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萌映画

映画評と映画与太話

バレエ「ラ・バヤデール」(2005)

2005-06-29 | 舞台
ベルリン国立バレエの「ラ・バヤデール」を見た。(2005年6月28日)
いやー、これ、改めて見ると突っ込みどころ満載な作品ですな。
とりあえず、副題は~托鉢僧は見ていた!~とでもしてみようか。

もとは19世紀ロシアのマリウス・プティパ振り付け、ミンクス作曲の古典バレエである。
今回の上演はマラーホフ演出版となっていた。
おおざっぱにいうと、舞台はインド、寺院の舞姫(バヤデール)とイケメン戦士と太守(ラジャ)の娘の三角関係の話である。
イケメン戦士は太守の娘という許婚がありながら、すっかりそのことを忘れてて、舞姫と恋仲になる。いざ、ラジャが結婚話を持ち出すと激しく動揺してなんとも優柔不断な有様になる。
舞姫に横恋慕する僧正の告げ口もあって、太守父娘はライバルの舞姫を殺そうと画策する。
で、舞姫は殺されちゃって、戦士の妄想の世界に出てきて(これを「影の王国」という)、ずるずる結婚式までいった戦士はこの期に及んで舞姫の幻影を見たりして、最後には天罰が下ってみんな瓦礫の下、舞姫と戦士の永遠の愛が昇天。
…というエキゾチックにしてスペクタクル、しかもバレエにありがちなしょーもない話なのでる。

で、ですね、この「インド」というのがすこぶる怪しい。
寺院で火を拝んでいる > 拝火教? 一歩譲って密教?
お寺に舞姫がいる > アンコールワットと思えばいいのか?
御本尊は金の仏像だ…。 > ヴィシュヌとかじゃなくて…
襟元に両手のひらを当てるという変な気をつけポーズである。
片手を目にかざし、片手を後ろにひくという変な挨拶ポーズである。
…いったいどこの文化圏だ?
というわけで、これは「インド」というラベルはついているももの、まったく「ファンタジー世界のエキゾチックな国」なのであった。

戦士ソロルは舞姫ニキヤとの密会の手引きを托鉢僧にたのむ。
で、火を拝む儀式の最中、ニキヤの美貌にくらくらした大僧正が言い寄って拒絶される。…それを托鉢僧は見ていた。
ソロルとニキヤが密会しているところを大僧正に目撃されてしまう。そうとは知らずに愛の誓いとかやっている二人。見守っていた托鉢僧は大僧正に見られたことに気づき…。
(中略)
ニキヤを失って後悔自責悶々とするソロルに托鉢僧はアヘンを薦める。
え、待てよ、いいのか、そんなもん勧めて!?
そのおかげでソロルは「影の王国」でニキヤの幻影と逢いまみえるのである。
というわけで托鉢僧大活躍である。

この托鉢僧を「ニーベルングの指環」でミーメをやっていたディニュー・タマツラカルが演じている。
ミーメの時も芸達者振りを披露していたが、托鉢僧でも鋭く妙な動き(そーいう振り付けなんです)を切れ味良くこなしている。

この日のソロルはウラジーミール・マラーホフであった。ジャンプの切れ味は、ベルリンの切れる若者みちゃうといまいち落ちたかなという気もするが、得意技の着地無音ジャンプは健在であった。
で、世間が騒ぐほどの華はrukkiaには感じられなかったが、なによりこの人、リフトがうまいよね。ヒロインたちをふんわりと持ち上げる。
このへんがよく客演を頼まれる一因ではないかとも思うぞ。

ニキヤは客演のディアナ・ヴィシニョーワ(マリンスキー劇場)。さすが世界のプリマである。特に言うこと無し。
太守の娘は指環で怖い奥さん・女神フリッカをやっていたベアトリス・クノップ。女同士の嫉妬争いの場面が秀逸でした(^^;
で、期待の黄金の仏像であるが…、ライナー・クレンシュテッター、ちょっと細いかなぁ。やっぱ切れ味よかったけど、仏像にしてはセクシーでした(^^;(観音じゃないのよ、仏像なのよ…)

マヌーの踊りという頭にツボをのっけたまま踊るやつをやっている人がいまいちだった。この人、指環でフライアをやっる時もなんかいまいちと思ったのだけど、やっぱいまいちなのかな(ランクは準ソリスト)。
ツボ踊りは一緒に踊っていた子供(日本人のエキストラ?)に食われてた気がするぞ。あの女の子たち、うまかった(キャスト表には名前が載ってません)。

