2020@TOKYO

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■ウジェーヌ・アッジェの肖像

2007-07-25 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  
  Lumix の新製品発表会に出かけた。ご存知のとおり、Lumix とはPanasonic(松下)のデジタル・カメラ群のブランドである。早くからドイツの超名門 Leica社との提携でブランド価値を高めた。

  Lumix、秋向けの新製品、これには画期的な仕掛けが施されている。カメラのレンズが人の顔を認識すると、そこにピントが合い、周囲の光量なども調整されるというもの。これによって、撮影者はいちいち撮影モードを変えることなく、最適のポートレートを得ることができる。

  そのようなシステムを開発した技術者に伺ったところ、レンズが顔を認識する仕掛けは、頭髪=眉毛=耳=鼻=口といった典型的な人間の顔の各部分を、あらかじめプログラムされたシステムがレンズを通して読み取るということらしい。

  記者会見の席上、面白い発言をした人がいた。いわく、動物の顔も認識するのか? 横顔は認識できるのか?

  認識システムが、基本的に人間の顔の造作に依拠しているかぎり、動物は難しい(人面魚なら良いかもしれない、などという冗談も出たが…)。さらに、45度以上傾いた横顔は難しいとのこと。いわゆる、典型的な正面顔向きのシステムということが判明した。

  とはいえ、そのことが Lumix の新製品のデジカメ上での位置をおとしめるものではなく、むしろポートレートの本質をつくものであるように思った。

  いったい、絵画の世界におけるポートレートというもの、思いつくままに並べ立てたとして、そのほとんどが、傾き加減45度以下、頭髪=眉毛=耳=鼻=口という Lumix が感知するパートをきっちりクリアしているものが圧倒的に多いのではないか?

  ここに、ほとんど真横を向いているようなポートレートがある。私が大好きな写真である。写真家ウジェーヌ・アッジェの肖像。パリの街をカメラに収め続け、ユトリロやレオナルド・フジタが彼のライブラリーを訪れて、その写真を買っていたという。多くの画家たちは、アッジェの写真をベースにしてパリの街角を描いた。そのアッジェのポートレート。もちろん、モノクロである。ほぼ真横を向きながら、つんとのびた鷲鼻が彼の個性を強調する。とてつもない存在感。しかし、彼自身は、きわめて謙虚な写真家だった。

  マン・レイに認められ、その写真が「シュルレアリズム革命」に掲載されたとき、アッジェは呟いた。「私の写真は好きなように使ってください。ただし、私の名前は出さないで…」。

  (写真はアッジェの肖像)

  

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