2020@TOKYO

音楽、文学、映画、演劇、絵画、写真…、さまざまなアートシーンを駆けめぐるブログ。

ホルテンさんのはじめての冒険

2009-04-07 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  昨日は打ち合わせのついでに、文化村ル・シネマで上映されている「ホルテンさんのはじめての冒険」を見てきました。

  3時からの上映、私の整理番号は001でしたが、わざわざ一番乗りをするまでもなく、館内には10人程度の観客しかいませんでした。やはり、アカデミー作品などとは比べものにならない動員力です。

  ノルウェー鉄道の運転士・ホルテンさんは謹厳実直を地でゆく生活ぶりで、仲間からの信頼も厚い存在でした。勤続40年の大ベテランです。ところが、定年退職を迎えるその朝に、人生初の遅刻をやらかしてしまう!この日から、ホルテンさんの身の上にふりかかる摩訶不思議な出来事の数々が、氷雨と雪に凍るオスロとベルゲンの美しい景色を背景に淡々と描かれてゆきます。

  演技、演出、効果…すべてが抑制されていて、声高な叫びもなければ激情にまかせた慟哭もありません。しかし、たびたび映し出される雪の中を疾走する鉄道、クリスタルのように輝くオスロの夜景、氷雨に煙るベルゲンの町並など、映画でしか表現することのできない光景が、人生の楽しさ、美しさ、悲しさ、残酷さを表現してゆきます。

  『人生に、遅すぎることなんて何もない』登場人物によるこのセリフが、映画のテーマであるようにあちこちに書かれていますが、私にはむしろ、登場人物たちの老いの相貌の中に、どうにも立ち戻れない過ぎ去った時間への哀惜が彫りこまれているように見えて、胸がつまりました。

  監督・脚本・プロデューサーは、「キッチンストーリー」のベント・ハーメル。音響:モッテン・ソーラム、音響デザイン&ミックス:ペッテル・フラーデビー、音楽:コーダという具合に、音関係のスタッフが列挙されるほどの音に対する繊細なこだわりをもつ素晴らしい映画でした。



  

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