死神の知恵 眠りにおちかけていた。 睡魔というものは、 そのまま落ちれば気持のいいものだが、 誰かが声をかけてきた。 「なあー」 と低い声であった。 どうして俺の部屋に人がいるんだ。 俺は不安になり、意識をとりもどそうと努力する。 「なっ、なんだ、貴様!」 「あはは……。俺か、俺は死神だ」 「死神、うひゃー……」 男は顔面蒼白になった。 「あはは……。怖がることはない。 おまえほど悪い奴は そう簡単には死なないさ。あはは……」 「それならよかった」 男は胸をなでおろした。 「ところでなあー。 俺はおまえに頼みがあってきたんだ」 「頼み、この俺に」 「あー、おまえしかいないのだ。 おまえみたいに悪いやつは、 地獄でさえ見たことがないよ」 「えっ、そんな私は悪いことなど はしていませんよ」 「わかっているさ。 おまえが法律とやらに ひっかかるような悪いことをしていないことを」 「そうですか。悪い噂でもたったら……」 「さすがにぬけめがないね。あはは……」 「それでは明日も早いので、また今度きて話してください」 「もう出勤しなくってもいい」 「どうしてですか」 「これをやろう」 死神は棒を手渡した。 「この棒がどうしたのですか」 「人並みに生活できる棒だ」 「そりゃ、ありがたいですね」 男はすぐに棒を奪い取った。 「ところで、頼みとは、私と代わってほしいのです」 「私って、私が死神になるのですか」 「そうだ。もうおまえは出勤しなくてもいい。 だから、私と代わってくれたまえ。 きみなら、私のように悩むことはない」 男は死神の仕事をした。 あの世に死人を送るだけの業務である。 その棒は一人送ると、 1回願いをかなえてくれるのである。 朝から酒を飲んでいた。 男がつとめていたお店では、 男のことを噂していた。 「死神になったんだそうですぜ」 「あいつにはぴったりかもなあー。 人情がないんだからなあー」 一人、あの世に送れば、一つ願いがかなう。 男はうれしくって仕方がなかったっ。 葬式は何てステキなことだろうと男は思った。 たくさんの人が涙を流しているにも関わらず。 自分の願いをかなえるために、 たくさんの人を殺していった。 そして村には誰もいなくなった。 だが、ノルマがあった。 三か月に一コは魂を送ることだった。 死神がやってきた。 「契約を守ってもらわないと困る」 「でも、働きすぎで、 魂ってのがないんでさあー」 「いや、一コある。それはオマエの魂だ。 地獄で特等席が待っているぞ」 「でも、俺も死神だ」 「いや、おまえは死神の代理でしかないのだ。 死神はこの私だ。さあ、地獄へ行くがいい!」 死神「この話からは教訓というのを 導きだすことができる。 いいかい? 他人のことを思わなければ、 多くの富をえることできる。 しかし、しょせんは地獄の産物ってことさ」 永遠に欲の虜であり続けねばならぬのだ……。 下、1日1回クリックお願いいたします。 ![]() ありがとうございます。 もくじ[メルへん] |
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天国と地獄には同じような長い箸があるって話(・_・)
人の心が幸不幸を決めるのよね・・・。
人の心が幸不幸を決めるんですよ。
たしかに……。
「多幸症」という病気の症状もあるんです。
幸せなのいいとは限らないみたいですよ。
多幸症 : 根拠のない内容の乏しい空虚な上機嫌。
http://www.akashi-mc.jp/chihou.htm
やはり常識もあってもらいたいものですね。