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リゲティ:ロンターノ、ピアノ協奏曲 都響定期演奏会(2012年1月17日)

2012-01-18 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

1月17日、一柳慧プロデュース「日本管弦楽の名曲とその源流ー13」を聴きました(東京文化会館大ホール)。プログラムは北爪道夫:地の風景、クラリネット協奏曲、リゲティ:ロンターノ、ピアノ協奏曲。演奏は三界秀実(クラリネット)、岡田博美(ピアノ)、高崎健(指揮)東京都交響楽団。

学生時代、最低月に2回は通っていた東京文化会館の5階席に40年ぶりに上がりました。観客も私と同じか少し上くらいの老人が多く、約半世紀の間、現代音楽を聴き続けている風情の聴衆が目立ちました。当夜の白眉は何と言っても2つ並んだリゲティの大作。

「ロンターノ」の何という美しい響き!混沌としたトーンクラスター(音塊)が、凪いだ湖面のように透き通った平面にユニゾンで止揚されていく瞬間には、思わず息をのみました。この半世紀の間に、日本のオーケストラが到達した高みを実感すると同時に、今日でもまったく色あせないリゲティの作品の力に驚きました。

「ピアノ協奏曲」の演奏が始まる前に、「今まで4回演奏したが、上手く出来たためしがない。もし、途中で演奏が止まってしまったら最初からやり直します。演奏が上手くいかなかったら、それは僕らのせいではなく、楽曲が難しすぎるのだ…」というコメントをユーモア交じりにアナウンスした指揮者の高関健。しかし、その言葉は杞憂に終わりました。ピアニスト岡田博美のずば抜けた技巧と感性、弦、管、打楽器群の確かな技術と音楽性、高崎健の正確無比な棒さばき、それらが、ともそれば必死に音符を追いかけるだけで終わりそうなこの曲の演奏を、見事な物語に昇華させてくれました。精密な分析と瑞々しい感性が同居している短編小説を読むような味わい、日本人の演奏家がこれほど高いレベルの演奏を聴かせるようになるとは、70年代には想像もつきませんでした。

あの頃の現代音楽は今や古典の部類に入りますが、確実に「現代の演奏」というものが存在することを改めて実感した夜でした。誘ってくれた田中先輩、ありがとうございました。

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