![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/6b/1f74541a67aa0c3760498e75332b4203.jpg)
2日続けて、近ごろ稀な音楽体験をした。ひとつは、エッシェンバッハ=パリ管弦楽団の演奏会。もうひとつは、xrcdの新譜を聞いたこと。
パリ管弦楽団については、少し調べないと書けないことがあるので、本日はxrcdの話。
SACD(スーパー・オーディオ・CD)は音楽ファンやオーディオ・ファンの期待に応える新メディアとなった。一方、ビクターはSACDが世に出る前から、xrcdというものを地味にリリースしていた。
どちらも音が良いことに変わりはないのだが、xrcdの方が全てのCDプレーヤーで再生できるという利点がある(SACDのハイブリットタイプは普通のプレーヤーでも再生できる)。
xrcdのシリーズでは、ミュンシュ=ボストン交響楽団やライナー=シカゴ交響楽団などの名盤がリリースされているので、私自身は同じ演奏のものを、通常CDとSACD、さらにxrcdで揃えている。
SACDは数えるのが面倒くさいほどの枚数になったが、xrcdは17枚しか持っていない。購入の手が鈍る最大の理由は価格が高いこと。最近は廉価盤のSACDが1,000円以下で買えることがあるのに、xrcdの価格は3,465円である。最近のCDの一般的な価格のことを考えると、とてつもなく高額に映るのである。
昨日、久々にレコード芸術を読んでいたら、小澤征爾=シカゴ交響楽団の「展覧会の絵」がxrcdでリリースされていることを知り、HMVに走った。この演奏がLPレコードでリリースされたのは1968年、私は高校の入学祝にもらった商品券でこのLPを買った記憶がある。場所は日本橋の高島屋だった。『レコードを擦り減るほど聞く』という表現があるが、まさしくその例えどおり。特にカップリングされているブリテンの「青少年のための管弦楽入門」のレコード溝は確実に擦り減っていた。
その後、このレコードはCDで復刻されたが、高校時代の感動はなかった。レコードからCDに生まれ変わったことによる音質の改善もそれほど感じられなかった。
そして今回のxrcdである。LPのリリースから39年、私はその音の良さにびっくりして、2度続けて聞いてしまった。
誇張した表現ではなく、これは全く別の演奏に聞こえるほどの音の違いである。「展覧会の絵」冒頭の有名なトランペットのメロディ、シカゴ交響楽団の名手アドルフ・ハーセスの音が、LPともCDとも、全く異なる音色で聞こえてくる。
試しに以前リリースされた同じ演奏のCDと聞き比べてみたが、以前のCDでは全く聞こえなかった金管の音圧、木管の細かいニュアンス、弦の微妙な音色の変化などが手に取るように聞こえてくる。まったく不思議なことに、シカゴ交響楽団のメンバーの意志のようなものが、スピーカーから立ち昇るのである。こんな体験は初めてである。
過去、細部に至るまでさんざん聞き込んでいた演奏だけに、xrcdに記録された情報量の多さによって、改めて、この「展覧会の絵」が、とてつもない名演だったことが分かった。また、詳細なライナーノートと録音記録を見るに及んで、「展覧会の絵」と「青少年のための管弦楽入門」の2曲が、たった1日で録音されていた事実を知らされた。録音は1967年7月18日。その日、録音会場のメディナ・テンプルで起きていたことを想像するとワクワクするような思いにとらわれる。
これだけの大曲を1日で録り終える作業は、ライブ録音を除いて、一般的には不可能である。唯一可能だと思われるのは、指揮者の指示が明確で徹底していること、オーケストラの技量が最高ランクであること、録音会場の音響に問題がないこと、録音スタッフと演奏家の意思疎通が完璧に近い状態であること、録音スタッフ(とくに現場を仕切るディレクターとアシスタントたち)のチームワークが万全であること、録音機材が整備されていて機械的な問題がないこと、そして、何よりも現場にいる全員が、演奏される音楽への共感と敬意をもっていることである。長い間、音楽録音という作業に携わってきた私にとって、上に記したような条件が整うことは奇跡に近い。
