3D CG, CAD/CAM/3Dプリンタ な日常でつづる クルスの冒険ブログ

このブログは引っ越しました!引っ越し先は…「とある思索の集合演算」と検索してみてください。よろしくお願いします。

pike & shield (あ、英語でこういう言い方はないみたい…)

2005年11月16日 | □3次元CAD私論
本気(マジ)工場です。本日は、CADのお話の続きです。

さて、3次元CADが設計業務に使われ出した90年代初頭…
その時に3次元CADの一番の売り文句であり、買うときの理由であったのは、

・コンカレント・エンジニアリング (設計データの一気通貫も含む)
・形状の完全なる定義(曖昧さを無くす)

でした…
しかし、データの一気通貫は「やや一気通貫」であり、同時は「ちょっとは同時」だったの
は、今現在でもちっとも変っていません。

ということろからです。今日は、ホントにそうか?というところを見てみましょう。

解析はどうだ?解析は?
解析はですね。有限要素法のメッシュを切る都合上、あまり複雑な形ですと
メッシュが切り難かったり、計算時間がかかってしまったりするので、解析結果に
あまり影響が出ないであろう形状、穴とか角アールとか、を取って解析するのです。
これは、伝統的且つ一般的に行われることでして、解析は解析用に作られたソリッド
モデルの方が解析し易い…というのは、昔からずっとあります。こういう効率的な
解析手法も、解析者にとっての重要なテクニックなのです。
実際、「穴」や「角アール」といった形状情報(フィーチャなんて呼びますね)
を、(ホントはあるんだけど)無かったものとしよう!という機能を備える
3次元CADも一般的になってきました(形状の抑制、などと呼ばれます)。
確かにその機能により多少は楽にはなりましたが、それで全てが解決出来た話はありません。
結構な手間をかけて、設計で作った3次元ソリッドのモデルを、解析し易い解析
モデルに変えている、という事は今でも残っています。

金型はどうだ?金型は?
金型・製造はですね…一気に通貫しない典型です(笑)
確かに図面から金型用のモデルを作ることは大変に困難なのですが、かといって
設計から3次元のソリッドモデルが来たとしても、そのまま使えることはまず
ありません。どんな製造にしても、製造上の要件があり、その要件を満たす
ためにはある程度(どころじゃないことも…)ソリッドで来たモデルを
変形しなければならないからです。ちょっと製造業に携わっていれば、設計部で決めている
形状は出来上がった最後の形状であって、それを製造するための形状とすんなり
ネガ/ポジの関係にはない…ということは誰でも知っていることです。
樹脂型の抜き勾配やプレスの戻り見込みは、その典型例です。
これも、CADメーカー各社は、抜き勾配を簡単に付けられる機能を作っていますが、
それで済んだ話は非常に少ないのです。
過去も、そして今でも、3次元ソリッドのデータを面データにして、要件に合う
形状にするため、線を引き直して面を張り直して… という事を普通にして
います。だから、金型屋さんはIGESでもらえれば、まぁ、ひとまずはOKなんです。

ね。全然通貫してないでしょ?(笑)
さらに現実的な問題としては、協力会社さんなどに設計と同じCADが無ければ
コンカレントにならないじゃん…とか、そんなCAD高価で買えないよね…などという
なんとまぁ“トホホな事情”は今でも あるのです。
これじゃあ、ますます通貫しません(笑)

・一気に通貫で
・全員同時にするため
・曖昧さの無いソリッド

のはずなんだけど、ある程度は曖昧じゃないとどこの部署でも困るんだよね(笑)これが。

事実、「コンカレントにしましょう!」って言われて3次元CADを買ってみて、最初
の設計の仕事は…「じゃあ、出図をゴールに設定しましょう!」…ということは、
普通にあったのでした(笑)随分苦労してモデリングした割には、最終的な結果は
製図のCADの時と一緒… って何かヘンじゃないですか?(笑)
もちろん、製図では確かめようも無かった事がソリッドでは分かりますから、
悪いことばかりでは無いのは言うまでもありません。でももし、もしですよ。
カンペキな製図を引いて、カンペキに理解出来る人々であれば、その恩恵
(ソリッドにした改善幅)は、小さいものになっていたでしょう。
もしくは、とても3次元ソリッドでないと分からないような部分だけ、3次元ソリッド
でモデリングしていた… という会社さんも、実際に結構居たのです。

こういうものは、当然、対象となる製品やその会社さんの様子によって大きく異なります。
それでも、製品の設計・製造プロセスは非常に複雑で、それぞれの工程はとても専門的です。
それぞれの工程に必要な情報をひとつのモデルで行うことは、結構な苦労を 強いられる、
というのは一般的な事実のようです。

つまり、

・一気に通貫で
・全員同時にするため
・曖昧さの無いソリッド

を同時に目指したはずの3次元ソリッドCADシステムは、
「一気に通貫」と「全員同時」はセットとしても、それらと
「曖昧さの無いソリッド」 との間に潜在的に矛盾する要素を含んでいたのではないか?…

そう思えて仕方ないのです。

私は、この仮説に思い至ったときに、一人で小躍りして喜びました(笑)
だって、面白いじゃないですか。

さて次は、「なぜそんなことが?」「ではどうすれば?」
に、どんどんと入って行きます。