あと、「影の王国」の場面でベルリンの女性ソリスト3人が揃い踏みで踊るんだけど、指環でジーグリンデをやっていたコリーヌ・ヴェルデイユより他の二人のほうがうまかった気がする。他の二人は指環では単なるヴァルキューレだったのだ。
コリーヌさんは没個性的なやつより演劇性の必要とされる役のが得意なのかも。

マラーホフの演出というのは…、実はあまりrukkiaの好みでなかった。
マイムを多用しているのと、踊りがいまいち音楽的でないのだ。
なにせ、rukkiaのバレエのデフォルトはユーリ・グリゴローヴィッチのボリショイ・バレエである。グリゴローヴィッチの演出はマイムを廃して全て踊りで語らせるというものなのだ。
古典に忠実な英国ロイヤルとかはよくマイムをやってるけど、時流としてはマイムは縮小傾向にあったんじゃないのかなぁ。
あとね、男性の衣装がね、かっこわるいの。女性のほうは結構いいんだけど…。

バレエ作品としてはいまいちノレなかったけど、いろいろ突っ込んで面白かったので、○。
それと、今のベルリン国立バレエはキャラクターダンサーたちがとてもいいから、他の演目ももっと観たいなー。
また近々来日してくれないかな。

バレエ・ニーベルングの指環(2005)

2005-06-28 | 舞台
ベルリン国立バレエの「ニーベルングの指環」を見た(2005年6月25日)。
キタ~っ!って感じ。なかなかよかった。
今回の公演は東京のみ3日間で、25日はどちらかというとセカンド・キャストであった。
それでもかなり質が高かったので、他のキャストでも見てみたかったなー。

「ニーベルングの指環 ~指環をめぐる物語~」(Un spectacle autour du Ring)は1990年にベジャール・バレエ・ローザンヌによってベルリン・ドイツ・オペラで初演されている。で、同年、ベジャール・バレエ・ローザンヌの日本公演でも上演され、rukkiaはそれを見たのだった。
えらく気に入って、ビデオになるのを待っていたのだが一向にでない。確か会場ではカメラを見かけたのだが、NHKの舞台中継すらない。待ち続けること15年、その間、ベジャール・バレエはメンバーも規模も変わって今では指環の上演は無理になってしまっている。
そこへ、マラーホフ率いるベルリン国立バレエが上演するというではないか!
これはもう見るしかっ!
…と力んだのだが、間が悪くて1日しか見に行かれなかった。(1990年は4日間のうち2回見ている)
でもまあ、よしとしよう。

内容は、ワーグナーの楽劇を下敷きに、ベジャール流の解釈とアレンジを加えた演劇風味バレエである。
2幕で4時間、休憩を入れると4時間半の長丁場だ。
当初からベルリン・ドイツ・オペラとの共同制作だったので、今回再び日の目をみることになったのだろう。
音楽はワグナーの楽劇(テープ)と、ピアノの生演奏。このピアノのエリザベット・クーパーは舞台の上で演奏しなが芝居に加わりながらの大活躍。彼女と弁者(狂言回し)のミカエル・ドナールは初演以来変わらぬメンバーである。

で、やはり15年前のベジャール・バレエが染みついているので、鑑賞しながらもどうしても前のと今回のとを比べてしまう自分がいた。
もともと、ベジャールの作品はダンサーに触発されてできるっぽいところがある。指環も例にもれず、このダンサーがいたからこの登場人物ってのが結構ある。
きわめつけはローゲ、これはもうジル・ロマン以外の何者でもない。今回はこれをウラジミール・マラーホフ御大がやるのであるが、25日はライナー・クレンシュテッターという人だった。
うまい、切れ味がいい、ニュアンスもいい!
でも、どうしても「背の高いジル・ロマン」に見えてしまって、落ち着かないところがあるのだ。
…ライナーくんの将来に期待しよう。キャラクターもできるいい味の王子になってくれるに違いない。
経験した役を見ると、「バヤデール」の黄金の仏像とか「マノン」の乞食の頭とか、キャラクタテールが多いみたいだけど、ハンサムだし♪

