2020@TOKYO

音楽、文学、映画、演劇、絵画、写真…、さまざまなアートシーンを駆けめぐるブログ。

■ハリケーン

2007-07-13 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  
  台風はまだ東京に来ていない。ヘビー級の湿度を持った生ぬるい風が吹いている。昨日は、ハービー・ハンコックの The Eye of Hurricane のことを書いた。今日は、ずばりハリケーンの話。

  ボブ・ディランの「欲望」というアルバムは、「ハリケーン」という曲から始まる。長い曲である。昨日ご紹介したハンコックの「処女航海」とうアルバムは、アルバム・タイトル曲はもとより、話題にした「ハリケーンの目」、あるいは「ドルフィン・ダンス」など、海に関わる曲が集められていた。ディランの「ハリケーン」は、自然現象とは縁もゆかりも無い。ハリケーンという名の黒人ボクサーの悲劇を主題にした曲である。

  1966年6月、ニュージャジー州にある酒場で殺人事件が起きた。元ミドル級ボクサー、ルービン・ハリケーン・カーターが、容疑者として捜査線上に上った。何の証拠もない、それどころか、『現場で、ハリケーンを見た』という目撃証言を、警察が捏造していたのである。彼は逮捕されてしまう。ボブ・ディランは、この差別と不正を糾弾すべく、「ハリケーン」という歌を発表する。やがて1988年、いっさいの疑惑が裁判所によって払拭され、ハリケーン・カーターは、ようやく自由の身となった。

  ボブ・ディラン。この人のことを、私はまだ語れない。もしかしたら、死ぬまで語ることができない。言葉で表すことのできない偉大な存在、と言ってしまえば陳腐な印象だが、「ボブ・ディランがいなければ、今日の私は存在しない」ということだけは確実に言える。

  1975年に始まったディランの「ローリング・サンダー・レビュー」というツァーが当時NHKテレビで放映されたとき、私はフィルムカメラをテレビの前に据えて、ディラン、ジョーン・バエズ、スカーレット・リベラらの映像を撮影した。テレビの映像を写真に撮ったのは、白黒時代のウィルヘルム・ケンプ、ロブロフォン・マタチッチ以来だが、今考えると、あまりにジャンルが違いすぎる。

  このローリング・サンダー・レビューは、サム・シェパードのリポートがサンリオから出版されていたが(「ディランが街にやってきた」という最悪のタイトル)、このツアーを、フィクションともノン・フィクションともつかない手法?で映画化した「レナルド・とクララ」も衝撃的だった。このツァーでも「ハリケーン」は歌われているのだが、やはり一番カッコよかったのは、「激しい雨」だと思う。これについては、いずれ書きます。「ハリケーン」と「激しい雨」!やはり、台風接近の情報がディランの大名曲を連想させたのでしょうか?

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