『中公新書448 詭弁論理学』
野崎昭弘・著/中央公論社1980年
本書は……。下「」引用。
「なまじ「議論上手」になって人に嫌われるよりは、天分を生かして「話上手」になるか、あるいは「勝てなくてもよい」という前提で議論を楽しむ「ゆとり」を身につけたほうが、はるかに好ましいのではないかと思う。この「ゆとり」を望む人々(私自身を含む)のために、本書は生まれた。-略-ただ強弁をふるうための「ハウツーもの」として利用されないことだけは、著者として希望している。-略-
一九七六年九月二十五日
野崎昭弘」
--宝石屋での貴婦人。1万ドルの指輪を昨日買った。
だが、気に入らないので今日2万ドルの指輪とかえてくれという。下「」引用。
「きのう私はあなたに一万ドルを払ったでしょう? 今日またこうして、一万ドルの値打ちの指輪を返したのだから、あわせて二万ドルになるじゃないの」
これでいいのだろうか?
模範解答?……。下「」引用。
「奥様、でも私どもは、昨日奥様に一万ドルの指輪をさしてあげております。今日また二万ドルの指輪をさしあげますと、あわせて三万ドルになってしまいます」
「強弁術の誕生」下「」引用。
「最初に強弁をふるったのはやはり昔の権力者であろう。「泣く子と地頭には勝てぬ」の言葉どおり、権力者が何かをいいだしが最後、無理が通って道理がひっこむのが相場であった。-略-」
最近のお坊ちゃま政治家に多いですよね。
小児型強弁……。下「」引用。
「小児病 これまでとりあげてきた、寅さんや子供がふりまわす強弁は、相手がいうことを耳に入れず、ひたすら「自分がいいたいことをいいつのる」という点に特徴がある。これを、小児型の強弁と呼ぶことにしよう。-略-」
小児病の原因……。下「」引用。
「小児型の強弁の厄介なところは「本人がそのつもりでない」というまさにその点である。極端ないい方をすれば、「妥協したくない」から妥協しないのではなくて、そもそも「妥協ということを知らない」のである。だからこそ、自分が本日只今感じていることや決心したことを率直に述べるだけで、そのこと自体はよいとしても、他の人のいうことが少しも耳に入らず、よほど露骨に反対されない限り、自分の考えを繰り返すのである。-略-」
--二分法。ペテン師といわれる元総理の得意とする手法ですね。
強弁術「現代の魔女狩り」 下「」引用。
「強権をふるっての、あるいは「悪魔のイメージ」を利用した二分法は、今では各所で使われている。「あいつはアカだから気をつけろ」とか、「保守反動」「曲学阿世」「裏切り者」「××主義者」などというレッテルによって、相手の発言(あるいはその効果)を封じこめようとする作戦は、そういう言葉に悪いイメージをもっている人たちに対して、非常に有効に働くからである。こうして、「どこがどう悪いのか、どの点は認めなければならないか」という細かい議論は吹きとばされて、「根本的にまちがっている」という結論が強調される。」
ネットでも多いですね。「反日」とか、日本人を外国人のように決めつける……。幼児的な人たち……。
「詭弁術の誕生」下「」引用。
「強弁と同じように、詭弁の誕生もまた、歴史の彼方にかすんでいて、「いつ、誰が創始した」というようなことを、確定できるわけがない。しかし詭弁を飛躍的に発達させた時期として、まずギリシャ時代を上げるのはさしつかえないであろう。ターレス、ソクラテス、アリストテレスなど、言葉を武器として真理を追究する哲学者たちが誕生したのはこの時代であるし、その流れの中に、弁論に長けた「ソフィスト」(知者、教師、詭弁家)が輩出したのもこの時代であった。」
index