2020@TOKYO

音楽、文学、映画、演劇、絵画、写真…、さまざまなアートシーンを駆けめぐるブログ。

■アンリ・ミショー ひとのかたち (アンコール掲載)

2010-08-13 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  行きたい展覧会がたくさんある。しかし、忙しくてなかなか行けない。東京国立近代美術館で開催されているアンリ・カルティエ・ブレッソンがそのひとつだが、今回は、とりわけ、ブレッソンと同じ場所で開かれているアンリ・ミショーの展覧会に興味がある。

  ミショーはベルギーの生まれだが、一般的にはフランスの詩人・画家として紹介されている。1899年生まれ、亡くなったのは1984年で、シュールレアリズムの運動から80年代の混迷まで、多彩なアート・シーンに棲んでいた人である。

  孤高の詩人にして、異能の画家、というのが彼を形容するフレーズだが、今回の展覧会は、画家としての存在にスポットが当てられている。テーマは、「ひとのかたち」。1930年から80年までに描かれたミショーのデッサンが60点近く展示されているのだが、それらには独自の運動感とエネルギーをもった「ひとのかたち」が描かれている。自身の作品にタイトルをつけることが少なかったミショーだが、ひとのかたちが浮かび上がるデッサンには、自らムーヴマンという表題をつけている。

  
  なかなか見に行くチャンスがないので、先にカタログを買った。カタログと言っても、これは立派な書物である。平凡社から出版され、一般書店に並んでいるこの本の装丁家は近藤一弥氏。クロス装の本体には紺の箔でタイトルが押されている。その上に紙が巻かれ(いかにも素材にこだわったという紙)、ひとのかたちがエンボス(空押し)で表現される。カタログと呼ぶにはあまりに豪華な装丁だが、紙質までを含めた書物としての存在が、全身でミショーへの尊敬と共感を表しているようで、なんだか爽やかささえ感じる。

  選挙の喧騒が去った後には、さまざまな人の形が残された。これから世の中はどうなるのだろうか? そんなことを考えている暇があったら、私は、この美しいカタログを携えて、ミショーの展覧会に行くだろう。(初出:2007年7月30日)

  (写真は、アンリ・ミショーの「ムーヴマン」)

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