実はrukkiaはベルリン国立バレエ(前身のベルリン国立歌劇場やベルリン・ドイツ・オペラなども)を見るのは初めてなのだ。どんなもんだろうと思ってたのだが、いやはや、さすが文化の国の国立バレエ団である。ダンサーの質はむちゃむちゃ高い。そしてなぜかみんな若い(^^;
プリンシパルにロシア系の人が多いのはマラーホフがお頭(キーロフ・バレエ出身)ということもあるのかもしれないが、ソリストはドイツ人の若者ががんばっているし、トルコ系の人もいる。なかなかインターナショナルな感じだ。
そして…、男性舞踊手にちびっこがいない(^^;
ベジャールバレエなんかだとちびっこい人からいわゆるダンス・ノーブルまで、容姿ではなく個性で選ばれているわけだが、国立バレエ団はそーいうわけにはいかないのだろう。
指環には「少年ジークフリート」と「青年ジークフリート」が出てくるのだが、ベジャール・バレエでは少年をちいこいクサビエ・フェルラがやっていて、青年役の金髪・長身のヨラン・スヴォルベリにすり替わったとき「おぉ!!」というオドロキがあったものだが、今回は「あれ?」って感じだった。
でも、少年役のマリアン・ワルターがむちゃむちゃかわいかった。
体格も立派だし、このまま青年ジークフリートをやってもらいたかったぜー。
マリアンくんはこの日、フロー(平和の神)役でも出ていた。フローで出てきた時は「女の子か?」と思ったりしちゃったくらいたおやかだったのだ…。
厚くないのにしっかり筋肉がついた胸板が素敵でした < どこみてんですか


他にも語りたいことはいろいろあるのだが、一言づつ
ヴォーダン(ヴィスラ・デュデク)、かぶり物をとるまではいまいち威厳が足りなくてイケマセンでした。とてからはグー。
フリッカ(ベアトリス・クノップ)、奥さん怒ると怖い! < ステキ…
ブリュンヒルデ’(ポリーナ・セミオノワ)、ヴァルキューレの時はいまいち、ベジャール流振り付けに体が馴染んでなかったけど、神聖剥奪されてからはよかった。やはりクラシックの人なんだろうな。
ジークリンデ(コリーヌ・ヴェルデイユ)、薄幸の女性を見事に演じてたと思う。この人まだソリストなのにすごい。
山海塾みたいなエルダ(アリアンヌ・エルネスティ)はベジャール・バレエのときの人(キーラ・カルケビッチ)のが人間ばなれしててよかったな…。
フンディング(レオナルド・ヤコヴィーナ)、敵役なのにかっこいいんですけど。

途中で、アルベリッヒとハーゲンとジークムントの区別がつかなくなりました。 > みんなワイルド系

脚本と演出でしめるというより、出演者の個性と技量でひっぱっていく感じの舞台なので、全体としてはちょっと消化不良のところもあったような気がする。
しかし、また見たいか問われれば、二万円払ってもみにきますよ、はい。
…でも、前の方の席限定ね。やはりイケメン鑑賞は肉眼で(^^;



スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」2005

2005-04-10 | 舞台
初演当初(1986年)から見に行きたいなと思いつつ今まで機会がなかった作品である。
それがキャストが若返っての再演。しかも、eプラスでディスカウントでチケットが出ていたので思わず…。

私は古事記の倭建命が好きだ。日本書紀の日本武尊はいまいち…。
で、このスーパー歌舞伎は古事記のほうをベースにしている。しかも、わりと忠実に話をなぞっているし、古事記に出てくるセリフもそのまま使われいたりして、倭建命ファン(?)としてはうれしい限りだ。
まあ、3幕の舞台なので、古事記のすべてを踏襲しているわけではない。いってみれば、ピーター・ジャクソンの「ロード・オブ・ザ・リング」に近い感覚で原作に忠実、ってところだ。
歌舞伎は何度か小品を見に行ったことがあるのだが、いずれもいまいちおもしろくなかった。これは…歌舞伎風味の大衆演劇といった感じにできている。見ててなんとなく思ったのだが、西洋人にとってのミュージカルってこんな感じなのかなと…。