驚異の音質、xrcdで聞く小澤の演奏には、将来世界的な大指揮者となる彼の片鱗が窺える。シカゴ交響楽団の演奏は、そんな彼の成長を,楽員全員の喜びとしてバックアップしてくれているようで、なんとも頼もしい。そういう空気が、xrcdの再生による音の中から聞こえてくる体験、これもまた、限りない音楽の歓びである。
パリ管弦楽団については、少し調べないと書けないことがあるので、本日はxrcdの話。
SACD(スーパー・オーディオ・CD)は音楽ファンやオーディオ・ファンの期待に応える新メディアとなった。一方、ビクターはSACDが世に出る前から、xrcdというものを地味にリリースしていた。
どちらも音が良いことに変わりはないのだが、xrcdの方が全てのCDプレーヤーで再生できるという利点がある(SACDのハイブリットタイプは普通のプレーヤーでも再生できる)。
xrcdのシリーズでは、ミュンシュ=ボストン交響楽団やライナー=シカゴ交響楽団などの名盤がリリースされているので、私自身は同じ演奏のものを、通常CDとSACD、さらにxrcdで揃えている。
SACDは数えるのが面倒くさいほどの枚数になったが、xrcdは17枚しか持っていない。購入の手が鈍る最大の理由は価格が高いこと。最近は廉価盤のSACDが1,000円以下で買えることがあるのに、xrcdの価格は3,465円である。最近のCDの一般的な価格のことを考えると、とてつもなく高額に映るのである。
昨日、久々にレコード芸術を読んでいたら、小澤征爾=シカゴ交響楽団の「展覧会の絵」がxrcdでリリースされていることを知り、HMVに走った。この演奏がLPレコードでリリースされたのは1968年、私は高校の入学祝にもらった商品券でこのLPを買った記憶がある。場所は日本橋の高島屋だった。『レコードを擦り減るほど聞く』という表現があるが、まさしくその例えどおり。特にカップリングされているブリテンの「青少年のための管弦楽入門」のレコード溝は確実に擦り減っていた。
その後、このレコードはCDで復刻されたが、高校時代の感動はなかった。レコードからCDに生まれ変わったことによる音質の改善もそれほど感じられなかった。
そして今回のxrcdである。LPのリリースから39年、私はその音の良さにびっくりして、2度続けて聞いてしまった。
誇張した表現ではなく、これは全く別の演奏に聞こえるほどの音の違いである。「展覧会の絵」冒頭の有名なトランペットのメロディ、シカゴ交響楽団の名手アドルフ・ハーセスの音が、LPともCDとも、全く異なる音色で聞こえてくる。
試しに以前リリースされた同じ演奏のCDと聞き比べてみたが、以前のCDでは全く聞こえなかった金管の音圧、木管の細かいニュアンス、弦の微妙な音色の変化などが手に取るように聞こえてくる。まったく不思議なことに、シカゴ交響楽団のメンバーの意志のようなものが、スピーカーから立ち昇るのである。こんな体験は初めてである。
過去、細部に至るまでさんざん聞き込んでいた演奏だけに、xrcdに記録された情報量の多さによって、改めて、この「展覧会の絵」が、とてつもない名演だったことが分かった。また、詳細なライナーノートと録音記録を見るに及んで、「展覧会の絵」と「青少年のための管弦楽入門」の2曲が、たった1日で録音されていた事実を知らされた。録音は1967年7月18日。その日、録音会場のメディナ・テンプルで起きていたことを想像するとワクワクするような思いにとらわれる。
これだけの大曲を1日で録り終える作業は、ライブ録音を除いて、一般的には不可能である。唯一可能だと思われるのは、指揮者の指示が明確で徹底していること、オーケストラの技量が最高ランクであること、録音会場の音響に問題がないこと、録音スタッフと演奏家の意思疎通が完璧に近い状態であること、録音スタッフ(とくに現場を仕切るディレクターとアシスタントたち)のチームワークが万全であること、録音機材が整備されていて機械的な問題がないこと、そして、何よりも現場にいる全員が、演奏される音楽への共感と敬意をもっていることである。長い間、音楽録音という作業に携わってきた私にとって、上に記したような条件が整うことは奇跡に近い。
驚異の音質、xrcdで聞く小澤の演奏には、将来世界的な大指揮者となる彼の片鱗が窺える。シカゴ交響楽団の演奏は、そんな彼の成長を,楽員全員の喜びとしてバックアップしてくれているようで、なんとも頼もしい。そういう空気が、xrcdの再生による音の中から聞こえてくる体験、これもまた、限りない音楽の歓びである。