三笑会

三笑会は、平成30年6月1日~陶芸活動と陶芸教室、喫茶室、自家野菜販売、古美術・古物商経営を総合的に活動していきます。

「主は怒りを以て師を興すべからず」(孫子・火攻4)

2019-11-20 17:41:39 | 日記
「主は怒りを以て師を興すべからず」(孫子・火攻4)
(しゅはいかりをもってしをおこすべからず)

(本文)主は怒りを以て師を興すべからず、将は慍りを以て戦いを致すべからず。
(解釈)君主は一時的な怒りにまかせて軍隊を動員してはならず、将軍も心中の憤りから戦争をしてはいけません。
(参照)「孫子~勝つために何をなすべきか」谷沢永一・渡部昇一著、PHP研究所

 1930年のロンドン海軍軍縮会議は、列強海軍の補助艦保有量の制限を主たる目的として開催され、この会議において日本の補助艦全体の保有率が対米比6.975とされた。日本はこの条約を批准したが、海軍内の「艦隊派」のほか一部マスコミや野党から不満と怒りが噴出し、やがて「統帥権干犯問題」へと発展していく。その後の日本は、国際連盟脱退→三国同盟→日米開戦と突き進んで敗戦を迎える。彼我の国力の差や国際情勢を冷静に分析・判断することなく、国民の不満や怒りをベースとした政策を推し進めた結果であることは多くの歴史的事実が証明するところだ。
 それでは、我が国の拉致被害者救出活動はどうかというと、北朝鮮が国家ぐるみで日本人を拉致した事実に対し、被害者家族会や救う会などの支援団体だけでなく多くの国民の間で怒りの声が沸き上がり、その怒りをベースとして今日まで救出活動と対北政策が続いている。北朝鮮への制裁強化や朝鮮学校補助金停止といった家族会・救う会等の活動方針のベースにあるものは、北朝鮮に対する強い怒りだと私は捉えている。
 北朝鮮に対する嫌悪や不信は国民の共有するところであり、一向に進展しない拉致被害者救出について家族会等が怒りを発することは当然のことであると思う。しかし、その怒りをベースとして北朝鮮との外交交渉を政府が行うことには反対したい。北朝鮮の核・ミサイル・拉致について、求められるのは冷静な情勢分析と的確な対応だ。確実な事実を一つでも多く集め、それに基づいて総合的な外交施策を実現し、国民全体の安全を守ることが政府に課せられた責務だと思う。
 具体的には、何人が北朝鮮に拉致され、その内誰が生きていて、誰が病んでいて、誰が死んだのか、その正確な情報を把握することこそが急務と判断する。それには、ストックホルム合意に基づく日朝交渉の前進こそが最も現実的で効果的である。感情的になって対北朝鮮外交を進めてはならない、一時の感情で行動を起こすなというこの「孫子」の教えによらずとも、我が国の昭和の歴史がそのことを如実に教えているではないか。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