幕が上がるといきなり舞台がぐるぐる回ってせり上がりである。セリフもいくぶん、説明調である。いかにも一般ぴーぷる向けという感じ。でもそこはさすが歌舞伎役者たちである。声は通るし、所作もキレイだ。
が、しかし、なんかなー、主人公に華がないのだ。ただの泣き虫の甘えん坊なのだ、
悪役のが断然、イキイキしている。
熊襲タケル兄弟なんかサイコー。衣装が蟹と蜘蛛だし(^^;

うーむ。と思っていたら2幕で吉備のタケヒコが出てきてびっくり、歌舞伎役者なんて誰が出てもおんなじ(萌えネタに関しては(^^;)なんて思ってたのにこっちの人のがかっこいいじゃん!
今回は市川猿之助が健康を害していて出ておらず、主人公は市川右近と市川段治郎のダブルキャストなのだ。片方がヤマトタケルの時、もう片方はタケヒコを演じている。私が見た回はヤマトタケルが右近、タケヒコが段治郎であった。
段治郎のが背が高くて立ち姿がかっこよく、声もいわゆるヒーロー声なのだ > 何がいわゆるなんだか…
体形的には右近のほうが猿之助に似ているのかもしれないけど…。
いやーん、段治郎のヤマトタケルが見たいじゃんかー。

女形もびっくり。橘の兄媛は、この人だけ女優さんなのかなと思っていたら市川笑也。おおおおおとこじゃん!
何で女の人だと思ったかというと、声が全然普通なのだ。あの女形のひっくり返ったわざとらしい声ではなくて、普通の声なのだ。おやおや…。
おそろしーね、侮れん、女形!

初演はどうだったのか知らないが、京劇の人が6人来ている。劇中、ものすごいバック転とか前転とかアクロバチックに飛び回るのはこの人たちらしい。ジャパン・アクション・クラブも真っ青って感じ。獅子舞みたいな猪もそうだ。すごいね~中国!

初演の時に大いに話題になった宙づりは最後の最後にちょーっとだけ。ふーん、もっとがんがん飛ぶのかと思った、ドリフみたいに…。

そういえば衣装がすごかったな。先のNHKの「大化の改新」の山背大兄皇子の笑止千万なお衣装は、ほんとうはこうしたかったんじゃないかな、予算がなかったのかな、なんて思ったり…。
音楽は加藤和彦?えー? あのフォークの加藤和彦?
調べてみたらこの人、映画の音楽とかも結構やってるのねん。
この舞台は音楽はほとんど録音みたいだ。大河ドラマのテーマ曲みたいなのが、劇中何度も流れた。

…と相変わらず視点が奸なのだが、一応お涙頂戴劇に対してポケットティッシュまるまる1パック消費したから許せ。

ベジャールはアレキサンダーが好き!

2005-03-08 | 舞台
急に思い出した。
そういえば、モーリス・ベジャールはアレキサンダー好きだった!

いやね、彼の作品に時々出てくるんですよ、「アレキサンダー」。
ちょい役なんだけど、あとでベジャールの秘蔵っ子(女性ならミューズというべきところ、男性はなんと言えばいいのだ?)になる人が踊ってたりするのだ。
ヨラン・スヴォルベリとかね。 < ぴちぴち・長身・金髪・骨太だった!…そうか、この刷り込みが(^^;
って、調べてたら1987年に「アレキサンダー」って作品も作ってるね…。

その、なんですかね、アレキサンダーはやはりその道の人を刺激するんですかね。

2005年はベルリン国立バレエの指環

2005-01-03 | 舞台
ベルリン国立バレエの「ニーベルングの指環」のチラシが届いた。
…よかった、マラーホフはローゲだよ。
しかし、ジークフリートを誰がやるのかは載ってないな。
ハーゲンとかジグムンド役ってのは載っているのだが…。

いやね、十数年前にベジャール・バレエでやった時のジークフリート(ヨラン・スヴォルベリ)はすげぇ、はまり役だったのだ。で、金髪長身といえば…ウラジミール・マラーホフもそうなんだが、彼だとイヤかな、なんて思っていたのだ。
ローゲはジル・ロマンのやった役だ。私が見たジル・ロマンの役の中で一番にぴったりこんで、彼以外考えられない、なんて思ってたんだが、まあ、芸達者なマラーホフなら彼なりのローゲができるんだろうな。

公演は6月、チケット発売は2月だ。
うーん、3回の公演中、2回は見に行っちゃうかな…。 > 中日はキャストが微妙に違うようなのだ…。