の~んびり タイランド 2

タイの風景、行事や趣味の陶磁器を写真を中心に気ままに紹介しています。

カロンの壷

2022年03月26日 | 陶磁器(タイ)



バンコク大学にある東南アジア陶磁器博物館所蔵のカロン窯、鉄絵花唐草文壷と鉄絵花文蓋付鉢です。壷は口径13.8cm、全高31cmありますが由来の記載はありません。タイ、ミャンマーの国境山岳地帯の墳墓遺跡からの発掘品でしょう。






パヤオ湖畔にあるパヤオ文化博物館所蔵品です。上の壷は口辺が破損していますが15~16世紀の作です。




この二点はスコータイに有る私設博物館の1階に展示してある壷と瓶です。

およそ30年前にチェンラーイでカロンの模倣品が大量に作られ、スコータイの骨董商によって市場に出回りました。博物館のオーナー、ダムロン氏は騙され購入し二階に展示しています。地元では有名な話で「見るのは良いが、しゃべるのは駄目」と言われ、新作であることを指摘すると、氏は猛烈に怒るので皆さん口を塞いでいます。東南アジア陶磁器博物館時代のパリワット教授は贋作を指摘していますが、展示はそのまま続けておられます。タイ人の話では自宅にもたくさんの在庫があるそうで、欲しければ売ってくれるそうです。










二階の展示場の一部です。

タイで見られるカロンの大型袋物の真作で状態が良い物はごく限られています。
タイの陶土で一番良質なのがカロンだと言われ、盤にしろ壷や瓶にしろ素地が薄く発掘品で損傷がないは非常に少ないです。盤や鉢は白化粧の上に独特な意匠の模様を大胆に描き透明釉を掛けて仕上げていますが、地中に長くあったため貫入に土銹が付き、釉薬はカセ、場合によっては剥離しているのが一般的です。

一般にカロン窯と呼ばれる区域は広く、ウィアン カロンの東に横たわる山脈の西斜面から東斜面のワンヌア地区まで含んでいます。その山脈の南端をウィアン カロンからワンヌアさらにパヤオへ通じる国道120号線が走っています。国道に接した果樹園をスコータイの骨董商が発掘した場所があり見に行ったことがあります。案内人の話では1mの深さから皿等を二百枚余り掘り出したそうです。彼の話では国道の南側で、現在は農地となっているその下にたくさんの窯跡があるそうですが、2m以上の深さで目立つ場所のため誰も掘らないそうです。

区域毎に製品や生産技法に差異があり、壷に限れば窯跡から出た陶片も見たことがありません。相当生産量が少なかったのか、未発掘の窯でしょう。

ネット・オークションに出品されている東南アジア陶磁器に真贋の疑わしい物が多い、と警鐘を発しておられるブログがあり、私も早速ネット・オークションを覗いてみました。カロンやカロン風の盤や壷が結構出回っているのを見て、この稿を記しています。
模倣品は30年前の有名な贋作事件以降も続いており、市場にはたくさん出回っています。勿論新作として安価なものが殆どだと思いますが、中には悪意を持った売人もいるのでしょう。


画面はかって東南アジア陶磁器博物館の再館記念講演でカロンの贋作を警告されていたものです。


写真はかって訪れたナーン北部のお寺にあったプア郷土博物館の展示棚の上に放置されていた壷です。ガラス張りの棚の中はナーンやパーンの割れた壷ばかりでしたが外には完品が数点埃を被っていました。カロンの模倣品がこんな所まで出回っているのかと驚きでした。

スコータイの私設博物館の一階展示品ですが、状況を教えてくれたタイ人は「たぶん本物だろう。」と言ってましたが、個人的には腑に落ちないところがたくさんあります。

* * * * *






最近参考品として貰ってきたカロンの陶片です。破片の長辺が18cmあり、推定の高台径24cm、直径は38cmにもなる超大型鉢です。見込みは黒地に白抜きの花文、又は日輪文を描き、周囲はいかにもカロンという馬を描いています。温度が上がりすぎて釉が流れていますが、溜まった釉薬は強還元で綺麗な水色に発色しています。






タイ=ミャンマー国境の山岳地帯から発掘されたカロンの鉄絵菊花文鉢です。かなり状態が良いと思います。






これは、過日スコータイへ行ったときに、友人が再補修を依頼していたカロンの鉄絵魚藻文盤です。所有者の許可を得て撮影しています。
大きく割れた片を白パテで雑に繋いでいます。上から見た写真はPC上で直してみました。
一見、スコータイやサンカロークの魚藻文と見間違えるような絵付けです。







カロンの特徴的な鉄絵の馬と花です。




馬ついでにカロンの緑釉燭台をアップしておきます。ワット・カロン遺跡の出土品です。日陰で撮影したため全体に青みを帯びています。
タイで緑釉が用いられたのはカロンだけです。










そして、タイでも完品は殆どお目に掛からない青磁鉢です。薄い器胎に綺麗に発色した青磁の鉢ですが焼成中に崩れてしまいました。


カロンの瓶です。












ドイ ヒン フォン山系の東側斜面、ワン モン村の古窯址で採取したカロン陶片です。
白化粧土を施した上に模様を描き透明釉を掛けていますが、密着性は非常に良いです。このタイプで釉薬が剥離したのは見ません。
後日、村人が収集していた陶片や西側斜面の陶片も紹介します。


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2 コメント

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Unknown (mash1125(世界の街角))
2022-03-27 10:07:49
今日は、スワンカローク陶器博物館の2階の展示品、今できのような釉肌、見たことのない造形、やはりダメでしたか。モノを見ない失敗例でした。まさか博物館に倣作とは。
過去に弊ブログでも紹介しており、今後訂正文を掲載することにします。
訪タイの条件もやや緩和されているようですが、COVID19用の保険等々、まだまだ敷居が高いようで行けずにいます。いずれ行けるようになれば、御一緒にナーンの窯址でもと思っています。
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コメントありがとうございます (管理人)
2022-03-27 18:11:27
今回これを書くにあたりスコータイの骨董商にいきさつを確認しましたが「見るのは良いが話はするな」と言うのが印象的でした。
タイも規制は緩和されていますが、感染は拡大中です。身近にも感染が多発しており、今は部屋ごもり中です。自由な往来が早くできるようになるのを待ち望んでいます。
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