ベルリン国立バレエの「ラ・バヤデール」を見た。(2005年6月28日)
いやー、これ、改めて見ると突っ込みどころ満載な作品ですな。
とりあえず、副題は~托鉢僧は見ていた!~とでもしてみようか。
もとは19世紀ロシアのマリウス・プティパ振り付け、ミンクス作曲の古典バレエである。
今回の上演はマラーホフ演出版となっていた。
おおざっぱにいうと、舞台はインド、寺院の舞姫(バヤデール)とイケメン戦士と太守(ラジャ)の娘の三角関係の話である。
イケメン戦士は太守の娘という許婚がありながら、すっかりそのことを忘れてて、舞姫と恋仲になる。いざ、ラジャが結婚話を持ち出すと激しく動揺してなんとも優柔不断な有様になる。
舞姫に横恋慕する僧正の告げ口もあって、太守父娘はライバルの舞姫を殺そうと画策する。
で、舞姫は殺されちゃって、戦士の妄想の世界に出てきて(これを「影の王国」という)、ずるずる結婚式までいった戦士はこの期に及んで舞姫の幻影を見たりして、最後には天罰が下ってみんな瓦礫の下、舞姫と戦士の永遠の愛が昇天。
…というエキゾチックにしてスペクタクル、しかもバレエにありがちなしょーもない話なのでる。
で、ですね、この「インド」というのがすこぶる怪しい。
寺院で火を拝んでいる > 拝火教? 一歩譲って密教?
お寺に舞姫がいる > アンコールワットと思えばいいのか?
御本尊は金の仏像だ…。 > ヴィシュヌとかじゃなくて…
襟元に両手のひらを当てるという変な気をつけポーズである。
片手を目にかざし、片手を後ろにひくという変な挨拶ポーズである。
…いったいどこの文化圏だ?
というわけで、これは「インド」というラベルはついているももの、まったく「ファンタジー世界のエキゾチックな国」なのであった。
戦士ソロルは舞姫ニキヤとの密会の手引きを托鉢僧にたのむ。
で、火を拝む儀式の最中、ニキヤの美貌にくらくらした大僧正が言い寄って拒絶される。…それを托鉢僧は見ていた。
ソロルとニキヤが密会しているところを大僧正に目撃されてしまう。そうとは知らずに愛の誓いとかやっている二人。見守っていた托鉢僧は大僧正に見られたことに気づき…。
(中略)
ニキヤを失って後悔自責悶々とするソロルに托鉢僧はアヘンを薦める。
え、待てよ、いいのか、そんなもん勧めて!?
そのおかげでソロルは「影の王国」でニキヤの幻影と逢いまみえるのである。
というわけで托鉢僧大活躍である。
この托鉢僧を「ニーベルングの指環」でミーメをやっていたディニュー・タマツラカルが演じている。
ミーメの時も芸達者振りを披露していたが、托鉢僧でも鋭く妙な動き(そーいう振り付けなんです)を切れ味良くこなしている。
この日のソロルはウラジーミール・マラーホフであった。ジャンプの切れ味は、ベルリンの切れる若者みちゃうといまいち落ちたかなという気もするが、得意技の着地無音ジャンプは健在であった。
で、世間が騒ぐほどの華はrukkiaには感じられなかったが、なによりこの人、リフトがうまいよね。ヒロインたちをふんわりと持ち上げる。
このへんがよく客演を頼まれる一因ではないかとも思うぞ。
ニキヤは客演のディアナ・ヴィシニョーワ(マリンスキー劇場)。さすが世界のプリマである。特に言うこと無し。
太守の娘は指環で怖い奥さん・女神フリッカをやっていたベアトリス・クノップ。女同士の嫉妬争いの場面が秀逸でした(^^;
で、期待の黄金の仏像であるが…、ライナー・クレンシュテッター、ちょっと細いかなぁ。やっぱ切れ味よかったけど、仏像にしてはセクシーでした(^^;(観音じゃないのよ、仏像なのよ…)
マヌーの踊りという頭にツボをのっけたまま踊るやつをやっている人がいまいちだった。この人、指環でフライアをやっる時もなんかいまいちと思ったのだけど、やっぱいまいちなのかな(ランクは準ソリスト)。
ツボ踊りは一緒に踊っていた子供(日本人のエキストラ?)に食われてた気がするぞ。あの女の子たち、うまかった(キャスト表には名前が載ってません)。
あと、「影の王国」の場面でベルリンの女性ソリスト3人が揃い踏みで踊るんだけど、指環でジーグリンデをやっていたコリーヌ・ヴェルデイユより他の二人のほうがうまかった気がする。他の二人は指環では単なるヴァルキューレだったのだ。
コリーヌさんは没個性的なやつより演劇性の必要とされる役のが得意なのかも。
マラーホフの演出というのは…、実はあまりrukkiaの好みでなかった。
マイムを多用しているのと、踊りがいまいち音楽的でないのだ。
なにせ、rukkiaのバレエのデフォルトはユーリ・グリゴローヴィッチのボリショイ・バレエである。グリゴローヴィッチの演出はマイムを廃して全て踊りで語らせるというものなのだ。
古典に忠実な英国ロイヤルとかはよくマイムをやってるけど、時流としてはマイムは縮小傾向にあったんじゃないのかなぁ。
あとね、男性の衣装がね、かっこわるいの。女性のほうは結構いいんだけど…。
バレエ作品としてはいまいちノレなかったけど、いろいろ突っ込んで面白かったので、○。
それと、今のベルリン国立バレエはキャラクターダンサーたちがとてもいいから、他の演目ももっと観たいなー。
また近々来日してくれないかな。
いやー、これ、改めて見ると突っ込みどころ満載な作品ですな。
とりあえず、副題は~托鉢僧は見ていた!~とでもしてみようか。
もとは19世紀ロシアのマリウス・プティパ振り付け、ミンクス作曲の古典バレエである。
今回の上演はマラーホフ演出版となっていた。
おおざっぱにいうと、舞台はインド、寺院の舞姫(バヤデール)とイケメン戦士と太守(ラジャ)の娘の三角関係の話である。
イケメン戦士は太守の娘という許婚がありながら、すっかりそのことを忘れてて、舞姫と恋仲になる。いざ、ラジャが結婚話を持ち出すと激しく動揺してなんとも優柔不断な有様になる。
舞姫に横恋慕する僧正の告げ口もあって、太守父娘はライバルの舞姫を殺そうと画策する。
で、舞姫は殺されちゃって、戦士の妄想の世界に出てきて(これを「影の王国」という)、ずるずる結婚式までいった戦士はこの期に及んで舞姫の幻影を見たりして、最後には天罰が下ってみんな瓦礫の下、舞姫と戦士の永遠の愛が昇天。
…というエキゾチックにしてスペクタクル、しかもバレエにありがちなしょーもない話なのでる。
で、ですね、この「インド」というのがすこぶる怪しい。
寺院で火を拝んでいる > 拝火教? 一歩譲って密教?
