「彼らの名誉を守りたい」

「彼らの名誉を守りたい」
　下の写真は、「平壌市龍山墓地日本人埋葬者名簿」といい、戦後間もない時期に北朝鮮において自分の望まない不本意な境遇に陥り、日本に帰ることも叶わず、この地に埋葬された日本人の名簿である。
　小さな文字で埋葬者一人一人の名前が記されており、この関係者が戦後に何度か墓参に訪れている。この地図を所有する平壌龍山会の会長さんに許可を得てカメラに収めたが、会長さんの話では墓地はこの場所から移転したという。ストックホルム合意に基づき、日朝両国が責任をもって解決すべき遺骨・墓地問題の一端がここにある。
　これら埋葬者の中には満州に攻め込んできたソ連軍から逃げるようにして北朝鮮まで避難した人も含まれており、彼らを含め北朝鮮に眠る埋葬者は戦争の犠牲者である。無事に日本へ帰ることが出来ていたなら、幸せな人生を歩めた人も多かったに違いない。小さな文字で書かれた埋葬者には、短いながらも人生の足跡があり、彼らが歩んだ足跡の上に現代の我々は立っている。
　名簿の中の誰一人として私の縁者となる者はいないが、私は彼らの名誉を守りたい。「あなたの人生は決して無駄な人生ではなかった」と、彼らを労いたい。