私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「20世紀少年」

2008-09-12 21:18:20 | 映画(な行)

2008年度作品。日本映画。
1969年夏、小学生のケンヂは同級生のオッチョらといった仲間たちと空き地の原っぱに秘密基地を作り、秘密の遊びのひとつ「よげんの書」に空想の数々を描いた。1997年、ケンヂはコンビニ経営をしながら、失踪した姉の娘の面倒を見ていた。そんな日常が同級生ドンキーの死などをきっかけに騒がしくなる。そして巷で「ともだち」と呼ばれる謎の教団と、いくつかの事件が、かつて作った「よげんの書」とそっくりなことに気づいていく。
浦沢直樹のベストセラーコミックを実写映画化。
監督は「TRICK」の堤幸彦。
出演は「みんなのいえ」の唐沢寿明。「八つ墓村」の豊川悦司 ら。


最近は小説以上に、マンガを原作にした映画が増えてきた。テレビドラマもその傾向が強くなっている。
そういった場合、よく聞かれるのが原作と映画の比較だ。比較したり、されるのはある程度仕方ないけれど、原作と映画は必ずしも同一と見なすことはできない。原作の表現手法はマンガである以上どうしても静的なものになってしまう。映画はそれを動的に移し変えていくものであり、それを行なう時点で、原作と映画がまったくの別物になるのはある種の必然であるからだ。それに映像に置き換える際、映画監督という他者の視点がそこに介在しまうことも大きいだろう。

本作「20世紀少年」は最近増えてきたマンガ原作の映画だ。
原作のほうは「スピリッツ」で毎週かかさず読んでいたし、「21世紀少年」が終わった後には、復習のためにマンガ喫茶で再読した程度には親しんできた。
そういう自分から見ると、なるほど原作を忠実に再現していると感じる面は多かった。コンチやカツマタくんに関するセリフにはにやりとしてしまう。
それは脚本に原作者の浦沢直樹が絡んでいるということも大きいのだろう。そういう意味、映画にすることで入りがちな他者の視点を抑えていると言えるのかもしれない。

しかし、にもかかわらずこの作品は、僕の目から見れば、典型的な失敗作と映った。
なぜならこの映画のストーリーラインがまったくの荒唐無稽であったからだ。

この映画では、少年時代に考えた空想を元に、世界を滅ぼそうとする集団が出てくる。その根本的な設定をマンガで読んでいるとき、多少つっこみつつも、何だかんだで気にせずに読み進むことができた。

しかしそれが映像化に移し変えたことで、途端バカバカしく、安っぽい物語に変質してしまう。ガキの空想を細菌兵器も含め現実化って、そこには説得力のかけらもない。
多分そのストーリーはマンガだから許されているものなのだろう(あるいは浦沢の演出力とセンスゆえか)。実際に人間を動かして、それを表現してしまうと、人間の動きがリアルな分、そこにある展開の嘘っぽさがやたらに目立ってしまう。
大体「ともだち」がコリンズの立場だったとしても、そこまでやります? つうか、やろうと思ったとしても現実問題、できます? 友民党が本気で政権取れると思います? 

根本的な設定以外にも、ご都合主義的な展開がいくつか見られ、そこも気に入らない。演技の過剰さも鼻についてならない。

僕は「20世紀少年」というマンガは好きだ。しかしこのマンガはそもそも映像化には向かない作品だったのだ(同じ理由で「MONSTER」や「PLUTO」を仮に実写映画化したら失敗するだろう)。
僕はこの映画作品は大嫌いだ。多分続編は見ないだろう。
原作さえ知っていればそれで充分。本作はそういう作品である。

評価:★(満点は★★★★★)


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