お寺に舞姫がいる > アンコールワットと思えばいいのか?
御本尊は金の仏像だ…。 > ヴィシュヌとかじゃなくて…
襟元に両手のひらを当てるという変な気をつけポーズである。
片手を目にかざし、片手を後ろにひくという変な挨拶ポーズである。
…いったいどこの文化圏だ?
というわけで、これは「インド」というラベルはついているももの、まったく「ファンタジー世界のエキゾチックな国」なのであった。
戦士ソロルは舞姫ニキヤとの密会の手引きを托鉢僧にたのむ。
で、火を拝む儀式の最中、ニキヤの美貌にくらくらした大僧正が言い寄って拒絶される。…それを托鉢僧は見ていた。
ソロルとニキヤが密会しているところを大僧正に目撃されてしまう。そうとは知らずに愛の誓いとかやっている二人。見守っていた托鉢僧は大僧正に見られたことに気づき…。
(中略)
ニキヤを失って後悔自責悶々とするソロルに托鉢僧はアヘンを薦める。
え、待てよ、いいのか、そんなもん勧めて!?
そのおかげでソロルは「影の王国」でニキヤの幻影と逢いまみえるのである。
というわけで托鉢僧大活躍である。
この托鉢僧を「ニーベルングの指環」でミーメをやっていたディニュー・タマツラカルが演じている。
ミーメの時も芸達者振りを披露していたが、托鉢僧でも鋭く妙な動き(そーいう振り付けなんです)を切れ味良くこなしている。
この日のソロルはウラジーミール・マラーホフであった。ジャンプの切れ味は、ベルリンの切れる若者みちゃうといまいち落ちたかなという気もするが、得意技の着地無音ジャンプは健在であった。
で、世間が騒ぐほどの華はrukkiaには感じられなかったが、なによりこの人、リフトがうまいよね。ヒロインたちをふんわりと持ち上げる。
このへんがよく客演を頼まれる一因ではないかとも思うぞ。
ニキヤは客演のディアナ・ヴィシニョーワ(マリンスキー劇場)。さすが世界のプリマである。特に言うこと無し。
太守の娘は指環で怖い奥さん・女神フリッカをやっていたベアトリス・クノップ。女同士の嫉妬争いの場面が秀逸でした(^^;
で、期待の黄金の仏像であるが…、ライナー・クレンシュテッター、ちょっと細いかなぁ。やっぱ切れ味よかったけど、仏像にしてはセクシーでした(^^;(観音じゃないのよ、仏像なのよ…)
マヌーの踊りという頭にツボをのっけたまま踊るやつをやっている人がいまいちだった。この人、指環でフライアをやっる時もなんかいまいちと思ったのだけど、やっぱいまいちなのかな(ランクは準ソリスト)。
ツボ踊りは一緒に踊っていた子供(日本人のエキストラ?)に食われてた気がするぞ。あの女の子たち、うまかった(キャスト表には名前が載ってません)。
あと、「影の王国」の場面でベルリンの女性ソリスト3人が揃い踏みで踊るんだけど、指環でジーグリンデをやっていたコリーヌ・ヴェルデイユより他の二人のほうがうまかった気がする。他の二人は指環では単なるヴァルキューレだったのだ。
コリーヌさんは没個性的なやつより演劇性の必要とされる役のが得意なのかも。
マラーホフの演出というのは…、実はあまりrukkiaの好みでなかった。
マイムを多用しているのと、踊りがいまいち音楽的でないのだ。
なにせ、rukkiaのバレエのデフォルトはユーリ・グリゴローヴィッチのボリショイ・バレエである。グリゴローヴィッチの演出はマイムを廃して全て踊りで語らせるというものなのだ。
古典に忠実な英国ロイヤルとかはよくマイムをやってるけど、時流としてはマイムは縮小傾向にあったんじゃないのかなぁ。
あとね、男性の衣装がね、かっこわるいの。女性のほうは結構いいんだけど…。
バレエ作品としてはいまいちノレなかったけど、いろいろ突っ込んで面白かったので、○。
それと、今のベルリン国立バレエはキャラクターダンサーたちがとてもいいから、他の演目ももっと観たいなー。
また近々来日してくれないかな。