雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

気をつけ、礼。/重松 清

2008-09-27 | 小説
 先生のお話。

 オイラにとって先生とのいい思い出話といえば、中学ん時の小柄だがやたら巨乳が目立ったS先生との思い出くらいだろうか・・・いや、それはさておき、六つの短編からなる、『気をつけ、礼。』について、一編ずつ簡単な感想を書いてみよう。

『白髪のニール』・・・いきなりニール・ヤングネタできたか!(笑)そんなカンジでしたが、なんだか読んでいくうちにロックする熱さ、ロールする真っ直ぐさが身に沁みてきて、胸が熱くなってきたけれど、実際こんな先生はいないだろー、というほうが強く、尚且つ、ラストが痛いくらい爽やかで、これぞ小説の成せる業だなぁ・・・と思いました。

『ドロップスは神さまの涙』・・・いじめ問題は、やっぱ読んでて痛いですね。それも、主観がその子供の場合は、とくに・・・でも、その痛さを知りつつ、「自分のことは自分で決める」と言い放つ保健の先生に、奥深い優しさとあたたかさが見えるんです。だから、鼻の奥が「ツン」ってきちゃう。

『マティスのビンタ』・・・ここら辺から、徐々に「泣かせ」に入っていきますね。こういうあやふやな終わり方、結構好きなんです。

『にんじん』・・・コレ、今回の中でいちばん好きだなぁ。先生だって人間なんだ、っていう、当たり前のことを、これだけダイレクトに描ける人ってなかなかいないと思う。読んでる途中、本当に嫌になった。だからこそ、ラストの同窓会のシーンがたまらなく良かった。

『泣くな赤鬼』・・・また、「やっちまったなー」重松。いやはや、「泣くな」言われても、これで泣かない奴はいねーだろ?重松清「泣きの王道」ですな。

『気をつけ、礼。』・・・これは、作者の実話なのだろうか?要所要所はエッセイなどと合致する部分も見受けられるが、やはりそこはそれ、創り物のお話であろうけど、この本の最後を締めくくるイイお話でした。

 たぶん、全てのお話は教師(先生)にまつわるエトセトラなんだけど、その根幹には「許す」という人間にとってとても大切な行動を描き出しているんじゃないかなぁ、と思います。勉強とか、世間の要領いい渡り方とかではなく、人間として生きていく上で、いちばん大切なことを教えてくれる、そういう人が本当の「先生」なんだと思います。

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