その1

原案創作:陶久敏郎
床本作成:鶴沢友輔

この世に名高い遍路道、巡る足取り願いを込めて、思い思いの遍路道、八十八か所結願目指し、御大師様と連れ立って人の世救う四国霊場
二十一番札所太龍寺、次に向かうは平等寺、その道中のオトンボ山、峠を越えてある祠、一人の女がうずくまる。
「もう動けぬ、どうぞ誰かお助けなされてくださりませ 天道様、御大師さま」と夫は不治の病にて、床に伏して幾年月、平癒祈願の一心にわが身を捨てての遍路旅、江戸を立ちいではるばるとようようここまで来たれども、不意の石ころ足とられ、転んだ拍子に挫いた足首、どうにかこうにか祠まで、足を引きずり辿り着き、その場にばったり倒れこむ
動きたくても動けぬ身体、ここに留まりかれこれ二日の昼下がり、
  「せめて夜露はしのげても、食べるものとて無くなりし、水も飲み干しもう動けぬ」
麓の村はまだ遥か、痛みと飢えと渇きとに、心細さも加わって、我が身の終わりと堪える心も弱り果て、江戸に残した夫を思い
  「今頃は、どうしていやしゃんす」と、空を見上げて嘆きその場にしばし眠り込む
いつしか聞こゆる達者な足音、新野町岡花村の竹一と花の盛りの西光寺村のお松の両人 好き合う同士言い合わせ、竹藪掃除に行くとの口実作って、忍んでここまでやってきた
  「オーイお松、逢いたかったよ」
  「竹ちゃん、私も会いたかったわ」
と、嬉しさかみしめ共々に、二人夫婦になるように、願いを込めて祠詣でに立ち寄れば、そこに見えるは生き倒れ、両人お驚き、慌てて駆け寄り抱き起こす。
  「もうし、もうし女子し」と
竹一が手持ちの水を飲ませると、女のお腹が鳴り響く。
お松慌てて差し出す焼き芋 
  「オオ、お芋」
と、飛びつくように頬張って一口食べてはあふれ出す、涙と元気と有難さ、何度も何度も涙と口も拭きながら、女は元気を取り戻す。

~続く~


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