湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆ヴォーン・ウィリアムズ:ヴィオラと小管弦楽、合唱のための組曲「フロス・カムピ(野の花)」(1925?)~2017/10までのまとめ

2017年11月21日 | Weblog

◎プリムローズ(Va)ボールト指揮フィルハーモニアO他(EMI)/
○リドル(Va)デル・マー指揮ボーンマス・シンフォニエッタ(CHANDOS)CD

ソロ・ヴィオラと無歌詞による小混成合唱、そして小管弦楽による組曲というヴォーン・ウィリアムズらしい編成によるこの曲。1925年8月、名手ライオネル・ターティスの独奏によって初演されました。リハーサルの段階で演奏家達がいたく感じいり、作曲家を喜ばせたと伝えられます。タリス~田園の系譜からヨブ~第4交響曲の系譜に至る迄の輝ける小路を飾る美しい野花。惨い世界戦争の傷覚めやらぬ時期の絶望と慰めの曲です。古い録音ですがプリムローズ独奏によるボールト盤で聞いています。ここではほの暗い夢幻のうちにさ迷う美しくも悲しい想いが、密やかに綴られています。新しい明快な音でないからこそ、心の深層に響く。初めてこの演奏を聞いたとき、あのどこまでも続く灰色の野と冷ややかな霧を思い起こしました。其の中から立ち現れる夢ともうつつともつかない人影。それは恋人の姿か、いにしえの廃虚の住人か、やがて幻の祭列が現れ、過ぎ去ったあと、雲間に薄く光が射し、希望の温もりをもたらす。宗教的な雰囲気の濃厚な曲ではありますが、作曲家はそれを否定しています。一聴をお勧めします。新しいものでは、作曲家ゆかりのリドル/デル・マーによる録音が、CHANDOSより出ています。

◎アブラヴァネル指揮ユタ交響楽団他(VANGUARD)CD

この指揮者には期待していなかっただけに驚いた。若々しく、壮麗で美しく、楽曲の立体構造を非常に効果的に聴かせることに成功していて、単なるヴィオラ協奏曲ではないんだ、と改めて認識させた。オケの迫力が凄い。緩急がハッキリしていてマーチにおけるリズム処理も素晴らしい。この曲にこういった覇気ある表現も可能なのだ、RVWはやはり上手い、と膝を打つ。合唱の迫り方、ヴィオラソロの音色も程よく良い。◎。

○L.フックス(va)ペルレア指揮マンハッタン音楽学校管弦楽団・合唱団(SLS:CD-R)1965/1/21

起伏のある演奏で、穏健な録音の多い同曲「本来の」一面を引き出している。多調の用法は効果的でモノラル録音こそ悪いものの一層はっきり印象付けられる。独奏者はアンサンブルに融合し際立たないところが却って曲のためにはよい。リリアン・フックスは兄とは違いヴィオラ奏者として身を立てた。SLS盤表記(violin)は誤り。同楽団はかつて教鞭を取っていた学校のもの。録音記録データに指揮者違い・録音年月日違いの同楽団のものがあり(市販されていない模様)、SLS盤には初出表記がなく、同一の可能性もある。

○フランシス・トゥルシ(Va)フル指揮コンサートホールソサエティ室内管弦楽団(CHS)LP

これ、存外拾い物だったんです。新しい録音より古いほうが、戦争もあったばかりで、真実味があるのかなあ。ヴィオラソロもプリムローズやリドルとは違った陰影がある。イギリスの靄のかかった荒野、浮かんでは消える幻影、最後に陽さす光景・・・歌劇「天路歴程」に通じる美の極致。リドル/デル・マー盤のクリアなステレオ録音より数倍悪い録音なのに、管弦楽、無歌詞合唱の胸に迫ることといったら。リアルなのだ。久々に擁護感なしに○。録音とレア度をマイナスとした。トゥルシはいくつか現役盤がある名手。

○バルマー(Va)ハンドレー指揮王立リヴァプール・フィル&合唱団(EMI)1986/9・CD

何故ヴィオラやチェロにヴァイオリン音域を弾かせるかって、音色を求めているのである。響きに倍音が多く含まれるかどうか以前にギリギリの、キュウキュウの音を求めているのだ。透明な音で余裕しゃくしゃくの表現をされると、何か違うと思ってしまう。プリムローズ以上にヴァイオリン的なこの演奏を聴いていると、引っ掛かりの無さが気になる。オケや合唱は透明感があっていいが、そこは非人間的な自然ないし超自然の音を出す役まわりであるからいい、ヴィオラにはその中で翻弄されるような人間味を求めたい。余裕で○だが、私は違和感を覚えた。

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