2020@TOKYO

音楽、文学、映画、演劇、絵画、写真…、さまざまなアートシーンを駆けめぐるブログ。

■View Suica 使ってますか?

2007-07-24 | ■エッセイ
  
  切符を切るという言葉、今の子供たちは知っているのだろうか? 鉄道の改札口に車掌さんがいて、一枚一枚の切符にはさみを入れていたことなど想像できるのだろうか? 私の子供時代には、路線バスにも車掌さんが乗っていて(たいてい女性)、鉄道のそれに比べるとはるかに薄っぺらな切符に乗車の標し=小さな穴をあけていた。大井町から北品川まで、小学生は5円で行けた時代だ。

  最近、View Suica というものを手にして、何とも世の中は便利になったものだとしみじみ考えこんでしまった。それまでの Suica ですら、私は画期的な発明だと思ったものだが、View Suica は、さらにパワーアップしている。従来の Suica だと、チャージしている金額が初乗り料金に満たなかった途端、改札を通れなくなってしまう。私の知り合いで、常に定期入れの中に小さく折りたたんだ5,000円札を入れている人がいたが (たぶん、日常生活で何かが起きたときの非常持ち出し用)、旧 Suica の場合もそんな感じで、常に初乗り分130円の準備が必要なのだ。

  この130円というハードルが意外に高い。Suica の残高が90円しかないために、終電間際の渋谷で延々と切符売り場の列に並んだことがある。

  それに比べて、View Suica には夢のような仕掛けがある。残高が1,000円を切ると、直ちに設定した金額まで残高が増えるシステムである。これによって、私たちは何時でも何処でも残高を気にすることなく快適・安心なうちに改札を通過することができる。もちろん、お金が何処かから降ってきたり、湧いてきたりするものではない。結果的にはクレジットカード決済されるのだが、View Suica の精神的な安心感は何ものにも代えがたい。

  今日も私は、View Suica を使って颯爽と改札を通り過ぎるのだが、その先がよくない。いったい、JRの駅は何故あれほどまでの騒音に満ちているのか? 電車がホームに入ってくるので白線の後ろに下がれ!という命令型のアナウンス。この電車はドコソコ行きだから間違えて乗らないように!というありがた迷惑なアナウンス。その音量は異常に大きく、電車の到着や発車を知らせるベルなどの音響は、考えられないほど音質が劣悪である。もちろん、こちらの音量も馬鹿でかい。ホームばかりでない。電車内のアナウンスもあまりにひどすぎる。

  いったい、鉄道に勤務しているひとの音に対する感覚はどうなっているのだろう? 音量を普通の人間が耐えられる程度にまで下げるばかりでなく、拡声装置(あるいは音響装置)をグレードアップして音質をよくすることで、駅の環境は飛躍的に向上するはずである。「音に対する繊細さ」という問題ではなく、これは「環境問題」であり、ノイズハラスメント( noise harassment )=ノイハラであり、ドメスティック・バイオレンスならぬ、ノイズ・バイオレンス=NVである。

  この国の音に対する感性は、あまりに鈍い。View Suica に感心してしまうように、技術の力は圧倒的に勝っているのに…。私はまた、ひとりで嘆息する。

  (写真は、いかにも効きそうな耳栓=サイレンシア)

  

  

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